独楽劇場:寺井よしみオススメ!水環境の保全を学ぶ市民参加型演劇公演『Meet The うないさん』

2017.08.17

エヌケースリードリームプロ(諫早)が長崎県環境部水環境対策課との共催で実行委員会を立ち上げ、『Meet The うないさん~水のいのち~』(作:エヌケースリードリームプロ脚本部、演出:渡邉享介)を8月27日(日)に諫早市東小路町の諫早市民センター(中央公民館)講堂で、10月22日(日)に諫早市栄町の文化ホール諫早パルファンで上演する。

汚水処理施設普及のための啓発協働事業 夏休み子ども市民参加型演劇公演『Meet The うないさん~水のいのち~』

この公演は「NPOと県がともに働くプロジェクト」のひとつ。地域の課題を解決するために県とNPOが協働して事業を行うというもの。この公演を通じて、水環境の保全の大切さを市民に理解してもらう狙いがある。こどもたちが中心の演劇公演。にぎやかな稽古場で、エヌケースリードリームプロ代表で、今回の演出を手がける渡邉享介に話を聞いた。また、長崎県環境部水環境対策課の担当者にもメールインタビューを行った。

―渡邉さんに伺います。まずこの公演をすることになった経緯を教えてください。

エヌケースリードリームプロは「演劇で社会貢献」ということを掲げて活動しています。長崎県では「NPOと県がともに働くプロジェクト」というものがあるのですが、これは県とNPOが委託などの形でなく「協働」というかたちでうまく地域の問題を解決していこうというものです。水環境対策課との初めての話し合いの結果、お互いに「ああ、いいですね」ということで、水環境の保全について啓発する演劇公演をいっしょにやりましょうということになりました。3か年の事業で、今年は3年目になります。初年度は水環境対策課の方に情報をもらって水環境の保全について勉強し理解を深め、脚本をつくりました。そして、昨年と今年は、実際に演劇公演を行います。

―渡邉さんが思う「演劇で社会貢献」というのは、具体的にどういうことだと思いますか?

汚水処理施設普及のための啓発協働事業 夏休み子ども市民参加型演劇公演『Meet The うないさん~水のいのち~』稽古風景 汚水処理施設普及のための啓発協働事業 夏休み子ども市民参加型演劇公演『Meet The うないさん~水のいのち~』稽古風景

これまでもエヌケースリードリームプロで「自殺防止啓発」「特殊詐欺(オレオレ詐欺)防止啓発」「障がい者就労支援についての理解を深める演劇公演」など、依頼に応じて社会問題を啓発する演劇を作ってきました。しかし私自身、演劇をやってきて、最初はそんなことをしようとは思ってもみなかった。単純に、われわれ演劇人というのは自分たちの演劇作品を作りたいという気持ちで演劇公演をすることが多い。でも、地域に住むひとはあまりそういう演劇作品に興味がないから観にもこない。演劇人はどれだけ一生懸命がんばっていても仕事にもならないという現状がある。それは、演劇人も地域に寄り添っていないからなのでは? って、私個人としては思っているんです。「世の中の社会問題をとりあげて演劇作品を作る」ということを、「これをやってほしい」「啓発してほしい」という地域や団体に寄り添うことで、「演劇で社会貢献」=ビジネスにつながると思っています。

―ニーズのあるところにしかお金は発生しないからですね。社会のニーズに答えることでビジネスになる。お互いにWIN-WINになるってことですよね。

そう! ビジネスの定義が要するに社会貢献だっていう風に私は認識しています。世の中のビジネスというのは突き詰めるとどれも社会貢献につながると思う。これがないとビジネスは成立しない。そう思っています。

―今回の公演の見どころを教えてください。

汚水処理施設普及のための啓発協働事業 夏休み子ども市民参加型演劇公演『Meet The うないさん~水のいのち~』稽古風景 汚水処理施設普及のための啓発協働事業 夏休み子ども市民参加型演劇公演『Meet The うないさん~水のいのち~』稽古風景

諫早のゆるキャラであるうなぎの妖精「うないさん」をモチーフに、うないさんが住む諫早の本明川にいる水辺の仲間たちや、汚水処理施設で戦う「ノンノカーズ」、悪玉微生物「エスカゾーナ」が物語を盛り上げます。その中で、水環境の保全について子どもから大人までおもしろおかしくわかっていただけると思います。
そして、伝えたいのは「みなさんが想像している演劇じゃないですよ」ということです。たぶん市民参加舞台で小中高生中心の演劇というと、一般のひとたちがどういう目線で見ているかっていったら、学校の学芸会が悪いとは思わないけど、どうせそういうレベルの芝居をやるんでしょって思ってる方が多いんじゃないかな。そこは明らかに違うから、それをまず確かめにきてほしいという気持ちがあります。オモシロイ作品を作っています。そして、演劇公演を観ていただくなかで、子どもたちが芸術に携わること、子どものころにこういうことを経験することの大切さもわかってもらえるんじゃないかなと思います。

―今回は、同日開催イベントもあるんですよね。

はい。8月27日は「Nagasaki Music Action 2017」、10月22日は「いさはやエコフェスタ」と同日開催します。他のイベントや団体と同日開催し力を合わせることで、地域のなかで横のつながりができたように思います。こういったイベントに行ってみて「あら、演劇公演もやってるのね?」「入場無料だし、ついでに行ってみようかな」というひとがいたらいいなと思います。きっかけはそれでいいと思うのです。ついででいいから、観たり、関わったりすることが大切なのではないかと思っています。

―ありがとうございました。次に、長崎県環境部水環境対策課のご担当者さまに伺います。今回の公演を通して、地域のみなさまにどんなことを理解してほしいと考えていらっしゃいますか?

各家庭からの生活排水が水路等に流されると、蚊やハエ等の発生、悪臭の原因となり、生活環境が悪化します。また、河川や海域等の公共用水域の水質汚濁が進行します。下水道や浄化槽などの汚水処理施設は、生活環境の改善、河川や海域等の公共用水域の水質保全等に寄与しますので、住民の関心を高め、施設の利用を促進する必要があります。上記のような、日常生活ではあまり気に留めない、公共用水域の水質保全に対する意識の向上を図り、汚水処理施設の適切な利用や設置について、理解をしていただきたいと考えています。

―「演劇」という形で啓発活動を行うメリットや、ここはよかったと思うことを教えていただけますか。

下水道や浄化槽による汚水処理や環境問題が子どもたちにもわかりやすく説明できていたと感じています。

―ありがとうございました。

稽古に熱が入るこどもたち。普段は柔和な渡邉が、時に檄を飛ばし熱い演出をするなかにも、笑いがあふれる稽古場となっていた。子どもたちは、子どもではあるけれど、1人の俳優として任された役にきちんと向き合うことを要求される。責任を持たされる。稽古を見ながら、ひとりひとりの個性を大事にしつつも全体としてひとつの作品を作りあげる過程そのものがオモシロイなと改めて感じた。

渡邉が考える「演劇で社会貢献」をすることで、地域の演劇人が仕事をしていく道筋ができていくのではないか? 諫早市は人口137,000人ほどの地方都市で、大きな劇場があるわけでもない。今回の公演は、いろいろと模索していくなかで見つけたひとつの答えなのだと思う。

個人的には、今回の公演にはスタッフとして関わっている。ぜひぜひたくさんの方に観て頂きたいです! 劇場でお待ちしています!

料金は無料。お問い合わせはエヌケースリードリームプロ0957-42-4118、info@nk3-dream-pro.comまで。

執筆・インタビュー:寺井よしみ(諫早独楽劇場)


汚水処理施設普及のための啓発協働事業
夏休み子ども市民参加型演劇公演『Meet The うないさん~水のいのち~』

作:エヌケースリードリームプロ 脚本部
演出:渡邉享介
出演:諫早市及び近郊在住の小中高生、および、市民役者
日時:2017年8月27日(日)13:00/17:30
会場:諫早市民センター(中央公民館)講堂(諫早市東小路町8-5)
料金:入場無料(全席自由)
※10月22日(日)に文化ホール諫早パルファンでも上演(公演時間などの詳細は未定)

【関連サイト】
夏休み子ども市民参加型演劇公演(Facebook)
エヌケースリードリームプロ
エヌケースリードリームプロ(Facebook)

※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

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