やよひ住宅 島田佳代 よし子は空き地に立っていた。 春はまだ遠く「売物件」の幟旗が風になびくのとよし子がマフラーに顎を埋める動作が連動している。木の杭とトラロープで包囲された土地は建物が乗っかっていた時の印象より狭い…
坂のてっぺんに取り残されてしまった。しばらく茫然としていたが、寒さで歯がかちかち鳴り、身震いした。地図アプリで場所を確かめようとしたがスマホも充電切れだった。じっとしていても仕方がないので、和田は歩いて坂を下った。来た…
道路をはさんで戸建ての並ぶ、長い坂道を登りながら和田は愚痴を吐いた。 「あーーーーーーーー!!!!! っざけんなったくよーーーーーーー!!!!! あぎゃーーーーー!!!!! ほげーーーーーー!!!!!!!!!! …
ソバ屋の暖簾をくぐって格子戸を開けると、「ピン、ポン」と間の抜けた入店音がし、ダミ声のジャズが聴こえてきた。アナログ盤のようで、ぷつぷつとノイズが混じっていた。10人も入れば満席の、カウンターだけの細長い店で、厨房の寸…
和菓子屋「ころぼっくる」までは事務所から車で20分程度の距離なのだが、駅前の渋滞を抜けるのに20分かかり、かつ、和田はセックスのことばかり考えて運転していたので道に迷った。大通りを走っていたはずが、車線が減り、いつの間…
車の歌 藤原達郎 和田哲二は渋滞に巻き込まれていた。 週末のO駅前は例外なく混む。車線はすべて埋まり、自転車ならまだしも、歩行者にも抜き去られる始末だった。抜け道のあてもない。そもそも和田は車の運転が下手だ。信号のな…
2020年12月に公募を行い、エントリー即受賞が確約されていた「mola!賞2020」。今年は6件のエントリーがあり、6件すべて無事受賞となった。受賞者/団体は以下の通り(掲載は応募順)。mola!編集長の藤本瑞樹、ki…
オンライン以外のミーティングも増えてきた11月某日。mola!編集長の藤本瑞樹と、kitaya505代表の北村功治によるミーティングが行われた。
公演活動の再開にあたって絶対に忘れてはならないのが、表現活動の受け皿となる「施設」の存在だ。このコロナ禍において、劇場を始めとして、ライブハウスや映画館、美術館など、さまざまな施設がその機能を停止せざるを得ない状況が生ま…
夏ごろから、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に留意しつつ、演劇の公演活動が再開し始めた。観客の入場制限も緩和されたため、これからますます活動再開に向けた取り組みが盛んになっていくと思われる。しかし、総客席数の大幅な…