命を痛快に描いた『素敵じゃないか』、5年ぶりの再演

2019.02.27

劇団RAWWORKS(長崎)が第九回公演『素敵じゃないか』(作:たじま裕一、演出:池田美樹)を3月2日(土)~3日(日)、佐世保市三浦町のアルカスSASEBO 第1リハーサル室で上演する。

劇団RAWWORKS 第九回公演『素敵じゃないか』

9回の表、最後の一球…!

「こどもが欲しい」
夫婦共有の夢として不妊治療に励む留美と末虎。
しかし失敗を繰り返すうちに、夢のかたちがゆがみ始める。
「自由が欲しい」
一夜の快楽の結果、授かってしまったカオリと涼太。
望まぬ未来に慌てふためき、若さいっぱいにあがきまわる。
「覚悟の一球」
そして留美とカオリ、対象的な2人の女性があるところで出会う…

夢のない人生なんてつまらない。
いや、その通りです。でも強い希望は、ときに人をがんじがらめにしてしまうことがある。
9回の裏、最後の一球。
最後。もう、最後。思いつめて、悲壮感たっぷりに。
でも生きてる限り、「次」が来る。終了のサイレンの後、見上げる空の青さ。
さて、じゃあ次、どうしよう…?

2組のカップルを痛快に演じ分ける2人の俳優。
長崎・福岡・大分・熊本を股にかけて誕生した「命のコメディ」。

劇団RAWWORKSが2010年~2014年に長崎、福岡、大分、熊本で上演を重ねてきた『素敵じゃないか』を、5年ぶりに再演する。劇団RAWWORKSの主宰で、本作に出演の川内清通、同じく出演の酒瀬川真世、演出を務める池田美樹、脚本のたじま裕一に、本作について聞いた。

ー今回『素敵じゃないか』を再演することになった経緯を教えてください。

川内 前回のツアーの時に、この作品はこのツアーで終わりではなくて、これからも継続的に上演したいと考えていました。前回の公演からメンバーそれぞれ5歳ずつ歳を取りましたが、『素敵じゃないか』という作品が持つ普遍性は、年を取るごとに新たな発見をさせてくれると感じます。そろそろ再演したいと考えていたころに、アルカスSASEBOさんから提携公演の話をいただきまして、5年ぶりの再演となりました。

ー演出は劇団きららの池田美樹さんですが、池田さんを演出に迎えた理由を教えてください。

川内 この演目は、突然子どもを授かった20代の夫婦と、不妊治療を7年続けている30代の夫婦、それぞれの一年間を描いたものです。2010年の初演は、脚本のたじま裕一さんに演出をお願いしました。2012年に大分市の子育て支援課さんから上演依頼をいただいたときに、初演が男性側から描いた演出だとしたら、次は女性側から描く作品にしたいという思いがありました。そこで、以前から共同製作をしてみたいと思っていた池田美樹さんに演出をお願いすることにしました。

ー池田さんは、川内さんから演出の依頼があったとき、どう思いました?

池田 緊張しました! それまで川内くんとはほとんど話したことがなく、SNSとかの勝手なイメージで「上昇志向の強い、気難しい人」だと思い込んでいたので。当時彼はRAWWORKSで、永山智行(※1)くんや河野ミチユキ(※2)くんとバンバン新作を作ってツアーを決行。「アート系の先鋭的な頭いい作品で世に打って出たい人なんだろうなあ」と斜め下から藪睨みで眺めていたので、こりゃあ下手なことはできんぞ……と緊張しました。……実は初演の大分公演までずっと気を張ってました。でも、大分の夜に作者のたじま裕一さんと話す機会があり、10代のころの川内くんの「懸命でとんちんかんな創作活動話」をたっぷり聞けたことで、「上昇志向の強さ」は「不器用なほどのこだわり」、「気難しさ」は「過度な人見知り」だということがわかり、一気にこのユニットがいとおしくなりました。てか! なにより大分公演の企画を立て、こんな未知数の私らを引き合わせてくれた久原淳子(※3)さんには、ほんっと、心より感謝しています。企てる人がいなければ何も始まらないのが演劇公演ですもんね。

※1)永山智行
宮崎の「劇団こふく劇場」の主宰。作家、演出家。

※2)河野ミチユキ
熊本の劇団「ゼロソー」代表。作家、演出家。ゼロソーは2018年3月に無期限活動休止。

※3)久原淳子
大分の演劇制作者。劇団RAWWORKSの第三回公演『素敵じゃないか』で制作を担当。

ー脚本を読んでどのような感想を持たれましたか?

池田 沸きました! こどもが欲しい大人夫婦と出来てしまって困惑する若いカップル。それを2人の演じ手でくるくると演じ分ける楽しい構図。そして何より、明るい。どちらの2人にも絶望的なセリフがいくつかあるとです。
「もうこい以上はよか。こがんしてまで、いらん」
「やっぱ無理だわ。一生お前だけって無理」
……もう禁句も禁句、そのひとことで関係がズタズタになりそうなセリフ。だけどそこから見事に明るく展開していく。これは作者たじまさんの明るさでもあるなあと。生き物は、大変なことが起きてしまっても、生きてる限り生きていかなきゃならない。その「大変なこと」を正面から見据えたうえで、とてもゆかいな方向に展開していく。
個人的に「ギャル語録」っていうのが大好きで、それはギャルのお嬢さんたちの「座り込むより動いてみようぜ!」的なアクティブさにめちゃ憧れるからなんですが、とてもそれに似たものを感じます。自分が書く台本にはない「アクティブさ」を、同じくえらくアクティブな俳優・酒瀬川真世で演出できることを、とても楽しんでいます。
川内 初演の時の話になりますが、僕はたじま裕一さんに脚本について2つのお願いをしまして。ひとつは「シンプルであること」。ふたつ目は「事件であること」。それに対してたじま裕一さんは、子どもを巡る夫婦の話を書いて下さった。子どもを産むこと、育てること、それは人と人がどう生きていくのか、そもそも僕らはどこに向っているのか……それはとても普遍的なテーマで、歳を重ねていくたびに感じることが少しづつ変わっていく。この作品を再演し続けることで、僕自身が演劇を通して何をしようとしているのか、わかる日が来たらいいな、などとも考えています。
たじま 川内くんからのリクエストが対照的だなあと思いながらいろいろとアイディアを巡らせていると、ごく自然な感じで「一人二役で、対照的な状況下の二組の男女の姿を描く」という考えになりました。繊細で丁寧な対話劇と、その真逆のような演劇とを、大きな振り子のように揺らしてみようというイメージを持ちながらの劇作でした。対照的ではありますが、どちらの状況も大変デリケートです。繊細な対話を重ねながらどこまで踏み込めるのか、大胆な場面を展開しながらどこまで丁寧に言葉を選択できるのか。書いている私自身も、振り子のような思考の中で自問自答していたことを覚えています。

ー最後に、mola!をチェックしている方々へメッセージをお願いします!

酒瀬川 結婚や子どもを授かるということに限らず、これからに漠然と不安を抱える人にも、今まさにがんじがらめで動けなくなっている人にも、今はなんとか順調だぜ! って人にも、いろんな人に見てもらいたい作品です。「命のコメディ」。佐世保駅からすぐ! アルカスSASEBOでお待ちしてます。
川内 「風雪に耐える」という表現がありますが、これは僕の演劇製作の一つのテーマです。幸運にも再演を重ねている『素敵じゃないか』は、風に吹かれて雪に降られて、それでも生きている、僕にとって特別な演劇です。初演を見ていただいた方にも、再演を見ていただいた方にも、初めてこの作品に触れる方にも、2019年の『素敵じゃないか』は、いまのあなたを映す鏡のような演劇になればと願います。ご来場をお待ちしておりますね。


出演は、酒瀬川真世(checarino!/checarina!)、川内清通(劇団RAWWORKS)。

チケットは、一般前売2,000円(当日2,500円)、学生前売1,000円(当日1,500円)。CoRichチケット!、アルカスSASEBOでの取り扱い。

お問い合わせは劇団RAWWORKS mail@rawworks.info、080-4286-4017(制作)まで。


劇団RAWWORKS 第九回公演『素敵じゃないか』

作:たじま裕一(長崎ドラマリーディングの会)
演出:池田美樹(劇団きらら)
日時:2019年3月2日(土)19:00
        3日(日)11:00★/14:00
   ★こどもウエルカム公演(未就学児入場OK)
会場:アルカスSASEBO 第1リハーサル室(佐世保市三浦町2-3)
料金:一般前売2,000円(当日2,500円)
   学生前売1,000円(当日1,500円)

【関連サイト】
劇団RAWWORKS 第九回公演『素敵じゃないか』特設サイト
劇団RAWWORKS

劇団RAWWORKS 第九回公演『素敵じゃないか』

※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

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