2026年3月のkitaya

3月某日。弊社事務所(カラオケ)にて。

北村 4000万あげるよ。
藤本 ん?
北村 4000万。あげる。
藤本 4000万? なんですか? 4000万って。
北村 4000万よ。
藤本 4000万?
北村 4000万円。
藤本 4000万円?
北村 あげる。
藤本 え、4000万円くれるという話をしているんですか?
北村 あげる。
藤本 なんで?
北村 12億あるから。
藤本 12億? ……なんの話ですか?
北村 宝くじが12億当たったら、1億は会社に使って、4000万は君にあげる。
藤本 あ、妄想の話か。
北村 こういう覚書を交わそうと思うんだけど……(下書きのような書類を取り出す)
藤本 え、妄想でもうここまでやってるんですか?
北村 こういうのはちゃんとやった方がいいんよ。で、この覚書だけどね、ここの
藤本 ちょちょちょ、
北村 なに?
藤本 仕事しようや。
北村 ん?
藤本 現実見ようや。
北村 現実見たらびっくりするよ(笑)。
藤本 なんで笑ってるんですか。
北村 kitaya、もうすぐ倒産します(笑)。
藤本 ははは。
北村 いやほんとに。
藤本 え?
北村 もうすぐ倒産するのよ、うち。このままだと。ほんとに。
藤本 やばいじゃないですか。
北村 だったらもう宝くじしかないでしょ。
藤本 あ、そこからそうなっちゃったんだ……。
北村 ケバブ売ろうや(※1)。
藤本 ケバブかあ……。
北村 それかかき氷(※2)。
藤本 かき氷ねえ……。

※1)ケバブ売ろうや
ミーティングのときに絶対出る話題。北村のなかでは演劇に関わるよりケバブを売った方が儲かるという考えがあり、どんなことを考えていても最後には「もうケバブ売るしかないよ」と言い出す。

※2)かき氷
ある暑い夏、旦過近辺で2,000円くらいするかき氷を目にして、「夏は高いかき氷を売れば儲かる」という考えが北村に根付いた。それ以来、暑くなってくるとケバブじゃなくてかき氷を売ろうと言うようになった。

北村 食えないんだって、この業界。
藤本 それはもうずっと言ってますね。
北村 あ、それか焼き鳥やる? トライアルの前で焼き鳥売ってるひとがいてさ、
藤本 焼き鳥は嫌だなあ……単価低いし……。
北村 でもたぶんあのトライアルの前のひと、1時間にたぶん20〜30組くらいに売ってて、仮に客単価が……
藤本 これ会社潰れるな!
北村 でしょう?
藤本 でしょうじゃないんですよね。
北村 結構がんばってきたんだけどね。mola!(※3)やったりとか。

※3)mola!
「九州の演劇情報を網羅してやんよ!」と意気込んで始めたニュースサイト。疲弊しながらも8年間で約1800本の記事を発信し続けたが、暖簾をずっと全力で殴ってるみたいだったので辞めた。

北村 あとこの前は『白/道』もEPADさんに取り上げてもらったり。
藤本 記事になりましたね。
北村 ああいうのはありがたいね。
藤本 ああいう機会を上手に活用しないと、なかなか労働の対価には結びつきませんからね。
北村 そうなのよ。
藤本 それどころか、買い叩かれますからね。「制作」と呼ばれる我々の業種なんて特に。
北村 そうそう。
藤本 「うっそ、これだけの期間、これだけのことやって、金額これだけ?」みたいなのが多い。
北村 そうそう。
藤本 そのうえ職権のある人間が権利だけ握って、責任はこっちに押し付けてきて!
北村 え、え、え、
藤本 うちはこの金額でここまでやってるのに!
北村 ちょちょちょ、
藤本 え?
北村 なんか急に火がついたね。どしたん?
藤本 いや、なんか急に怒りが……
北村 こわいよ。
藤本 すいません。
北村 まあ僕も別にお金がすべてと思ってるわけじゃないけどさ。全然手弁当でもいいからやりますっていうのもあるし。
藤本 mola!がその最たるものでしたが。
北村 mola!もそうね。あと北九州モノレールさんとのお仕事とかね。
藤本 車窓デザインも、今年も無事に終わりましたね。
北村 今年のはなんかかわいらしかったね。
藤本 「かわいい」っていう感情あるんですね。
北村 もう運行してるんだっけ?
藤本 作業の翌日から、17日から運行してると思います。
北村 こういうのはさ、全然手弁当でもいいのよ。やるのよ。
藤本 そうですね。
北村 問題は、仕事としての依頼で金額がものすごく低い案件。
藤本 ありますね。
北村 たとえばコンビニでさ、「すいません、この180円のおにぎりが欲しいんですけど、いま100円しか持ってなくて……」っていう場合さ、コンビニならまずおにぎり自体買えないのよ。わかる?
藤本 わかります。
北村 それをさ、我々が「じゃあ160円で売ります」っていう時点でかなりお勉強させていただいてるわけよ。わかる?
藤本 わかりますって。
北村 そういうときにさ、「いや、お金ないので180円のおにぎりを100円で売ってください」って言ってくるというのが、コンビニを潰すような話をしてるようなもんだっていう自覚がないんよね。わかってる!?
藤本 すみません……。
北村 我々はまず、「100円しか持ってないなら、まず100円分の買い物をしてくださいよ」って当たり前のことを望んでるだけなのにね!!
藤本 なんか火がついてきた。
北村 ああごめんごめん。別にね、180円のおにぎりを200円とか220円とかで売りますっていうんじゃないのよ。そもそも弊社はかなり良心的な価格設定にしてると思う。それを100円にしてくれとなると、会社としてはもうどうにもできません。180円のおにぎりは180円で買ってほしい。買えないなら本当は家で作っていただきたい。でもまあ代替案で100円サイズの小さいおにぎりも作れますけどとか、今回は特別に160円で売りますって言ってるだけなんだけどね。でもこれ言うと「お金にうるさい」って思われたりするんだよね。
藤本 確かに。
北村 心の中で「××××××××××」って1万回は叫んだよ。でももうムリ。そもそも適正価格て概念がなさそうなので、叫んでものどを痛めるだけってのに最近気づいた。
藤本 遅いですよ。
北村 業界の構造の問題もあるし、我々が太刀打ちできる問題じゃないかもって思うようになってきたので、そういう案件はお断りしないと、いずれ潰れるんよ。
藤本 そう考えると世界劇団の本坊さん(※4)はえらいなあ……。

※4)世界劇団の本坊さん
医者だからお金があると思われがちだけど演劇やってるからお金がない世界劇団の本坊由華子さん。創りたいものを創るための妥協は一切せず、それは公演予算に関してもそう。「お金ってどうしたら貯まるんですかね?」とよく聞かれるので、そのたびに「本坊さんは演劇やめたら貯まるけど……」と答えている。

北村 本坊さんはほんとすごくがんばってると思うよ。
藤本 本坊さんから値切られた記憶がないですからね。
北村 値切ってもいいことないしって言ってたね。
藤本 えらいなあ……。
北村 でもそれを演劇人全体に強要するのも違うんだろうなとも言ってたね。
藤本 まあ、「医者だから言えるんだろ!」みたいな反発が出たりもするんでしょうね。
北村 彼女、確かに医者ではあるんだけど、自分で会社つくってるから、経営者でもあるんよね。
藤本 確かに、経営者の視点があるから値切らないというのもあるんだろうな。
北村 しかしお金ってどうしたら貯まるんだろうねえ。
藤本 ケバブ売るしかないのか……。
北村 ね? そうなるのよ。
藤本 全然、適正な価格でいい仕事するんですけどねえ……。
北村 適正な価格のお仕事のご相談を待ってます。
藤本 ケバブ屋さんから相談が来たらどうします?
北村 生きるためならなんでもやる。
藤本 あ、やるんだ……。
北村 12億当たったらさあ、
藤本 あ、そこに戻るんですね。
北村 1億会社に渡すからさあ、それでキッチンカー買ってケバブ屋やる?
藤本 ケバブはどうしてもやりたいことなん?