特集:九州地域演劇協議会(第1回)
九州地域演劇協議会という団体がある。九州で活動する劇作家を対象とした「九州戯曲賞」や、九州中から演劇人が集結する「九州演劇人サミット」を主催している、九州の地域演劇の支援・振興を目的に設立された団体である。今回mola!では、この支援団体の活動を2回にわたって紹介したい。
九重町という場所での活動
九州地域演劇協議会のサイトには、戯曲賞などの案内や活動報告の他に、各地域で活動する会員達の、その土地、その環境だからこそといった演劇事情がコラムとして隔月で掲載されている。
「官と民の共働で育つ演劇活動(大分)」というコラムでは、大分県玖珠郡九重町という自然多き山間地での演劇事情が綴られている。「観劇をするのに、一日がかりで福岡や大分まで出かけなければならない」「劇団の招聘を計画しても、会場がないと断られる」といった環境での演劇活動は、同じ九州といえども比較的環境の整っている都市部とは全く違う大変さがある。九州で演劇活動を行う場合、東京とその他の県や地域といった、“中央との格差”が語られることがあるが、よくよく考えると、九州という地域内での格差も確かに存在している。九州演劇と一括りで片付けられない実情を、このコラムから伺い知ることが出来る。
ともすれば苦労話が恨み節となってもおかしくない環境での活動なのだが、コラムの最後には「民と官が共働で作り上げようと努力する姿が九重町民の誇りです。九州各地で演劇活動を続けられる仲間の皆さんのご活躍をお祈りします」と綴じられている。このような言葉にこそ、演劇の力や可能性を感じる。
戯曲賞落選を通しての気付き
もうひとつコラムを紹介したい。昨年の九州戯曲賞の大賞を受賞した幸田真洋(劇団HallBrothers主宰/福岡)によるコラム「賞に応募を続けて見えてきたこと(福岡)」。受賞の喜びや、これまで四度の挑戦で箸にも棒にもひっかからなかったことなどが記されている。受賞したからこそ気付き、だからこそ書けることは多々あるだろう。しかし、「何が足りないのか」「どう在るべきか」を落選から学んだ姿は、すべての創作者に謙虚であれとは言わないが、「自分はもっと評価されるべき」と悶々とした想いに駆られている劇作家には一読の価値があるのではないか。
九州地域演劇協議会サイトでは、4月1日付けで九州戯曲賞の募集要項が公開された。次回は、この「九州戯曲賞」や、県域を越えて九州の演劇人たちが交流を行う「九州演劇人サミット」について触れてみたい。
構成・文章:北村功治(kitaya505)
【関連サイト】
九州地域演劇協議会
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