男肉 du Soleil 池浦さだ夢&ヨーロッパ企画 永野宗典インタビュー(後編)
関西を中心に活動するパフォーマンスカンパニー、男肉 du Soleil(オニクドソレイユ)がヨーロッパ企画(京都)の永野宗典をゲストに迎え、新作『鉄球』を6月6日(土)〜7日(日)、福岡市博多区祇園町のぽんプラザホールにて上演する。
男肉 du Soleilの団長、池浦さだ夢と、今回客演をするヨーロッパ企画の永野宗典のインタビュー。後編となる今回は、男肉 du Soleilの創作哲学とも言える部分に迫った。
作り手として大事にしていること
—おふたりが作り手として大事にされていることってなんですか?
池浦 作品を作るにあたっては、あまり「伝えたいものを伝えすぎない」ということですかね。男肉 du Soleilの作品は、僕の興味のあるものがごちゃまぜになった闇鍋的なパフォーマンスで、作っているものの中にそういうの(伝えたいもの)って自然に出るので。あんまりそこを意識しすぎると、頭でっかちになっちゃうと思うんですよ。たとえば昨日観た映画に触発されたら、すぐそれを作品に取り込んでしまうみたいな感じで作ってると、自然と「いま生きている僕の同時代感」が出るんじゃないかと思うので。
—ごちゃまぜとおっしゃっていましたが、最後にはちゃんと一本筋が通った作品にできるわけですよね。
池浦 まあそうは言いながらも吉本新喜劇は好きなので。大阪人なので。新喜劇のような様式美も好きなので。作品のパッケージとしての着地点はあるんですよね。最後は15分くらい踊り続けて、全員が死んだら僕が歌って生き返る、という。
—毎回なんらかの形で全員が死んで、最後生き返ってっていう筋があるようですが、今回も……?
池浦 死にますね。基本的に人が死んでいったら「もうすぐ終わるんだな」と思っていただければ。
永野 (笑)
池浦 拍手のしどころがわかるというか。「もうすぐ団長(池浦)が出てくるぞ」みたいな。
—わかりやすくていいですね。
池浦 僕、近畿大学に通っていたころに演劇を学んでいて、講師に赤テントの唐十郎さんが来られていたので、赤テント観に行ったんですよ。そしたら唐さんが出たときにお客さんが「ヨッ! 唐!」って言うんですよ、大衆演劇みたいな感じで。その感じが欲しくて。「ヨッ! 団長!」っていうのがほうぼうから出るようになったら、そういうお約束はやめようかなと思ってるんですけど、まだ恥ずかしそうに「団長……」って言うひとがひとりふたりいるくらいなんで、まだまだこれはやめれんなと。
永野 「いま、その場で起こっている」ということを大事にしていますね。今回脱獄ものというフィクションの世界ではあるんですが、いまその場で笑ってしまった、いまその場で困ってしまった、みたいに見せる技術、感情の持って行き方、共演者に仕掛けてもらう方法、みたいなのを大切にしてます。生っぽい感情が動いている瞬間っていうのがたぶん、お客さんと通じ合える瞬間だと思うんですよ。嘘がほんとになる瞬間がそこで作れるというか。だからいかにその場で気持ちが動くかというのを、……つねづね研究してますね。やっぱりそういうものじゃないとおもしろくないんですよね。共感できる生の感情を大事にしてないと、大きな嘘もつけないと思うんですよ。
—今回は、特に後半そんなことも考えられないくらいヘトヘトになってたりするんですかね。
永野 あるんじゃないですかね。
池浦 そうでしょうね。
—あ、でもそれが「生」ってことですもんね。
永野 そうですね。
池浦 ヘトヘトになって身体が変わっていくという部分はありますね。
永野 ごまかせないですもんね。
池浦 でもそこを恐れずにトライしてもらいたいですね。
心が踊ればダンスだよ!
—「限界を超えてコントロールできない」というところに挑むことに対して、怖さみたいなのはないですか?
永野 怖さもあるし、怖いからこそ楽しみな部分もあるし、両方ですかね。
池浦 踊れなくなって、こうなった(バテたフリ)としても、それもダンスなんですよね。ピナ・バウシュっていうドイツのタンツ・テアターの先生の名言で、「怖がらずに踊ってごらん」っていうのがあるんですよ。
永野 おーーー!
池浦 本のタイトルにもなってるほどの。だから僕も、100kgくらいの体重があって、膝も痛いみたいなときに、思い出すんですよ。
永野 背中押すねー、その言葉は。
池浦 で、そこから「心が踊ればダンス」という、私の名言が。
一同 (笑)
池浦 「怖がらずに踊ってごらん」「心が踊ればダンスだよ」と。
永野 名言数珠繋ぎだ(笑)。
—「心が踊ればダンス」っていうのは団長の名言なんですね。
池浦 そうですね。似たような言葉を使ってるひとはいるかもしれませんが。
一同 (笑)
池浦 言ったもん勝ちなんで。いまのところ僕の言葉としています。
—これは太字で書いときますね。
池浦 お願いします! でもほんとに、出演者だけじゃなく観客も心が踊らないとそれはダンスじゃないぞと。ダンスっていうものの解釈は自由だと思うので、その代わり心が踊るかどうかというところを大事にしたいと思いますね。
—でも「心が踊ればダンス」っていうのはよく考えると深い言葉ですよね。自分の好きなダンスカンパニーの、なにが好きなのかがわからなかったんですけど、たぶん観てて心が踊ってたんですね。長年の謎が解けました! ありがとうございました!
池浦 上手けりゃいいとか必死だったらいいとかじゃないんですよね。踊る身体から出る何かがあるんでしょうね。それがおもしろいですね。
福岡の楽しみ方
—福岡にも何度もお越しになっているとのことなので、夜も行きつけの店に飲みに行ったりとか、ツアーでの福岡の楽しみ方も心得てるんじゃないかと思いますが……。
池浦 そこが最大の楽しみのひとつなんですけどねえ。不思議なもんでねえ、なぜかウエストについ入ってしまうという。
一同 (笑)
池浦 ウエストのうどんって別に福岡のうどんでもないじゃないですか。なのに入っちゃうっていう。
永野 入っちゃうねえ。
池浦 あと「ふとっぱら」が好きですね。ラーソーメン好きですね。
永野 美味いですよねえ。
池浦 今回のツアーのラストが福岡なんで、千秋楽はもうとにかく踊り狂った後、大花火のように打ち上がってやろうかなと。ただ思いのほか団員たちの半分くらいがヨボヨボになって帰っていくんですけど。
永野 そうだろうなあ……。終演後の状態とかあんまり考えたことなかったけど。
池浦 思いのほかヨボヨボになりますよ。
永野 石田剛太くんっていう、ヨーロッパ企画の俳優も以前男肉に出てたんですけど、開演前に泣いて、終演後も疲れて泣いて。しんどくてとにかく泣きまくったって。
池浦 銭湯に入ったときに身体が痛すぎて泣いたそうです。「なんで俺はこんなつらい思いしてるんだ……」って。僕普段出ないんですよ。最後に出てきて歌うだけで。ただ、一度主役したことがあって、そのときは団員に初めて謝りましたもんね。「俺はこんなつらいことをさせていたのか……」って。「いまごろ気づいたのかー!」って言われましたけど。劇中僕だけ負けたプロレスラーみたいになってました。
名前のイメージ通りの豪快さと、ポップな哲学を併せ持つ男肉 du Soleil。今回も心が踊るダンスを観せてくれることを期待したい。また、普段踊っている団員たちでも筋肉痛になるというほどハードな作品に出演することについて、今回客演で参加するヨーロッパ企画の永野宗典は、ひとつひとつ言葉を選ぶようにインタビューに答えてくれた。物静かなトーンの奥に、観客を楽しませたいという気持ちの強さが伺い知れた。
先日京都公演が終了し、いよいよ東京、そして福岡のツアーが始まる『鉄球』。男肉 du Soleilの公式ブログでは、公演のレポートも読むことができる。ツアー最終地となる福岡で、今回の作品がどのように仕上がっているのか楽しみにしたい。
チケットはローソンチケット(Lコード:84769)、チケットぴあ(Pコード:443-065)、
e+(イープラス)などで好評発売中。6月1日(月)からは男肉 du Soleilのサイトからチケット予約もできる。お問い合わせはスリーオクロック 092-732-1688(10:00~18:30)まで。
インタビュアー・構成・執筆:藤本瑞樹(kitaya505)
大長編 男肉 du Soleil『鉄球』
日時:2015年6月6日(土)19:00(おまけトークショー有り)
7日(日)13:00
会場:ぽんプラザホール(福岡市博多区祇園町8-3)
料金:一般前売2,500円(当日2,900円)
学生前売2,000円(当日2,500円)※入場時要学生証提示
男肉飛び散る席(最前列)前売2,000円(当日2,500円)
絶対安全席(最後列)前売・当日3,000円
【関連サイト】
男肉 du Soleil
スリーオクロック