まっほーのシビウ日記(完結編)ー祭りのあとー
6月21日(水)
朝からブカレストへ向かうメンバーを見送り、自分も夜の出発に備える。ほとんどのインターナショナルボランティアメンバーが出発してしまい、演劇祭が終わっちゃったんだなという実感がようやくわいてくる。
シビウの街は余韻もそこそこに、今日からもう次の映画のフェスティバルが始まろうとしている。
祭り好きやなあ。
私はまたルーマニアに来ることはあるのだろうか。これだけのエネルギーを持った街ならば、いつかきっとまた来よう。
6月22日(木)
3名のボランティアメンバーとともに電車でハンガリー、ブダペストへ。寝台列車にテンションがあがり、まるで修学旅行のよう。
ブダペストの美しい街を歩きながら、シビウでのこの3週間の出来事をしみじみと思い返す。良いことも悪いことも。
仕事面ではあんまり頑張りきれなかったことに対する悔しさがある一方、何よりも現地の方々と働いていて心持ちが随分かわったことは大きな収穫だ。
6月23日(金)
今日から再び一人旅。ベルリンに到着。観光はそこそこにしてまったりする予定。
羽がついたように夢の中を飛び回っていた脳内がそろそろ現実にカムバック。
帰国したら何しよう、誰にあってどんな話をしようなど、そんなことを考えている。
6月24日(土)
朝はレポートを書いて午後からまったり市内観光。ベルリンフィルとドイツ座のチケット入手。
ここでも劇場やアートスポットは多いのだけど、現代的にきれいに整備されて広告も多い街の中では実際よりも存在感が薄い気がする。
そんな中、一番目が行くのはやはりベルリンの壁。
6月25日(日)
昨日、今日と立て続けに日本人の友人に会う。
この2日間、シビウで体験したことと帰国後の進路を考えてはぐるぐるとしていたけど、話してちょっとスッキリ整理された。
夕方から市内を散策し、今からドイツ座でロミオとジュリエットをみてくる。
6月26日(月)
昨日のロミオとジュリエットがとても楽しかった。
ドイツ語はさっぱりわからなかったけど、面白い作品は言語を超越する。
決闘を赤い水を吹きあうことで表現していたり、はしご車をベランダにみたてていたり、全く飽きなかった。話をわかっていたのも大きい。
そしてなんと言ってもハッピーエンド。ロミオもジュリエットも死ななかったからか、終演後の観客の表情がとても晴れ晴れとしていた。
さて、今からオランダ、アムステルダムに向かいます。
6月27日(火)
今日は市内散策ののち、アンネ・フランクの家へ。
アンネに焦点があてられがちだが、展示の最後で彼女だけでなく多くのユダヤ人が犠牲となったことを訴える映像があって良かった。
アムステルダムの街はため息がでるほど美しい。川原でただただ時が流れることに幸せを感じる。
6月28日(水)
天気が悪いのでゴッホ美術館で過ごす。
描かれたいくつもの自画像をみていると、泣きそうになった。30代後半になって自我と対峙し続けるなんて辛かったんじゃないかな。
夜は先月、ポーランドで知り合った日本人の友人のうちでご飯。ほっとする味をかみしめながら、今日までに見聞きしてきたものを話す。
この一ヶ月たくさんのことを感じたけれど、言葉で十分には説明できないな。この体験を人に伝えられるようにできたらな。考えて言葉にする時間が必要だ。
6月29日(木)
オランダから日本に向けて出発!
疲れた!
早く福岡に帰りたい!!
6月30日(金)
38日間に及ぶ長旅が、ようやく終わろうとしている。
シビウでの経験は、学生のときに見たルーマニアと全く違ってみえた。一緒に働いた彼らの姿は、一生懸命だけど自然体でとても素敵だ。
こちらでみたたくさんの舞台も衝撃だった。
きっと似たような表現を留学していたときにも経験してたはずだ。でも当時は観劇にハマり初めてすぐのときだったので、比較してどうという衝撃は薄かった。
あれから7年。
少しずつ、少しずつ私の中に蓄積されていった演劇の常識を揺るがす表現に出会えた。
日本で数多く芝居をみるようになって、なんとなくこういう制限の中でやるべきと考えているものを軽く打ち破ってくれた。
この衝撃をどうか私だけでなく、たくさんの人とも共有できたらいいのに。