男肉 du Soleil 池浦さだ夢&ヨーロッパ企画 永野宗典インタビュー(前編)

2015.05.27

関西を中心に活動するパフォーマンスカンパニー、男肉 du Soleil(オニクドソレイユ)がヨーロッパ企画(京都)の永野宗典をゲストに迎え、新作『鉄球』を6月6日(土)〜7日(日)、福岡市博多区祇園町のぽんプラザホールにて上演する。

3回目となる男肉 du Soleilの福岡公演。今回の作品の内容や見どころなどを、団長の池浦さだ夢と、ゲスト出演する永野宗典に訊いた。2回に分けて掲載する。

大長編 男肉 du Soleil『鉄球』

今回は脱獄もの

−今回はどういう作品になるんでしょうか?

池浦 基本的にうちはダンスカンパニーを名乗っておりまして、ダンスをしながらお芝居もあって、ラップやレゲエを取り入れたり、という作品をつくっているのですが、今回は脱獄もののストーリーです。ダンス規制ならぬ「男肉 du Soleil規制」のかかったご時世で、団員がひとりずつアルカトラズのような監獄に閉じ込められる、と。僕たちは基本的に「男肉 du Soleil役」で舞台に立つんですよ。で、今回ゲストで出ていただく永野さんも、「ヨーロッパ企画の永野宗典」として舞台に立ってもらうんですけど、実は永野さんの正体は、何万回も脱獄を成功させた脱獄王だった、という。僕らが永野さんを頼って、捕まった団員を救出しに行くというシンプルな、荒唐無稽なストーリーを、ダンスやラップを駆使しながら見せていきます。

−全席指定で「男肉飛び散る席」とか「絶対安全席」とか、座席の名前が強烈だと思ったんですけど。……「絶対安全席」の方が料金が高いんですね。

池浦 やっぱ安全はお金で買う時代だな、というのが現代社会において僕が感じるところでして(一同笑)。社会を反映させようと思ってこうなりました。

−やっぱり最前列の「男肉飛び散る席」の方が楽しめますか?

池浦 楽しめる部分もありますけど、小劇場という狭いところで僕らは上半身裸・衣装はジーンズで踊るので、汗が飛び散ったり、汗でツルッと滑って客席に激突したり、そういう危険性もありつつ。危険性もあっての500円引きです(笑)。あと、異常なぐらい汗をかくので、床に敷いたリノリウムがびしょびしょになるんです。それを拭いてもらうという作業賃もあります。
永野 拭いてもらってるんだっけ?
池浦 この前の公演がみんな汗出すぎて、全員滑り倒すということがあって。僕たちが公演中にモップかけるのも無粋なんで、お客さんに拭いてもらって。「男肉飛び散る席」の方は、それも含めて楽しんでください、という感じです。

上演中写真撮影・録画OK⁉︎ 男肉の楽しみ方

池浦 ウチは上演中写真撮影とか自由なんです。「男肉飛び散る席」だと最前列のこの角度で撮れる! とかそういう楽しみ方もありますね。
永野 以前男肉のイベントを最前列で観たことがあるんですけど、普段は「絶対安全席」で観てたんです。そしたらやっぱりなんか(腕組みして)こんな感じで観ちゃうんですよね。やっぱり体感として、前で観た方が楽しかったですね。
池浦 急流すべりと同じで、前の方が水しぶきがバッシャーンとかかるみたいなスリルがあるかもしれないですね。「男肉飛び散る席」から売れていくんですよ。おもしろいからなのか安いからなのか怖いもの見たさからなのかわからないですけど。でも結構女性の方が買ってくださって。
永野 そういえば最前列にいるの女性ですね大体!
池浦 何度か観に来てくれるひとは、初日はただ見てロケハンして撮影するためのところを選んで、二日目に撮りまくるという、そういうマニアックな楽しみ方もあります。

−会場がぽんプラザホールということは、「男肉飛び散る席」は限定10席くらいですか?

池浦 そうですね。ただ、正直「絶対安全席」以外飛び散るんですよね(笑)。

今回の客演は永野宗典からのラブコール

−今回永野さんを客演で呼んだのには、どういう意図があったんですか?

池浦 ここ数年ヨーロッパ企画さんから客演として出ていただいているんですけど、これまではお互い提案しあって、「じゃあ今回は酒井善史さんだ」「石田剛太さんだ」となって作品を膨らませていったんですけど、今回は永野さんの方から熱烈ラブコールをいただいたんです。
永野 これまで他のメンバーが出ているのを見てうらやましく思ってて。普段ヨーロッパ企画って踊ったり歌ったりしない、台本に忠実な舞台を作ってたんですけど、そうじゃないことをやっているメンバーを見て、すごく楽しそうだなあと。自分がここ(男肉)に行ったらどうなるんだろうという妄想が止まらなくなってですね。「いつか男肉やりたい」と言い続けてたんですけど、今回ようやく念願叶いました。

−どういう稽古をされるんですか?

池浦 基本的に台本がなくて、その場で口立てでつくるんですよ。ほぼ無の状態で稽古場に行って、「じゃあ永野さんそこに立って」「その横に誰々立って」みたいな感じで、僕が言った言葉をそのままトレースしてもらってシーンをつくっていく。それを2〜3回やって、「じゃあお前はもっとこっちだ」「その台詞変えよう」みたいな修正をする。作家さんが家でやる作業を、稽古場で全員でやる、という作り方をしています。

−でもあらすじみたいなものはあるんですよね。

池浦 タイトルと、なんとなくのあらすじだけはあるんですけど、ストーリーは作りながら変わったりもしますし。「今回は脱獄で行こう」という大きなテーマはぶれなくて、その内部がどう展開するかを試行錯誤する、という感じですかね。シーンも頭から順番に作るのではなくて、エンディングを作って、途中のシーンがそこにどうつながっていくかみたいな、話の作り方もダンスの作り方に近いですね。インタラクティブに作ってます。

−基礎練習みたいなことはされますか? 参加する側も「無」で臨んでも大丈夫なものなんでしょうか?

池浦 ダンスの基礎練習っていうのが全くわからなくて。「ダンサーとして鍛えられていないひとでも踊れる」というのをどう見せるか、がおもしろいと思うんです。スキルだけを求めるのであれば、海外のカンパニーなんかを観た方が圧倒的です。でも僕はそうじゃない部分を求めたい。役者さんを客演として使う理由もそこにあるんです。「生身が出す力」を見たい。僕らと役者さんでヨーイドンでいっしょに踊ったら、もちろん役者さんの方がすぐバテるでしょうし、ついていけない部分もあるでしょうけど、逆に言えば、そのバテてる姿、ついていけない姿をちゃんと見せ物としてつくればいいのかな、と。ランニングなんかをしてもいいんですけど、稽古で踊ってたらスタミナは上がるし筋トレにもなります。ケガしてほしくないんで、柔軟だけはやっててください。
永野 そうですね。
池浦 永野さんのできる動き、できない動きを見て、できない部分も入れながら、永野さんにあったフリを作ろうと思います。
永野 いままで参加したメンバーをいろいろ見てきたんですけど、踊れてる部分もあれば踊れてない部分もあって。でも毎回1本のストーリーがきちんと走ってるんで、たのしんで見られるんです。それに加えて、チャレンジしてる姿だったり、苦しそうな姿だったり、そういうドキュメントな部分が踊ることであらわになるというか。それがストーリーに乗っかってなぜか感動的に見える瞬間があるんです。僕が男肉に惹かれてるのはきっとそこですね。きっちり踊れるようになりたいと思って参加するわけじゃなくて、もちろん踊りはがんばれるだけがんばるんですけど、それよりも「台本の向こう」にお客さんも連れて行くような、そういう興奮の状態にたどり着けることを期待してます。準備はなるべくしていきますが、限界まで行きたいです。

−いままで出られたヨーロッパ企画の他のメンバーの方は、男肉に参加されてどんな感想を持たれたんですか?

永野 「あそこはめっちゃキツいよ」っていう、そればっかりです(笑)。でも本番はすごい楽しそうにやってるし、たぶん自分たちの劇団では味わえなかった役者としての新たなステージみたいなものを見てきたんだろうなあと、そういう話は直接はしないですけど、僕はそういう気がしてるんです。本公演のときも、男肉経験後のメンバーはちょっと余裕が出てきてる感じがするんです。一皮向けたというか。
池浦 毒出して。
永野 毒出して。デトックス効果ありの。何かしらが変わる、という感じがします。

強烈なインパクトのある名前を持つカンパニー「男肉 du Soleil」。未見の方にもその強烈さの片鱗は伝わったのではないか。後編では、名前の強烈さとは裏腹の、真面目でポップな創作哲学に迫る。

インタビュアー・構成・執筆:藤本瑞樹(kitaya505)


大長編 男肉 du Soleil『鉄球』

日時:2015年6月6日(土)19:00(おまけトークショー有り)
        7日(日)13:00
会場:ぽんプラザホール(福岡市博多区祇園町8-3)
料金:一般前売2,500円(当日2,900円)
   学生前売2,000円(当日2,500円)※入場時要学生証提示
   男肉飛び散る席(最前列)前売2,000円(当日2,500円)
   絶対安全席(最後列)前売・当日3,000円

【関連サイト】
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