RAWWORKS本番直前インタビュー
4月11日(土)~12日(日)に、長崎市宝町の宝町ポケットシアターで『中村仲蔵』を上演するRAWWORKS(長崎)。同団体の代表であり、企画・脚本・演出を担当している川内清通に、団体のことや今回の作品についてインタビューを行った。
RAWWORKSという団体
RAWWORKSは、2011年に上演した『prayer/s(*1)』という芝居を上演する際に立ち上げたプロデュース団体が元です。いま劇団と名乗っているのは、メンバーが変わることがあっても、日本の劇団が持っている役者やスタッフを育てるシステムを導入して、ひとに踏み込んで創作する現場を作りたいという思いからです。いざ立ち上げてみると、これまで多くの方々に助けていただいたのですが、少数で小回りよく動く形が僕の肌には合っていたようです。僕は割とフットワーク軽く動ける立場にあると思うので、演者と演出家の出会いの場を作ることは続けたいと思います。ただ、実力のある演者さんに出ていただくことが多いので、その方々が集まって演劇を作るとこうなる、というようなお客さんの予想は超えないといけないな、と毎回思います。いま作っている『中村仲蔵(*2)』もそうですが、「土地で作る」という意識はあります。長崎で採れた食べ物を食べて貰って、長崎の演者さん、今回なら長崎の役者を始め、踊りの先生や西方小天鼓(*3)さん、衣装を担当いただいた古楽屋さんや、長崎かゞみや(*4)さんなど長崎の土地に土着して生きている人々に触れて貰って、その土地で生まれるものを作りたいと考えます。
“中村仲蔵”という人物にフォーカスした理由
以前から「始末シリーズ(*5)」と銘打った古い時代の話をシリーズでやっていまして、落語などを題材に演劇を作っているのですが、それらも『中村仲蔵』も同じで、時代物をやっているという意識はあまりなく、演劇である以上、いま上演する理由があるかどうかはとても悩みますが、埋没した優れたお話を演劇として仕立て直したいという思いです。『中村仲蔵』を作品化しようと思ったきっかけは、その時代の人々が感じていただろう“わたし”感覚と、いまの“わたし”感覚は違うんじゃないか、と感じたのが始まりです。
物語は江戸時代の歌舞伎役者のサクセスストーリーと言えるのですが、「中村仲蔵がなぜ成功したのか」より、「中村仲蔵はなぜそう生きねばならなかったのか」を描く演劇です。いまって、幸せにならなきゃいけないって言われているように感じるのですが、少し時間を遡ると、わたしの幸せは周りの人達の幸せと同義で、人生で何をなすべきか、なんて多くの人は考えなかったんじゃないか。それはスローライフとかあの頃は良かったという類の話じゃなく、きっと生きることにギラギラしていたんじゃないか。そのギラギラは、恐らく僕らのルーツのひとつで、失ったもののひとつで、これからの僕らに意味のあることじゃないかと考えています。
作品を創る上で苦労したこと
とにかく女優探しが大変でした。劇中登場する中村仲蔵の母親と奥さんと愛人、この三人は一人の女性に演じて貰いたいと思っていたので演じられる人を探すのは大変でした。そして、多田香織さん(万能グローブ ガラパゴスダイナモス)に出演していただけることが決まって、探し続けて良かったなと感じています。
演奏者とのコラボレーション
そこで生きているひとが持っている鼓動や呼吸が息づく空間が作りたかったので、西方小天鼓さんに太鼓と笛をお願いしました。演奏については、「こういう音が欲しい」ということより、これはこういう場面で、こんなことを描きたいと、物語の内容をお話しして、4月から役者と合わせて稽古に入る予定です。どんな音が立ち上がってくるのか僕自身とても楽しみですし、お客様にも楽しんでいただけると考えています。
俳優・劇作・演出ばかりか、プロデュースもこなす川内清通。彼の演劇に対する覚悟や立ち位置にとどまらず、人生観もが垣間見えるインタビューとなった。
出演は、戸羽広明 、多田香織 (万能グローブ ガラパゴスダイナモス)、荒木宏志 (劇団ヒロシ軍)、川内清通。演奏出演は、戎谷和夫、高木睦美(以上、西方小天鼓)。
チケットは一般前売2,000円、大学生以下1,500円(一般・大学生以下共に当日500円増)。予約はCoRichチケット!、イープラスから。お問い合わせはmail@rawworks.info、080-4286-4017(劇団代表)まで。
取材・執筆:北村功治(kitaya505)
(*1)『prayer/s』:2012年~2013年に上演された、RAWWORKSの2作目。作・演出に永山智行(劇団こふく劇場)を迎え、長崎・福岡・東京・札幌で公演を行った。このツアー公演の前段階として、前年に長崎と福岡でワークインプログレス(創作段階での試験的上演)を行っている。
(*2)中村仲蔵:歌舞伎役者の名跡。ここでの中村仲蔵は、稲荷町(最下級役者)から、座頭(千両役者)まで上り詰めた初代中村仲蔵を指す。近年、松本幸四郎が「夢の仲蔵」という歌舞伎演目で中村仲蔵を演じている。
(*3)西方小天鼓:長崎の和太鼓チーム。他ジャンルとのコラボレーションや海外での演奏など精力的に活動している。
(*4)長崎かゞみや:ゲストハウス兼、着物レンタル店。今回の衣装協力を行っている。
(*5)始末シリーズ:RAWWORKSの上演企画のひとつ。これまでに井原西鶴原作の作品などを舞台化している。
RAWWORKS 第六回公演『中村仲蔵』
脚本・演出:川内清通
日時:2015年4月11日(土)19:30
12日(日)12:00/16:00
会場:宝町ポケットシアター(長崎市宝町5-25 平井金物店2階)
料金:一般前売2,000円、大学生以下 前売1,500円(一般・学生共に当日500円増)
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