第1回mola!リニューアル会議「mola!賞の創設について」

2019.02.06

2018年末、mola!を管理・運営するkitaya505の事務所が潰れた(※1)。

※1)kitaya505の事務所が潰れた
kitaya505は登記上の事務所はあるものの、北九州市小倉北区の中心地・魚町のとあるファーストフード店を「事務所」と称し、ここで数々の打ち合わせを行ってきた。mola!の記事もここで多く書かれた。2018年12月に突如閉店。

それ以来、よい事務所が見つからず、社内ミーティングの頻度が激減。しかし、年が明けてようやく2019年度の業務スケジュールが大まかに見えてきたため、意を決してミーティングを実施。今年初のミーティングは、過去に愛用していたモスバーガーで行われた。

議題は多岐に渡ったが、そのひとつに「mola!の事業としての見直し」があった。「飽きた」「つらい」「お金にならん」といった課題にどう対処していくか。気づけば5年目を迎えていたmola!をなるべく前向きでやっていくため、編集長の藤本瑞樹と、kitaya505代表の北村功治によるミーティングが始まった。


藤本 mola!の記事というか、方向性を少しずつ変えていきたいと思ってるんですけど。
北村 言ってたね。
藤本 そういえば僕たち(藤本・北村)でなにかについて話す、みたいなのはmola!でやってなかったなと思って。
北村 うん。
藤本 特集ページでそういうものも載せていいかなと思ってるんですけど。
北村 どういうこと話すの?
藤本 雑誌の小さいコーナーとかで、「今月の映画」みたいな感じで1本の映画についていろんなひとが語る、みたいなのがあるじゃないですか。ああいうことをやってもいいかなと思ってるんです。
北村 映画? 映画、あんまり観らんよ。
藤本 いや、映画は例えですけど。なにかひとつテーマを決めて、それについて語る、という。
北村 あ、そういうことね。
藤本 それで、まあとりあえず「賞」について話しましょうか、と。
北村 賞?
藤本 戯曲賞とか作品賞とか。ちょうどいま劇作家協会の新人戯曲賞が決まるぞ、っていうタイミング(※2)だし。
北村 最近だったら北九州の劇団代表者会議だっけ? あそこが俳優賞みたいなのあげてた(※3)ね。

※2)ちょうどいま劇作家協会の新人戯曲賞が決まるぞ、っていうタイミング
このミーティングが行われたのは1月25日で、その翌日に日本劇作家協会新人戯曲賞が決定した。

※3)北九州の劇団代表者会議だっけ? あそこが俳優賞みたいなのあげてた
北九州を拠点に活動する団体の交流の場として、2014年に発足された北九州劇団代表者会議。現在18団体が参加。2018年俳優賞を、木村健二(飛ぶ劇場)と宮村耳々が受賞した。

藤本 ありましたね。ていうかそもそも「賞」ってなんなんですかね。もらったことがないからわからない。
北村 僕は「権威」だと思うよ。
藤本 権威? それはあげる側がですか?
北村 もらった側もあげる側も両方。あげる方は賞を与える力があるでしょ。もらった方はその恩恵を受けるというか、力を得るでしょ。賞があることで価値が生まれるから。「○○賞を取った」っていう権威を与えるとか得ることで、助成金が取れるようになったり仕事が増えたり、次につながってくる。まあ賞の大小はあるかもわからんけど、権威は権威だと思う。
藤本 mola!で賞をつくるとしたら、どういうものにしましょうかね。
北村 あー、mola!で賞ねえ……。でもうち賞金出せないよ?
藤本 mola!自体がまったくお金を稼いでないですからね……。
北村 うちが賞ほしいよ。
藤本 賞は別になくてもいいけど、賞金だけほしいですね。
北村 金がほしい。金だけがほしい。
藤本 mola!は「賞だけあってもね」っていう賞にしますか。
北村 どうせなら権威にもくそにも何にもならん賞がいいよね。mola!だし。
藤本 そうですね。
北村 俳優とか作品とか、そういうものに対して表彰するっていうのはある意味わかりやすいけど、僕は普段スポットライトが当たってないところにスポットライトを当てたいというか、評価したいっていうのはずっと思ってたんよね。
藤本 あーなるほど。
北村 評価ってなるとおこがましいけど、「僕たちはこういう視点を面白がるよ」っていう。「mola!的にはこういうところにスポットを当てたいよね」っていうのを無理矢理賞にしました! みたいな感じになるならおもしろいかな。
藤本 確かに。
北村 ゴールデンラズベリー賞だっけ? 毎年、アカデミー賞授賞式の前に最低の映画を選んで表彰するやつ。 ああいうシャレの利いたのも面白いけど、そんなに芝居観てないし、場合によっては揉めそうだな。
藤本 揉めそうですね。
北村 「我々じゃないとここに賞をあげられないな」ってのはどう? 無理くり評価する、というか。
藤本 「2018年に上演された作品のなかでいちばんタイトルが長い」とか。
北村 いいね。そういう方向の。
藤本 「結局いちばん名前の読み方がわからなかった俳優賞」とか。
北村 たまにいらっしゃるよね。読み方がわからんから、どう打ったら漢字変換できるかわからんっていう方。
藤本 コピペしようにも、ググりたくてもググれないんですよね。検索するところに打ち込めないから。
北村 これ賞にするかどうかは別として、熊本の大帝ポペ(※4)が「mola!の記事を読んだって受付で言ってくれたら粗品贈呈」っていうのをたまにやってくれてるんだけど、実際そういうお客さんが来てくれてるのかどうかは知らないんよね。そういう、「mola!に気を遣ってくれてありがとう賞」じゃないけど、賞をきっかけに聞いてみたりはできるかなとは思うかな。
藤本 あー。
北村 この前も、Yb(イッテルビウム)(※5)さんだったかな、コメントの最後に「mola!さん最高!」的なことを言ってくれてて。
藤本 ありましたね。

※4)大帝ポペ
熊本を拠点に活動する演劇ユニット。公演情報を掲載するたびに、代表のはまもとゆうかが「「mola!を見たよ」の合言葉で粗品をプレゼント」という企画をやってくれている。
関連記事:大帝ポペ、熊本県民を巻き込んだ緊急企画!?

※5)Yb(イッテルビウム)
福岡を拠点に活動する劇団。学生劇団からスタートし、メンバーが全員社会人となる節目の公演を終えたばかり。
関連記事:Yb(イッテルビウム)が自信作で節目となる公演

北村 あれは掲載しても大丈夫な範囲内だったから残したけど、たまに「mola!さんはこんなに自分たちのことを取り上げてくれてなんとかかんとか……」みたいな、「そこまでmola!のこと持ち上げなくても大丈夫ですよ」ってくらい言ってくれる団体さんもあって。そういうのは、「そのまま載せるのもなんかはばかられるな……」と思ってばっさりカットしたりしてる。
藤本 切ってたんですね。
北村 そういうこと言ってくれるのって若手の方たちが多いかな。若手のひとたちってなかなか賞とかもらう機会ないだろうから、そういうところにも賞をきっかけにスポットを当てられたらいいなとは思う。
藤本 でも「賞をあげます」ってなると、いろいろ作品を観ないといけなくなりますね……。
北村 そうやね。「九州の演劇情報をモーラ!する」つってるくらいだから、九州中の作品を観ないと不公平になるけどお金もかかるし……。
藤本 mola!自体がまったくお金を稼いでないのに……。
北村 観らんでもあげられる賞ないかな。
藤本 「チラシのデザインをほめたい」っていうのはあるんですよね。制作の会社だし。
北村 そういうかっちりした賞じゃなくて、くだらない方がいいよ。もらってうれしいやつはmola!でやらんでもいいやろ。
藤本 じゃあもう「結局いちばん名前の読み方がわからなかった俳優賞」ですね。
北村 「出演者がいちばん多かった」とか「チケットの料金体系がいちばん複雑だった」とか「公演回数が多かった」とか……特徴は評価しやすいかもね。
藤本 そうですね。
北村 「いちばん面白かった割引」とか。
藤本 あー。
北村 こふく劇場(※6)が「やさい割」っていうのをやってて、家庭で収穫した野菜を持ってきてくれたら割り引くっていうのなんだけど、実はこれがかなり重宝したらしくて。あそこって公演期間中はお弁当取るとかじゃなくて自分たちで炊き出ししてるんだけど、それにそのまま持ってきてもらった野菜が使えて。
藤本 かしこい! ケータリング費(※7)が抑えられる!
北村 そうそう。これはなかなか画期的。受賞のコメントも料理長のあべさん(※8)にもらうとか。
藤本 いいですね。
北村 あと、若い団体さんたちがよく「え、なにそれ」みたいな割引をやってるけど。
藤本 「きゅぽ割」(※9)とか。
北村 「きゅぽ割」あったね。

※6)こふく劇場
宮崎を拠点に活動する劇団こふく劇場。2018年8月〜19年2月にかけて『ただいま』(作・演出:永山智行)を全国10か所で上演。

※7)ケータリング費
食費のこと。公演期間中必ず発生する費用ではあるが、経費の対象とならないことが多く、個々の手出しとなるケースも多いため、ケータリング費を安く抑える工夫が求められている。

※8)料理長のあべさん
劇団こふく劇場の女優、あべゆう。

※9)きゅぽ割
アートユニット豆小僧◎(福岡)が第6回本公演『ちよこれいと、』で実施した割引。「卒業証書などを入れる筒を持ってきて受付できゅぽってしてくれたら100円引き」。

藤本 そういう切り口で、いろんなところにスポットライトを当てられるとよさそうですね。
北村 なるべく権威にならないような方向で。
藤本 そうですね。
北村 まあやるとしても2019年終わってからかな。
藤本 年末まで覚えてますかね。
北村 「うちの劇団、今年の作品こんなに長いタイトルだったんでmola!で賞ください!」みたいなの申告してもらえれば楽かな。
藤本 もう自分たちで探そうともせず。
北村 まあでもそういうのって、記事で取り上げるときに切り口のひとつとしてmola!読んでくれてるひとたちにアピールできるよね。
藤本 それはありますね。
北村 賞に値するユニークなことやってるなら、積極的に教えてほしいもん。
藤本 公演情報のご提供はこちらからできますので。
北村 「こういう賞希望」って書き添えてもらって。
藤本 自薦、即受賞。
北村 うれしいんかな?
藤本 まあ、もらっても何にもならん賞っていう趣旨なので。

【関連サイト】
北九州劇団代表者会議
大帝ポペ
Yb(イッテルビウム)
劇団こふく劇場
アートユニット豆小僧◎(Twitter)

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