HallBrothersが新作『だめな大人』で初の県外公演
劇団HallBrothers(福岡)『だめな大人』(脚本・演出:幸田真洋)を10月28日(土)~29日(日)に大分市中央町のATHALLで、11月9日(木)~12日(日)福岡市博多区下川端町の博多リバレインホールで上演する。
不慮の事故で夫を失ってしまった伊藤聡美。
失意の底にいた彼女だが、少しずつ人生を取り戻す決意をする。
そうしてやってきた静かな田舎町。
温かく受け入れてくれる人々の優しさに癒され、元気を取り戻していくはず…
だったが―
そこに存在する「人」を丁寧に描き、物語を積み上げることに定評のある幸田真洋。幸田率いる劇団HallBrothersが新作『だめな大人』を上演する。福岡の中堅劇団として着実に地力を付け、風格も付きつつ劇団HallBrothersだが、意外なことに今回が初めての県外公演となる。幸田真洋に、作品のことや劇団のことについて聞いた。
ー今回の作品『だめな大人』ですが、ズバリ、どのような作品でしょうか?
「人のために行動している」と言いながら、実は自分のためにしか動いていない人々がたくさん出てくる作品です。嫌なやつばかり出てくる作品ですね(笑)。
ー嫌なやつばかりですか……。
たとえば、会社なんかで上司から叱責される時に「おまえのためを思って言ってんだよ」なんて言われたことがある……という人は多いと思います。もちろん、本当にその人の成長を願ってあえて苦言を呈してくれる人もいますが、たいていは「単に自分の腹の虫がおさまらないから、とにかく罵倒したい」だったり「部下のせいで自分の評価が下がってしまうから一言言わずにはおれない」だったりするんじゃないか、と。
それを「あなたのために」なんて言われてしまうと、仮に上司が間違ったことを言っていたとしても反論しにくくなってしまいますよね。だって「あなたのため」に言ってくれているのに、それを素直に聞けない自分が人間としてだめなのか……なんて気持ちになってしまうじゃないですか。
ーなるほど、そうですね。
人間はたいてい自分の利益をもとに行動していて、そうそう人のために動けるものではないと僕は思っています。だからこそ、本当に人のために尽くしている人…たとえば災害レスキューなど―を見ると感動するわけですし。けれど、「自分の利益のために」と素直に言う人ってなかなかいなくて、たいてい「あなたのため」なんて言葉で修飾されてしまうわけですね。真面目である人ほど「あなたのため」なんて言われたら身動き取れなくなってしまうんじゃないかと思います。そして世の中には真面目でいい人の方が多いから、嫌なやつ代表の僕としては「人間そんなに立派なものじゃないよ。みんな自分のことしか考えてないよ」ということを見せていかなければいけないな、と思っているんです(笑)。とはいえ、嫌なやつをいやーなままに描くのではなく、「あーこんな人いるいる。」「こんなことあるある」とクスッと笑える感じで描いているので、ニヤニヤしながら眺めてもらって、それも人間、という気持ちになってもらえればな、と。
ー劇団について伺います。劇団HallBrothersはどのような劇団でしょうか?
1999年に旗揚げしたので、今年で18年目です。旗揚げメンバーは僕以外誰も残っていません。いちばん古い役者で2000年から。あとはどんどん入れ替わって、今現在は役者が6人、スタッフが3人ですね。上は40歳から下は21歳まで。たぶんこれからもどんどん入れ替わっていくのかな、と思います。
ー10年、20年と劇団を続けたら、創立メンバーは自分だけ、ということはよく聞きますね。
劇団を始めた当初は運命共同体みたいなイメージで、このメンバーでどこまでも!な思いが強かったんですが、そう上手くはいかなかったですね。たとえば、5年くらいで人気が出て、東京公演だ大阪公演だ!みたいな階段をぐいぐい昇っていく感じだと上手くいったかもしれませんが、残念ながらちっとも人気が出ませんでしたから(笑)。やっぱり未来が見える、見えた気になることがないと「このまま続けてもどうなるんだろう」みたいな感じで、25歳、30歳、と節目節目で就職したり、東京へ出て行ったりでみんな辞めていくんですよね。
ーそんな状況でも劇団を続けた理由はありますか?
僕自身はやるたびに芝居を作り続けたい気持ちが強くなっていったので、劇団はずっと持っていたかった。なので、途中からは「来るもの拒まず去るもの追わず。いるメンバーで芝居を作っていく」というスタンスに切り替えました。ホームページではいつも劇団員を募集しているので、年間で結構な数の問合せがあります。稽古に来てもらってうちの雰囲気と合うと感じてもらえれば、年齢がいくつでも未経験でもすぐに入団してもらって、次の公演から舞台に出てもらいます。
ーオーディションなどで選ぶ、ということは行わないのでしょうか?
経験のない人を舞台へ上げるリスクは当然ありますが、それを上手に使えてこそ僕の演出力や劇作のレベルも上がると思っているので、むしろ積極的に使っていきたい。これまでそうやってきたおかげで、自分自身の能力が上がった手ごたえもありますし。今後も福岡で息長く劇団を続けて行きたいです。売れてお金持ちになりたいという夢はずっと持っていますが、お金持ちになれるほど売れる作風でもないなと40歳になる今、感じていますし、それよりもとにかく芝居を作ることが楽しくてしょうがないですね。ちっともお金にならないので妻は嫌な顔をし続けていますけど。
ー初めての県外公演とのことですが、県外公演をするきっかけなどありましたら教えてください。
mola!の大分舞台芸術フェスティバル参加団体募集の記事を見て、です!
ーえ! お役に立ててうれしいです。
再来年、20周年で、その年には九州内を回るツアーをしたいなと考えていました。そのためには、今年、来年と少しずつ県外公演に馴れていかなきゃな、と思っていた矢先、mola!の記事を見かけました。それで、ちょうどいい!と(笑)。今まで県外でやらなかったのは、自信がないとかお金がないとか、色々理由はありますが、いちばんは単に目の前の公演で精一杯だった、ということです。僕、計画性ないですし、視野もそんなに広くないんですね。なので、目の前に公演があるととにかくそのことだけになってしまう。で、目の前の芝居を作ることが楽しいので、それで満足してしまうところもあります。とにかく芝居だけやれていればいいや、みたいな。こういうところも売れてお金持ちになれるタイプではないのかな、と。しかし、娘もできてお金も稼がないといけませんから(笑)、これからは積極的に外へ出ていきたいです。
ー今後の目標などがあれば教えてください。
まずは先ほども言いましたが、再来年の20周年で九州内ツアーをやりたいです。なぜ九州なのかというと、僕たちの作品は斬新なわけでも尖っているわけでもないので、東京や大阪に行ってもウケないな、と思っているからです。こういうこと言うと九州の人に失礼ですけど、やっぱり福岡も含めて九州って田舎なんですよね。周りの普通に生きている人々と話していると価値観が田舎だな、と思います。けれどそれがダメだと言っているわけではなくて、僕自身も田舎者で保守的なので、田舎的な価値観が大好きだし、それでいいと思っています。そんな人々に向けた芝居を作りたいし、そこに興味がある。なので、九州です。
個人的な目標としては……どうにかしてお金持ちになれれば……と(笑)。
ー最後にmola!をチェックしている方へ一言お願いします!
長く劇団をやっていますが、長いだけで今をときめく「●●●●」や「××××」みたいに人気も華もあありません。が、長いだけに積み上げてきた技術や演劇観はあると自負しています。芝居の楽しみ方はいろいろあると思いますが、僕たちの作品はきちんと人間や人生、社会を見つめたい人に特にお勧めです。忙しい世の中で、落ち着いて自分と対話できるような時間はなかなかないですが、劇場と僕たちの作品にはそれがあります。是非、劇場へ足をお運びください。お待ちしています。
出演は、坂井操、永倉亜沙美、萩原あや、唐島経祐、大塚雄太、をとん。、幸田真洋。
チケットは、大分公演が前売2,000円(当日2,300円)。福岡公演が前売1,800円(当日2,000円)。ローソンチケット(Lコード:83034)、予約フォームでの取り扱い。
お問い合わせはseisaku@h-bros.net、090-8410-4267(ハギワラ)まで。
劇団HallBrothers『だめな大人』
脚本・演出:幸田真洋
【大分公演】
日時:2017年10月28日(土)19:00
29日(日)14:30
会場:AT HALL(大分市中央町2-6-4)
料金:前売2,000円(当日2,300円)
【福岡公演】
日時:2017年11月9日(木)19:30
10日(金)19:30
11日(土)19:00
12日(日)14:30※
※託児サービスあり(要事前申込)
会場:博多リバレインホール(福岡市博多区下川端町3-1)
料金:前売1,800円(当日2,000円)
【関連サイト】
劇団HallBrothers
劇団HallBrothers(Facebook)
劇団HallBrothers(Twitter)
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