重力/Noteが劇団 短距離男道ミサイルの小濱昭博を迎え、北九州でひとり芝居
重力/Note(鎌倉)が『LOVE JUNKIES』(原作:アルフォンソ・リンギス、翻訳:工藤順、演出:鹿島将介)を7月5日(金)~7日(日)、北九州市八幡東区枝光本町の枝光本町商店街アイアンシアターで上演する。
鎌倉を拠点に活動する重力/Noteの初の九州公演。専属の劇作家を置かず、代表・演出の鹿島将介が既存のテキストに取り組むスタイルで、これまでに寺山修司、松田正隆、イプセン、チェーホフなどのテキストを用いて、F/T12公募プログラム、第20回BeSeTo演劇祭BeSeTo+、利賀演劇人コンクールなどで作品を発表してきた。本作は、劇団 短距離男道ミサイル(仙台)所属の俳優・小濱昭博を起用したひとり芝居。北九州のほかに仙台・盛岡で上演する。演出の鹿島将介と、出演の小濱昭博に団体や作品について聞いた。
―重力/Noteとはどのような団体ですか?
鹿島 さまざまな変遷がありますが、「観る人も、つくる人も、ベストな自立になる/繋がる方法を探す」ということを基本姿勢にしてきました。古今東西のテキストを集めてきて、戯曲から小説・エッセイ・詩などを、作家や時代背景を分析しながら現代の生存感覚とアクセスするポイントにフォーカスして演劇化しています。演出が代表を兼任していますが、理想としている創作体制はトップダウン型ではなく、フラットを尊重しつつ斜め上を狙うといった、主体性がフレキシブルな自立集合型ですね。ずっと東京都・浅草橋で活動していましたが、2019年から神奈川県の鎌倉に活動拠点を移しました。いまは〈個人の時代の演劇〉について試行錯誤する時期に入っています。
―本作はどのような作品ですか?
鹿島 今回私は一人芝居という上演形式を「一人になる芝居」だと考えてみることにしました。舞台に立つ俳優が大勢の観客を前に一人になろうとする。その演技を通じて、観客もまた観客席のなかでひとりひとりになっていくイメージ。いま「自立」は、日本社会の各分野において吟味されているテーマですが、一人芝居にはそのことを考えるキッカケがたくさん詰まっていると思います。原作テクストは、一組のLGBTの犯罪者カップルの境遇と生き様を第三者の目線で見守るように語り続けるという内容だけど、物語と観客のあいだで重心移動をしながら、自分の居場所について考える上演になればいいなと。
―仙台の劇団 短距離男道ミサイルから小濱昭博さんを俳優として呼ぼうと思った理由を教えてください。
鹿島 彼と知り合ったのは2012年の春、うちの劇団が仙台で小さな作品を発表した時です。それから滞在制作やワークショップの講師に呼んでもらったり、彼が座・高円寺(東京)の劇場創造アカデミーに通う時には自宅に泊めたりと、地道な付き合いが続いていたのですが、その間に俳優としての彼とは一度も仕事をしていませんので、7年越しのプロジェクトとなります。短距離男道ミサイルでの活躍ばかりフォーカスされてますけど、実はコミカルな役柄や上演形式以外でもポテンシャルが高い俳優だと思います。あとは彼独特の勇気と誠実さですかね。そこに対峙してみたいと思ってキャスティングしました。
―今回の北九州公演は、どういう経緯で決まったのでしょうか?
小濱 今回、2012年から不思議なご縁が続いている重力/Noteの鹿島さんと仕事をすることが決まり、一人芝居でツアーをと考えた時に、真っ先に北九州が思い浮かびました。2014年に初めて、劇団 短距離男道ミサイルで枝光本町商店街アイアンシアターを訪れました。初めての九州に上陸した際、私は東北生まれ東北育ちなので、生えている植物や、土の色や瓦や墓石の色の違い、田んぼの少なさなど、風土の違いが新鮮に目に映ったのを覚えています。それ以来、北九州の街並みと、アイアンシアターの管理をされている鄭さんをはじめとした出会うひと出会うひとの雰囲気に惹かれて、劇団でも俳優個人としても何度か訪れています。今回北九州で上演することを決めたのは、来るたびに親しみを感じる大切な場所だから、ですかね。また、鄭くんの頑張りや、気持ちになにかを返したいという気持ちがずっとあったので、この機会とご縁をつなぎつつ、北九州市で何かを生み出せればという思いがありました。
鹿島 北九州をツアー先に入れたのは、完全に小濱くんの提案です。彼とアイアンシアターの鄭慶一くんとの個人的な友情に賭けてみたということになります。また、アイアンシアターで先日『4.48PSYCHOSIS』を上演した川口智子さんも私たちの共通の友人で、知り合うきっかけも仙台でした。みんなマイペースなので緩い友情なんですが、そういうものに乗っかってみました。
―最後にmola!をチェックしている方へメッセージをお願いします!
小濱 東北生まれ、東北育ちの小濱昭博と申します。小濱という名字も、九州から広まったもののようです。九州には一方的に不思議なご縁を感じております。この作品の著者のリンギスさんも、旅をしながら思索に耽ったそうです。その足取りを夢想しつつ、広いスケールで作品を展開できればと思っています。
一人になること。
そこからできること。
お芝居にできること。
それらを疑い、更新しながら、精一杯いい時間を作っていこうと思います。ぜひ、ご来場ください。
鹿島 私は嘘が嫌いなのでいま確実に言えることだけお伝えすると、この演劇は「信頼」や「愛」といった見えない心の結びつきに対して、立ちどまっている/立どまらざるえない人に向けられています。孤独と勇気のあいだ。こうした戸惑いを大事にしている人たちに、劇場で出会えることを楽しみにしています。
出演は、小濱昭博(劇団 短距離男道ミサイル)。
チケットは、一般2,500円、学生1,500円、ペア割4,400円(※ペア割引は事前決済のみの取り扱い)。予約フォーム(一般・学生/ペア割)での取り扱い。
お問い合わせは重力/Note info@jyuuryoku-note.com、080-3750-1069まで。
重力/Note『LOVE JUNKIES』
原作:アルフォンソ・リンギス(『信頼』より)
翻訳:工藤順
演出:鹿島将介
日時:2019年7月5日(金)19:30
6日(土)11:30/17:30★
7日(日)14:00
★…アフタートーク実施
会場:枝光本町商店街アイアンシアター(北九州市八幡東区枝光本町8-26)
料金:一般2,500円
学生1,500円
ペア割4,400円
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