他者との関係性を問い直すStereo ArTの新作『スモーク』
Stereo ArT(長崎)が7th LIVE『スモーク』(作・演出:田中俊亮)を9月23日(土)~24日(日)に長崎市宝町の宝町ポケットシアターで、10月14日(土)~15日(日)に諫早市八天町の諫早独楽劇場で上演する。
必要とされることは必要ですか? 私にはそれが必要でした。
私の部屋に男がいます。
彼には帰る家がないんだそうです。
出逢ったのは初秋のこと。
まるで今日と同じように、
まだ夏の暑さが残る昼下がりでした。
1年は毎日の積み重ね。
そう思って一緒に生活してきましたが、
時計の進み具合が違ったようです。
「ケムリに巻かれた時は出来るだけ
身を低くして、なるべく遠くへ
逃げなきゃ駄目よ」
かつてこの部屋にいた母の言葉が
身に沁みて、
下を向いた彼を眺める私の視界は、
少しだけボヤけているようでした。
「演劇という芸術の面白さ」をテーマに活動するStereo ArT。代表で作・演出の田中俊亮と出演者に話を聞いた。
―「必要とされることは必要ですか? 私にはそれが必要でした。」というキャッチコピーが印象的なのですが、この作品の着想はなんでしょうか?
田中 そうですね。30代になってよく思うようになったのですが、結構、20代の頃は「ひとりで生きてやるぜ!」みたいなところが多々あったと思うんですけど、30歳すぎてひとりじゃ生きられないんだなと感じるようになりました。……なんだろう、ある部分では誰かに依存をしているし自分もされているし。それは、家族であったり友人であったり演劇仲間であったりとか。そういうとこで互いにちょっとずつ自分のものを渡して、相手のものを何パーセントかもらって、何とか生活している。生きてるんだなって感じたのがこの作品のスタートかなって思います。
―それぞれの登場人物が、お互いを必要としている関係性のドラマということでしょうか? また、チラシには時計がモチーフに描かれていますが、これは作品世界をどのように表しているのでしょうか?
田中 「お互いの必要性」についてはそうですね。時計は……時間にはこだわろうかなと思っていて。体感時間って人によって違うじゃないですか。状況によっても変わる。体感時間は違うんだけど、時計は一定みたいな。そういうとこって面白いなって思って。なかなか進まないときもあるし、進むときもある。あらすじにもあるんですけど、きづいたらお互いの時間がずれてたという状況からおはなしは始まります。
―Stereo ArTでの諫早公演は初めてですよね。同じ長崎県ではあるけれど意外と近くて遠い長崎市と諫早市ですが、創作していて面白いなと思うことなどはありますか?
田中 今年5月に『演劇で伝える諫早の歴史』で演出をさせていただいて、諫早に通ったわけですが、実感として「遠いな」というのがよくわかりました。遠いということはやってることが違う。普段見てきている芝居も違うし。その人たちが長崎市にきて一緒に作品を作っているというのは、単純に面白いなと思います。今回、長崎と諫早の役者がほぼ半々。長崎公演と諫早公演でホームとアウェイが入れ替わるのも特徴ですね。
―出演者のみなさまからも、一言ずつ意気込みなどをいただけますでしょうか。
山本 自分が演じるあきこは、すごく「自分」だと思っています。今まで演じてきた役のなかで一番自分に近いなと。5人登場人物がいるんですけど誰に感情移入するかってお客さんでそれぞれ違うと思います。誰に注目してもすごく面白いと思うので5人いるので5回見てほしいです!
小山 この作品は、俺の中ではですね。ぎりぎり。きわどい作品。日常に近い部分がものすごくある作品で普段やっていることなのに、いざ演じてみるといろんな感情がワーッと湧いてきてわけわからなくなったりします。そこがおもしろいなと思っています。
宮本 約5年ぶりのStereo ArT出演にドキドキしてます。それぞれの感情と状況を楽しんでもらいたい作品ですね。今までにない役で戸惑うこともありますが、自分の新しい色を見つけて頑張りますよ~!!
今村 いつもやっているお芝居の内容とは違う不思議な世界のものをがっつりとやらせてもらうというのは初めての挑戦で刺激的で楽しいんですけど、五里霧中(笑)。それこそ煙のなかにいる感じです。がんばります。
石長 Stereo ArTは初期から観ていて作品がすごく好きなんです。出演させていただくのは3回目。うれしい限りです。久しぶりにナマのオンナを演じるのでうれしいんですけど戸惑いもあります(笑)。いろんな年代の方に観ていただきたいですね。オトコとオンナの話です! 意外とこういうお芝居少ないですよね。ナマっぽいやつ。お楽しみに~!
―最後に、田中さんにお尋ねします。今回の見どころを教えていただけますか?
田中 今回キャストが5人いて、5人がそれぞれの時間軸で生きています。全体の眺めも楽しんでほしいし、気が向いた誰かをクローズアップしても楽しんでほしいです。それぞれの時間軸のなかで生きているひとたちと「自分」の体感時間を比べてほしいですね。
ある特定の人との関係に依存しすぎてしまうと苦しくなる。けれども寄りかからずにはいられない気持ち。ひとはひとりでは生きていけないのだと実感したところが作品のスタートということを聞き、腑に落ちる気がした。最近「頼る/頼られる」ということはよいけれど、「依存する/依存させる」ということはよくないんじゃないかと感じていた。でもその2つは具体的にどう違うのだろう? 作品を観たら答えが出るのかもしれないし、出ないのかもしれない。ひとりでは生きていけないということとひとりでも生きていけるは同義語なのかもしれない。時間の流れが重なったり、時に離れたりしながら人生における登場人物は交代し、日々は続いていくのだろう。さて私は、『スモーク』に出てくるどの登場人物に想いを馳せるのだろうか? 稽古場を観ながらそんなことを感じた。
繊細な感情表現を得意とするStereo ArT。「スモーク」がかかった前の見えないひとたちのお話。ぜひたくさんの方に観ていただきたい。今、モヤがかかっているひとも、かかっていないひとも。
出演は、山本安佳里(梅とチーズ)、小山正平(F’s Company)、宮本未貴(F’s Company)、今村節子(劇団きんしゃい)、石長由紀子(劇団アクターズ/長崎ドラマリーディングの会)。
チケットは、一般1,800円(当日2,000円)、U-22 1,000円(当日1,200円)
予約・お問い合わせはステレオアート事務局megumi@fs-company.com、090-8415-7400まで。
執筆・インタビュー:寺井よしみ(諫早独楽劇場)
Stereo ArT 7th-Live『スモーク』
作・演出:田中俊亮
料金:一般1,800円(当日2,000円)
U-22 1,000円(当日1,200円)
【長崎公演】
日時:2017年9月23日(土) 16:00/21:00
24日(日) 14:00/19:00
会場:宝町ポケットシアター(長崎市宝町5-25-2F)
【諫早公演】
日時:2017年10月14日(土) 19:00
15日(日) 14:00/18:00
会場:諫早独楽劇場(諫早市八天町15-4 KGビル2F)
【関連サイト】
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