Project Lotus idea『白/道』

合同会社kitaya505では、「地方から地方」に舞台芸術作品を届ける為、様々な公演企画を立ち上げます。

本作は愛媛県東温市で舞台芸術の企画・プロデュースを行うLotus ideaと手を組み、四国から全国に、全国から海外に向けて作品を発信することをミッションの一つとして行う「Project Lotus idea」シリーズの第一弾となります。Lotus ideaの本拠地である東温市は、平成28年度より「アートヴィレッジとうおん構想」という、舞台芸術を街興しのツールとするプロジェクトが官民一体となって行われています。本作は、このプロジェクトにより培われた環境をベースとして創作するレジデンス作品です。

本作『白/道』は、世界的に活躍する舞踏カンパニー山海塾の石井則仁、日本有数のシタール奏者ムー・テンジン、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)を使用した空間演出を得意とするサ々キDUB平によるノンバーバルライブパフォーマンス作品です。日本独自の文化とも言える舞踏、シタール奏者という異国の彩り、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)というアナログな機材で空間演出を行うアーティストが、即興的で生々しいパフォーマンス作品を上演します。

柴山麻妃様より劇評をいただきました。

白い光の道が、舞台手前から少しずつ伸びていく。暗闇の中、ゆっくりと、静かに。やがてそれは、中央でしゃがむ男の背もゆっくりと這うように伸び、男を越えて進んでいく。シタールの音が響く中、その白さが神々しい。この道は我々を至高の地へと誘(いざな)っているのか、あるいは大局から見ればヒトの歩みはこういう――美しいが細くて頼りなく、だがしたたかに伸びていく――ものだと言っているのか。「道」を目で追いながらそんなことを考えた(『白/道』2024年11月24日、Project Lotus idea、other・福岡市)。

 

空間と時間を超越した舞踏作品である。白くて狭いギャラリーの奥には頭まで装束を被った男が座ってシタールを演奏している。バックの白い壁に映し出されているのは、色と形が変わり続ける水模様。そしてその前で一人の男が踊る。強い個性を放つその3つが1つの宇宙を成し、観客は漂いながらそれをながめている…大げさではなくそんな気にさせられる作品だ。

 

まず、ムー・テンジン(Lotus idea)のシタール演奏が感覚を麻痺させる。「エキゾチックな雰囲気の演出」といった生易しいものではなく、この楽器の(弦の)共鳴が、観客を浮遊したような不思議な感覚にさせていくのだ。多くのシーンで不安を煽られ、落ちつかなくさせられるのだが、ふとした時に「生きる苦難を俯瞰的に眺めている=宇宙の理(ことわり)を見ている」気にさせられる。音色の多重性が聴く者の感覚を多重にさせるのが興味深い。

 

サ々キDUB平(CHIZURUYA)の投射の面白さにも目を見張った。昔懐かしの(!)オーバーヘッドプロジェクター(OHP)で粘度のある液体の変化を映し続ける。サ々キがOHPのガラス面上に、液体を垂らしたり広げたりつぶしたり、霧吹きをかけたり色を変えたり足したりと操っていく。それが壁いっぱいに映されるのだが、まるで命があるかのように表情豊かだ。時に乱暴に場を業火の赤に染め上げ、時に羽をふわりと落とすこともあり、その度に場の空気が一変する。私はサ々キの操作が目に入る位置にいて、彼の「手元が空間全体を変えていく」というシステム(・・・・)が何かしらの暗喩に思えて仕方がなかった。

 

そして石井則仁(山海塾・舞踏石井組)の踊り。音楽や投射美術のどちらよりも表象が具体的であるにもかかわらず、時間をこえていると感じたのが彼の踊りである。というのも堂々と(変な言い方だが)彼が不在の時間、つまり何もないように見える時間が続き観客としてただ「待って」いたのだが、次第に茫漠とした空間に自分が漂っている感覚になり…これは「何もない」のではなく「無がある」ということだと思えて来たのだ。するとその後に続く彼の舞踏が、個人ではなく種としてのヒトの生に見える。見えているのは、石井則仁の身体ではない。

 

ほとんどが辛苦に満ちていた。怒りやら妬みやらそれらが形になりヒトを苦しめているように見えた。ただ、赤ん坊を抱えあやす仕草が出て来た時に、太古の昔から私たちの生が受け継がれてきたこと、そして赤ん坊の前ではどんな者も無垢な気持ちになることを思い出す。この穏やかな一瞬が胸に残るか、激しい苦しみの動きが印象に残るか、どちらなのかは観る人の世界観によって変わるのかもしれない。

 

天地万物はすべて無限の宇宙の中でくり返しくり返し生き続ける、「性懲りもなく」同じように、そしてそれは「尊い」奇跡でもある。私は本作からそのような意思を受け取った。

 

一つの宗教観に留まらない、唯一無二の作品である。

柴山麻妃

1999年から2010年まで演劇批評誌New Theatre Review(季刊)を編集長として刊行。2005年から朝日新聞に演劇批評を執筆。2019年から2023年まで毎日新聞に「舞台と社会の関わりの論考」を執筆。2021年から久留米シティプラザにて劇評執筆、シアターカフェ実施。2023年から劇ナビ福岡にて劇評を執筆。
そのほか、雑誌やウェブにおいてエッセイや批評を執筆。

Project Lotus idea『白/道』

松山公演

【日時】
2023年
12月9日(土)19:00★
12月10日(日)13:00
★ムー・テンジン、石井則仁の出演者によるアフタートークあり

【会場】
シアターねこ(愛媛県松山市緑町1-2-1)

三重公演

【日程】
2023年
12月22日(金)19:00
12月23日(土)13:00★
★ムー・テンジン、石井則仁の出演者によるアフタートークあり

【会場】
津あけぼの座(三重県津市上浜町3-51)

【観劇料】
一般3,000円(当日前売共通)
大学生以下2,000円(要学生証提示)
応援チケット5,500円

2023年11月1日(水)10:00発売開始
松山公演予約フォーム
三重公演予約フォーム

【公演映像配信(アーカイブ配信)】
配信期間:12月25日(月)~1月8日(月)(観劇三昧にて配信)
アーカイブ配信視聴料:1,650円
11月1日(水)10:00発売開始 ※年内販売終了
https://kan-geki.com/live-streaming/ticket/976

【スタッフ】
作曲・演奏・構成:ムー・テンジン
振付・舞踏:石井則仁(舞踏石井組主宰・DEVIATE.CO芸術監督)
ヴィジュアルジョッキー:サ々キDUB平

プロデューサー:北村功治(合同会社kitaya505)
舞台監督:魚尾雄一
美術・広報デザイン:早崎雅巳

協力:シアターねこ・津あけぼの座・(有)現場サイド
後援:松山市教育委員会・津市教育委員会
企画:Lotus idea
主催:合同会社kitaya505

【お問い合わせ】
合同会社kitaya505
info@kitaya505.com
080-1710-2887(北村)
Project Lotus idea X公式


福岡公演

【日時】
2024年11月23日(土)19:00/24日(日)14:00
*受付・開場ともに開演の30分前開始

【会場】
other(福岡市中央区平尾5-4-33)

【チケット】
一般3,500円(ワンドリンク付)
U22割 2,000円(ワンドリンク付)

【チケット取り扱い】
カルテットオンライン
2024年10月1日(火)発売開始

【お問い合わせ】
メール:info@kitaya505.com
TEL:080-1710-2887(キタムラ)

構成・作曲・演奏:ムー・テンジン
振付・構成・出演:石井則仁(舞踏石井組/山海塾)
投射:サ々キDUB平
衣裳:早崎雅巳
舞台監督:魚尾雄一
宣伝美術:合同会社kitaya505
プロデューサー:北村功治(合同会社kitaya505)

協力:other、舞踏石井組
企画・制作:合同会社kitaya505
主催:合同会社kitaya505、Lotus idea