劇団きらら『はたらいたさるの話』稽古場レポート
4月29日、5月からの東京・宮崎での『はたらいたさるの話』再演ツアーに向けて稽古中の劇団きららの稽古場におじゃましました。本番前貴重な稽古の合間を縫って、作・演出の池田美樹さん、『はたらいたさるの話』出演中の俳優さん、そして劇団きららのスタイルを作ったと池田さんが全幅の信頼を置く宗真樹子さんに話をうかがいました。
磯田 花まる学習会王子小劇場での2回目の出演でとても嬉しいです。1回目の時はすごくドキドキしていたけど、どこの土地でも上演することにそう違いはないです。どこでも誰とでもいい時間を共有したいと思っています。劇団きららで出来た料理をもっていく感覚です。
有門 若いのに真面目だねー。飛ぶ劇場の『生態系カズクン』で初めて自分が東京公演したときは勘違い野郎だった。22、23歳くらいの自分には東京への期待しかない。でも、いざ行ってみるとこまばアゴラ劇場はすごく小さくて、思い描いていた東京とはイメージがだいぶ違ってた。なにせ飛ぶ劇場に入った当初の僕は「『ウルルン滞在記』に出たいんです」というくらいタレント志向だったから。売れたいんだったら、インターネットで全世界に配信することが可能な今の若い人は芝居を選ばないかもね。
池田 はまゆう(はまもとゆうか)はどう?
はまもと 東京公演の実感はないです。知らない人と出会える、知らない場所に行けることは楽しみです。公演自体が階段、ステップだと思っているので、東京だからといった意気込みはないです。4月に参加した九州俳優の会の『コント寄席』は、素晴らしかったです。知らない人と出会えて楽しかった。エネルギー使うけど。
池田 今は評価されたいという思いがあります。10年くらい前、東京タイニイアリス「アリスフェスティバル」に参加して、その流れで中国・上海戯劇学院「小劇場国際演劇祭」に呼んでもらえて…でも、4回目の東京公演の時にお客さんが作品を楽しんでなく見えたんですよ。そこから自信をなくして、公演中止とかもやっちゃって……。東京、行きたいけどもう行くことはないのかな、と思ってた。でも2年前、劇団だるめしあんが呼んでくれたのがきっかけでまた東京で公演することになった。その時に『ぼくの、おばさん』を上演した王子小劇場(現・花まる学習会王子小劇場)はまさに“たたかう劇場”。年間数百本も観劇する支援会員さんが居たり、その年に公演した劇団の人たちが集う新年会があったり……スタッフから作品に対する厳しい意見ももらえる。公演以外にもすごく附帯するものが多い劇場です。『ガムガムファイター』も『はたらいたさるの話』もここに集う人たちに観て欲しくて売り込みました。あのパワーに振りほどかれないようにしがみつきたいと思ってる。
有門 僕にとっては何度も公演をしていて東京は特別な場所じゃない。最初にも話したけど、最初は東京で舞台に立つことで見出されて…と考えていたけど、それをきっかけに売れたいんだったらやり方が違うことに気づいた。だったらやっぱり上京して1つでも多くの舞台に立たないと。今、僕は家族を持っているけど芝居を続けられている。東京で家族を持ったら芝居を続けられなかったかもしれない。東京に行っていないコンプレックスはどこかにあるけど、今はここで地域でやれること・東京ではできないことをやりたいし、芝居を続けていきたい。1公演でも多く、たくさんの人に観ていただいて、「九州すごいね。熊本がんばってるね」と思ってほしい。
オニムラ 私はわりと平熱です。26歳で劇団きららに入ってすぐに東京公演に行ってたし。それから10年以上経って、今のきららがどのように受け止めてもらえるのか興味があります。
宗 今の池田さんって自信があると思うんですよ。以前、東京に持っていってた作風とも違って来ていて、ここ何年かでやりたいことが固まって劇団きららオリジナルが確立してきたのを近くにいて感じています。「私はこれで行く」という池田さんの覚悟を感じる。きららオリジナルのひとつが“ガヤ”。そのシーンの軸を担うキャストを周囲のキャストが応援する“ガヤ”が、観客席と舞台の独特の一体感を生み出しています。
有門 劇団きららの作品はコツコツ煮込んで緻密に創られています。簡単に真似しようと思ってもそうそう真似できないですよ。相当な稽古量。それがお客様に伝わるし、出演する役者は伸びる。前回客演した時に「休憩せんのんやん、池田さん」って思った(笑)。
池田 私は全然へこたれない有門くん見て、「もっとやっていいんだ」と思ったんだけどね(笑)。本番終わったすぐに練習してたから。
談笑しながらもこぼれる熱い芝居への思い。
劇団でやること、地方で芝居を創ること、芝居を続けること。
様々なファクターがうまく噛み合って、『はたさる』が生まれています。
『はたさる』稽古場は真摯に芝居に向き合いこだわり抜く池田さんを筆頭に、熱気満ち満ちていました。「自信がある」と言える今に至るまでの過程が作品の強さに繋がっている。
池田さんが丹念に料理された劇団きらら自信作をぜひ東京、宮崎、そして近郊の皆様、ご覧ください。
インタビュー・執筆:松岡優子(ゼロソー/Sulcambas!)
劇団きらら『はたらいたさるの話』
作・演出:池田美樹
【東京公演】
日時:2017年5月19日(金)19:30★
20日(土)14:00(託児あり)/19:00★
21日(日)11:00/15:00
★アフタートークあり
会場:花まる学習会王子小劇場(東京都北区王子1-14-4 地下1F)
料金:一般3,000円(当日3,300円)
高校生以下1,000円
リピーター1,500円(要半券提示)
【宮崎公演】みまた演劇フェスティバル「まちドラ!2017」参加作品
日時:2017年5月27日(土)19:30
28日(日)16:00
会場:三股町立文化会館(北諸県郡三股町大字樺山3404-2)
料金:一般1,500円
大学生以下1,000円
【関連サイト】
劇団きらら『はたらいたさるの話』特設サイト
※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。