劇団HIT!STAGE×劇団ヒロシ軍が、戦後と現代をつなぐ佐世保の夜の物語を上演
劇団HIT!STAGE(佐世保)×劇団ヒロシ軍(諫早)がAMCFプロデュース『花の棲む街』(作:森馨由、共同演出:田原佐知子・荒木宏志、監修:和田喜夫)を1月20日(土)~21日(日)佐世保市平瀬町の佐世保市民文化ホールで、1月26日(金)~28日(日)に福岡市博多区祇園町のぽんプラザホールで上演する。
物語の主人公は30歳の青年。
自分の中の空白を持て余していた彼に、亡き祖母より一通の手紙が……。
同封された写真の裏には「エリー、佐世保にて」の文字。
彼はその文字に突き動かされ、佐世保を目指した。
戦後70年の街は米軍基地を受け入れ、その存在を疑問に思う者は少ない。
その様子に驚きながら、青年は一軒のナイトクラブへ辿り着く。
その店は寂れ、客はおらず、いわくありげなオーナーと、国籍不明のバーテンダー。
時代遅れのドレスを着た女性が三名。
寂れた店に咲き誇る三人の女性は、「基地のある街」に、どこか相応しかった。
その中の一人が、写真の女性と似ている。
「エリー」は、戦後の佐世保の街で生きていたパンパン――娼婦の名だった。
やがて、この店で起こる数々の出来事が、彼の過去を解くカギとなる。
戦争を知らない世代がひも解く、今は忘れ去られた佐世保の夜の物語。
昨年度の「キビるフェス2017」でリーディング公演を行った本作をブラッシュアップし、本公演として佐世保と福岡で上演。作家の森馨由(劇団HIT!STAGE)と共同演出の田原佐知子(劇団HIT!STAGE)、荒木宏志(劇団ヒロシ軍)に話を聞いた。
―作家の森さんにお尋ねします。『花の棲む街』は、どのような着想から生まれた物語なのでしょうか。
森 発端は、行きつけのカフェのマスターから聞いた話でした。第二次世界大戦後の佐世保に「パンパン」がいた。「パンパン」とは、戦後、在日米軍将兵を相手にした街頭の私娼の事で、そんなに昔ではない時代に食べていくために身体を売っていた女性がいたという内容に衝撃を受けました。そして、そのような生命力が現代に欠けているような気がしました。
戦争の後ですから、我々の想像を絶する生への執着があったでしょうし、一概に現代の人間と比べるものではないかもしれませんが、ただ、あの頃の人々が我々を見てどのように感じるのだろうと思ったのが、今回の戯曲を書こうと思ったきっかけです。あの頃の女性が必死で繋いできた命のリレー。私はそのバトンを受け取るに相応しいパワーを持ってるだろうか? 自分に問いかける意味も含め『花の棲む街』を書きました。
―森さんは「佐世保」の物語を数々執筆されていますが「佐世保」にこだわる理由、土地への想いを教えてください。
森 これを言うと佐世保の方に怒られそうですが、初めは「佐世保って自慢できる場所もないし、食べ物も普通やし、田舎やし、海しかないやん」って思ってました。ですが、佐世保を舞台に戯曲を書かねばならない状況だったので必死でいい所を探しました。そうすると、結構あるものなんですよね。佐世保バーガーがあるし、ハウステンボスがあるし、甲子園に出て活躍した高校が近くにあるし。まあ、海しかないけど九十九島はとても眺めがいいし。すると不思議な現象が。「佐世保のいい所」探しをすると逆に佐世保からパワーをもらっている感覚が芽生えてきました。佐世保弁や実際にある地名を使う事で地に足のついた作品が書ける! ……気がする。戯曲を書く度、佐世保と両想いになっている感覚です。私が「佐世保」にこだわるのは、私の心がこの街で育ったからなんだなと、自分の戯曲を通し改めて気付かされました。
―2つの個性の違う劇団がコラボすることの、面白さと難しさがあると思います。特に共同演出というスタイルで演出をされる田原さんと荒木さんにその辺をお伺いできたらと思います。
荒木 前回のリーディング公演では田原さんが演出で僕は役者だけやってたらよかったんですけど、今回、共同演出ということでお話を頂きまして、すごく悩んだんですけど最終的にお引き受けしました。演出家として自分は何もできないという思いがあったのですが、まあ、逆に何もできないってことを正直に言って、そこから自分がこの作品に対して何ができるのかということを考えたいと思いました。それで、田原さんや森さんと稽古に入る前に何回か時間をかけて作品についての話し合いをしましたよね。観客に『花の棲む街』という作品の何を一番伝えたいのかをすり合わせた時に3人とも同じ答えが出てきたので、それをもとに出てきた矛盾点であったりとかおかしな点をどういう風に解決していくかということをお互いを尊重しつつ話し合いましたね。ヒロシ軍の作風とヒットステージの作風は全然違うじゃないですか。だからこそお互いを尊重しあって結構すりあわせしました。
田原 すり合わせをしていくなかで、ヒロシ君が考えていることの面白さであったりとか、すごく新鮮な目線というものを感じました。今日の稽古でもそうだったんですけど、私がこうしたらいいんじゃないかというものをヒロシ君はさらに増幅してくれる。逆もあるんですけど、そういったことを繰り返しながらやっていて、ほんとにお互い尊重しながらやれています。私も共同演出ということで、最初はどうやっていくのかと私なりに悩んでいたんですけど、すり合せをやったり立ち稽古をするなかで「動きをどうするか」「こうしたら効果的なんじゃないか」「なるほど」ってお互いに意見を出し合って喧嘩にはならない(笑)。楽しくやれています。この作品で表現したいことの土台というのは2人とも合致しているので、その土台に乗せていく部分を2人で考えていく作業をやっています。それが大きく高くなるほど面白くなると思うのですけど、どんどんどんどんうず高く積みあがっていくような感じがここ数日の稽古でもあったし、これからももっとそうなっていくと思うのでワクワクしています。作風が違うからというより、作風が違うからこそ面白くなると思うんです。
―本作の見どころをそれぞれに教えていただけますか?
森 見どころは全部です(笑)。でも一番の見どころは、諫早の劇団ヒロシ軍とのコラボです。『花の棲む街』を上演するにあたりヒロシ軍の役者さんを魅力的に見せたいというプロデューサーの意向がありました。私もヒロシ軍の俳優さんは大好きです。「魅力的に見せる」という使命には、多少プレッシャーがありましたが(笑)……その点はお客様にジャッジしていただけましたら。あと、佐世保公演は大正12年に第一次世界大戦の凱旋記念館として開館した「佐世保市民文化ホール」で上演します。『花の棲む街』にピッタリな施設で、このホールでしかできない演出を考えております。佐世保公演のみの特別な空間になると思いますので、こちらも見どころです!!
荒木 タイトル『花の棲む街』。戦後の佐世保が題材というと「重い話なのかな」「難しい話なのかな」「若いひとには無理なんかな」みたいな感じがしますけど、そんなことは全然なくて老若男女普通に楽しめるんじゃないかなというのがほんと正直な気持ちです。戦後の佐世保のひとたちの活気だったり、生に対する執着心を表現できたらいいなと思っています。たくさんの方に観にきていただきたいです。
田原 生きることに対する執着心が隅々に散りばめられているお話です。言い方悪いんですけど、生きることを当たり前と感じていてどうやって生きていっていいのかわからないというような現代の登場人物も出てきます。そのひとがどう変化していくのか、どういう風にベールを脱いでいくのか、みたいなところも表現できたらいいなと思います。このお話は佐世保の街のお話ですが、同じような街は日本中の至るところにあったと思うのです。そういう意味では佐世保に住んでいるひとたちだけでなく、他地域の方にも響くお話になるかと思います。敗戦になり戦争の傷跡によって倒れ伏していたひとたちがどう立ち上がっていったのかを、伝えたいというより感じ取って頂けたらなと思いますね。重い話ではないですし、誰でも楽しめるお芝居ですし、誰しもが何かを感じ取っていただけるお芝居なるんじゃないかなと思っています。
出演は、森タカコ、真島クミ(以上、劇団HIT!STAGE)、荒木宏志、中村幸(以上、劇団ヒロシ軍)、友田宗大、宮地悦子。
チケットは、佐世保公演一般1,500円(当日2,000円)、大学生以下700円(当日1,200円)。福岡公演一般2,500円(当日3,000円)、大学生以下1,500円(当日2,000円)。
予約・お問い合わせは、アートマネージメントセンター福岡yamaura@amcf.jp、092-752-8880、劇団HIT!STAGE hitstage0402@yahoo.co.jp、080-8380-9739まで。
劇団HIT!STAGE×劇団ヒロシ軍 AMCFプロデュース『花の棲む街』
作:森馨由
共同演出:田原佐知子・荒木宏志
監修:和田喜夫
【佐世保公演】
日時:2018年1月20日(土)19:00
21日(日)14:00
会場:佐世保市民文化ホール(佐世保市平瀬町2)
料金:一般1,500円(当日2,000円)
大学生以下700円(当日1,200円)
【福岡公演】キビるフェス2018〜福岡きびる舞台芸術祭〜参加作品
日時:2018年1月26日(金)19:30
27日(土)19:00
28日(日)14:00
会場:ぽんプラザホール(福岡市博多区祇園町8-3)
料金:一般2,500円(当日3,000円)
大学生以下1,500円(当日2,000円)
【関連サイト】
劇団HIT!STAGE
劇団ヒロシ軍
キビるフェス2018特設サイト
※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。
執筆・インタビュー:寺井よしみ(諫早独楽劇場)