大串到生(ZIG.ZAG.BITE)『チクリトアオイ』インタビュー

2016.07.09

劇団ZIG.ZAG.BITE(福岡)が第二回公演『チクリトアオイ』(脚本・演出:大串到生)を7月17日(日)~24日(日)、福岡市博多区築港本町の湾岸劇場博多扇貝で上演する。

前作に続き、今回も誰もが知っているむかし話と作者の実体験をひとつの物語として紡ぐ「ハードロック御伽草子」。第2弾は竹取物語をモチーフに、作・演出の大串到生の今を描いた『チクリトアオイ』。作品のこと、劇団のこと、これからのことについて大串に訊いた。

劇団ZIG.ZAG.BITE 第二回公演ハードロック御伽草子Vol.2『チクリトアオイ』

―まずは、大串さんと演劇との接点を教えてください。

小学校くらいのときから、文化祭、学芸会みたいなので劇をやることが多くて。声が大きくて先生から褒められて(笑)。なんかそれが楽しくてズルズルと……。高校演劇はやってて、今でこそ全国大会にもバンバン行ってる佐賀東高校演劇部なんですけど、僕のときは全然で。箸にも棒にも引っかからずな感じで(笑)。イヤドミ先生(※1)が、僕が卒業した直後に顧問になられて。それから、福岡大学の演劇部に入って。自分がいちばん上の3回生になるタイミングくらいで、前の劇団「WET BLANKET(※2)」の主宰から、WETに入らないかって誘われました。演劇部を引退するまでの間は、部にも籍を置きつつ劇団の活動も行ってました。

―大学の合同公演にも出演されてましたよね?

はい。当時は結構盛んに合同公演をやってましたね。僕が1年生のときに大学の合同公演があって。当時僕は演劇やる気満々で「合同公演に出たい!」みたいな気持ちだったんですけど、周りは雰囲気的に「1年はどうかなあ」みたいなのがあって(笑)。その時にWETのメンバーと知り合って、それが縁でユニット公演をしました。九州産業大学演劇部のOBの方々メインがやった第0回公演みたいな公演を。その流れでWET BLANKETに入るって感じでした。

―劇団☆新感線の『髑髏城の七人(※3)』をされてましたよね?

ああ、あれはFPAPさんのぽんプラザ10周年記念(※4)の公演だったと思います。部活は引退してて4回生になった年だったと思います。『髑髏城の七人』やりました!

―出演者が無茶苦茶いたような……。

40人強(笑)。ぽんプラザの楽屋に全員入りきれないという。後輩は階段や廊下に待機で大変でした(笑)。

―演目はどのように決めたんですか?

投票だったかな。FPAPさんの10周年記念という企画だったので、会議とかはFPAPさんがいろいろ呼びかけてくれてたんですけど、福岡の各大学から数名づつ集まって、そこでプレゼンしてって感じでした。ただ、大体どの大学も3名くらいの出席だったんですけど、福大は10何名出席してて、メンバーが髑髏城に投票して。半分ズルですね(笑)

―それは……これ以上聞かないほうがいいですね(笑)。では、前の劇団WET BLANKETのことについて聞かせてください。

劇団は去年の8月に解散したんですけど。大学生のとき、立ち上げから関わらせてもらって。エンタメ系の作品を1か月ロングラン公演とか結構精力的にやってた劇団でした。

―それが、去年解散。

結構急な感じで主宰が解散宣言して。自分は解散とかそういうの全然考えてなくて。マジかみたいなのと、仕方ないかみたいなのが両方ありました。でも、解散するちょっと前からWETとは違う感じのものをやりたいとは思ってて。劇団☆新感線からつかこうへい(※5)みたいなのに興味が沸いて。当時、劇団内でもユニットが発生してたりしてたんで、劇団には「こういうのやりたいんですけど」みたいな伺いを立てて、WETの公演の合間に活動できればいいなあとか思ってたら解散して。……結局、自分がやりたいなと思っていたことが残ったという。

―WET BLANKET最後の公演が『髑髏城の七人』。

そうですね。大学の合同公演でごり押しして上演したのも『髑髏城の七人』。劇団最後の作品も『髑髏城の七人』。自分の中では『髑髏城の七人』は思い入れがありますね。

大串到生

―それからすぐにZIG.ZAG.BITEの立ち上げを?

そうですね。当初は自分ともう一人のWETの後輩のふたりでやろうと思ってて。でも、解散するとは思っていなかったからユニットでの活動で、くらいの気持ちだった。WETのメンバーに出演をお願いすればいいやくらいの気持ちで軽く考えてました。それが解散しちゃったので、急遽出演者募集したりワークショップしたりして。そしたら「演劇したこと無いんですけどー」みたいなハタチの女の子が3人入ってくれて、今5人で活動しています。

―女性3名は演劇初心者ですか?

はい。

―大変ですか?

大変ですねー。前の劇団は主宰がいて、僕は年齢的に真ん中。今は僕が28歳で最年長。WETでは結構好き勝手やらせてもらったんだと改めて感じましたね。芝居未経験者女子20歳3名。どう伝えれば伝わるのかとか、ここまで言ったら心が折れるんだとか、大変。なんでも自分で僕がやったら早いんでしょうけどそれではダメで。ちゃんと教えないと、伝えないとって。

―では、今回の作品『チクリトアオイ』についていくつか聞かせてください。どんな作品ですか?

自分の中にあるものを書こうと思いました。前回は自分の幼少期のことをもとに書いたんですけど、今回は今の自分の現状を書きました。周りは仕事や結婚でお芝居をどんどん辞めてっていう、27〜28っていうそういう歳で……。劇団も解散して、それでも演劇続けるのかっていう、エネルギーというか、漠然した自分自身とか、そんなお話なんだけど……すいません(笑)。そういうのなんか書きたいなと思って。

―旗揚げ公演は桃太郎がモチーフでしたね。

前回の旗揚げから、「ハードロック御伽草子」というジャンルを勝手に作って。ロック音楽を掛けながら、桃太郎モチーフにした作品を公演して。今回はかぐや姫がモチーフです。桃太郎やかぐや姫みたいな誰でも知ってるお話と、僕の超個人的な話を掛け合わせたら、面白みとか入り込みやすさとかあるかなあと思って。

―出演者が劇団員以外にも多彩な顔ぶれですよね。

今回の作品は、元WETのメンバーも出演して欲しいという思いがあって声をかけました。あと、椎木樹人(万能グローブガラパゴスダイナモス)さんなど福岡でご活躍されている先輩にも出演していただきます。

―ステージ数も攻めてますね〜。

はい(笑)。12ステージやります。前回6ステージだったので2倍です。1回のキャパが少ないのでこのくらいはやらないと、ってのはあります。あと、人気者になりたいってのが個人的にあって(笑)。なので劇団が人気になればいいと思ってるんですけど……。大きい劇場でしたいとか、ツアーに行きたいとか、まだ漠然としてるんですけど……。ずっとあると思っていた劇団が解散して、27とか28にして、ゼロから劇団を作らないといけないってのは、焦りますね。劇団5周年の時に自分は33とかになってるので……。早く軌道に乗せたいというか、勢いづかせたいってのはあります。いや~焦ってます。キツイですね。

―目標はありますか?

そめごころ(※6)が東京で公演したり、九州を見渡すと不思議少年(※7)の同い年の大迫くんが活躍してて、そういった劇団を見て、演劇のジャンルは違うので評価のされ方も違うんでしょうけど確実に成果を上げているので、自分も成果を上げたい。同じ世代が元気がいいんで、ちょっと悔しいってのはあります。エンタメ系といわれる自分たちの作品で、ツアーとか、今より大きな規模での公演は行いたいですね。たくさんの人に観て欲しいです。それが目標かなあ。んーー、1000人! まずは1000人呼びたいですね。たくさんの観客に支持されたいです。大きな劇場でガツンと1000人でも、小さい劇場でロングランして1000人でも、1000人ってのを目標にしたいですね。

―では、最後にmola!を読んでる皆さんにメッセージをお願いします。

旗揚げ間もない劇団で、いろいろお騒がせしております。しかし、おかげさまで出演者、スタッフ、そして僕の演劇にかける情熱が乗った「この夏、福岡でいちばん熱い演劇」をお届けできそうです。是非皆様、劇場まで足を運んでいただき、一緒に汗かいて叫んで、爆発しましょう! 生きてる実感を感じることができます! よろしくお願いします!


突然のWET BLANKET解散からZIG.ZAG.BITEの旗揚げ、そしてハイペースな作品づくりと、熱意を確実に形にしている大串到生。彼の現在の熱を、劇場でぜひ体感してほしい。

出演は、椎木樹人(万能グローブガラパゴスダイナモス)、田崎小春(万能グローブガラパゴスダイナモス)、迫雅貴(恋愛体質)、権藤拓(ゴンチャンドン)、テシマケント、川上莉穂、舞原より、藤田萌那、(以上、劇団ZIG.ZAG.BITE)。Wキャストで石橋半零(綜合藝能座家下衆會)/光安和幸、西山太一。一部日程での出演で、足立万実。

チケットは一般前売2,000円(当日2,300円)、座席数限定で学生無料。公開ゲネプロ500円。予約・お問い合わせはzig_zag_bite@yahoo.co.jp、080-3220-6537(ZZB制作)まで。

※1)イヤドミ先生
彌冨公成(いやどみこうせい)。佐賀東高校演劇部顧問。県高文連演劇専門部委員長。

※2)WET BLANKET
2015年に解散した、福岡のエンタメ系劇団。

※3)劇団☆新感線の『髑髏城の七人』
古田新太(俳優)、いのうえひでのり(演出家)、中島かずき(作家)を擁する、日本を代表する劇団☆新感線の代表作のひとつ。

※4)FPAPさんのぽんプラザ10周年記念
ぽんプラザホール10周年記念『福岡・九州地域演劇祭』。NPO法人FPAPが、ぽんプラザホール会館10周年を記念して2010年に開催した演劇祭。

※5)つかこうへい
日本の劇作家、演出家、小説家。福岡県嘉穂郡嘉穂町(現・嘉麻市)出身。代表作に『熱海殺人事件』『蒲田行進曲』などがある。

※6)そめごころ
福岡を拠点に活動する「演劇ユニットそめごころ」。今年『反復する、イクツカノ時間と、交わる、イクツモノ時間の中で、僕等にできる、イクツカノこと。』で、愛媛・東京・福岡の3か所ツアー公演を行った。

※7)不思議少年(熊本)
熊本を拠点に活動する劇団。作・演出の大迫旭洋は短編コンクール「劇王 天下統一大会2015」で全国1位に。俳優の森岡光は二兎社『書く女』に出演。9月より、北九州・東京・名古屋・仙台の4か所ツアーを予定している。


劇団ZIG.ZAG.BITE 第二回公演ハードロック御伽草子Vol.2『チクリトアオイ』

脚本・演出:大串到生
日時:2016年7月17日(日)20:00※公開ゲネプロ
        18日(月)13:00/19:30
        19日(火)13:00/19:30
        20日(水)13:00/19:30
        21日(木)休演日
        22日(金)13:00/19:30
        23日(土)13:00/19:30
        24日(日)11:00/15:00
会場:湾岸劇場博多扇貝(福岡市博多区築港本町2-1福岡サンパレス内)
料金:一般前売2,000円(当日2,300円)
   学生無料(座席数限定)
   公開ゲネプロ500円

【関連サイト】
劇団ZIG.ZAG.BITE『チクリトアオイ』特設サイト
劇団ZIG.ZAG.BITE
劇団ZIG.ZAG.BITE(Twitter)

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