劇団こふく劇場 永山智行インタビュー

2015.08.28

劇団こふく劇場(都城)が劇団創立25年を記念して、第14回公演『ただいま』で8月7日(金)の三股公演を皮切りに、全国6か所を巡るツアーを開始した。9月12日(土)~13日(日)には北九州公演を控える劇団こふく劇場。代表の永山智行に、今回の作品のことや劇団についてのインタビューを行った。

永山智行

―まずは、25周年おめでとうございます。

あ、ありがとうございます。

―一口に25年といっても語れないと思うのですが、そこを敢えて語っていただくとしたら、どんな25年でしたか?

んー、そうですねぇ……、あたり前ですが、数えきれないほどの日々の出会いと別れに満ちた25年でした。

―こふく劇場という劇団を作ったきっかけについて教えてください。

きっかけというか、元々はわたしが高校演劇部時代の先輩や後輩に声をかけてスタートしたのがはじまりです。そのころはこんなに長く続くとは思わずに、2、3回やったらさっさとやめて、大学時代を過ごした東京に行こうと思っていました。でも、見に来ていただいたみなさんに「次もがんばってね」と無邪気に言われてしまい、なんだかやめられなくなって、そして今に至る、という感じです。

劇団こふく劇場 第14回公演『ただいま』 劇団こふく劇場 第14回公演『ただいま』

―早速ですが、今回の『ただいま』はどのような作品でしょうか?

お、きましたね。いちばん難しいやつが。んーと、この作品の創作ノートの1ページ目に、わたしはこう書いてます。「小津安二郎(※1)の構図。村上春樹(※2)の語り口。古今亭志ん朝(※3)の芸。」つまりはわたしが好きなものを、演劇という時空の中につめこんだ作品なのかもしれません。そして、わたしにとって大事な「音楽」という切り口からそれらを組みあげた、そんな作品じゃないかと思っています。とにかく俳優たちは、いっぱい語り、いっぱい歌います。また、折しも戦後70年の節目で、けれど平和な日常がおびやかされつつある状況になってしまっていますが、だからこそ日々の黙々とした営みの尊さをあらためて感じながら作品を磨いています。なんだかわけがわからないかと思いますが、つまるところ、ホームドラマです。まあ、気軽に観にきてください。

―こふく劇場は積極的にツアー、他県・他地域での公演を積極的に行っている印象があります。これは、意図されてのことですか?

意図してといえば、そうだと思いますが、単純にいろんなとこに行って、その土地の美味しいもの食べて、そして演劇を通してたくさんの人と出会うということが、好きなんだと思います。わたしも、劇団員も。

―ツアー以外にも、本公演とは区別されている「プロデュース公演」(※4)、2007年から行われている「みやざき◎まあるい劇場」(※5)など、劇団内で敢えて劇団の枠を超えた活動をされているように感じるのですが、こちらも意識的に行われているのでしょうか?

んー、飽きっぽいんですよね、基本的に。で、まず何に飽きるかといえば、自分自身に飽きてしまう。だから、外からやってくる出来事に対しては嬉々としてしまうんですよね。ありがたいことに、いろんな出会いがわたしたちの劇団にもおとずれてくるので、そのひとつひとつを形にしていったら、こんなことになってしまったというのが実感です。

―mola!演劇人インタビュー♯2では、「3年後どうなっていたいか?」の質問に、「夢や目標なんて持つから、苦しくなるし、何よりもいまを生きることができなくなる」と答えられていますが、こふく劇場の3年後、今後のビジョンのようなものはありますか?

いきあたりばったり、来た球を打つ、ですね。明日の物語は、やっぱり今日にはわからないので、とりあえず今日を生きます。

―最後に、北九州公演を含めた残る5か所の公演に対する意気込み・抱負・メッセージをお願いします。

日々の暮らしと旅、その中で少しずつうつろっていく作品だと思っています。そのことも含めて楽しんでいただけるとありがたいです。劇場でお待ちしています。


「美味しいものを食べ、たくさんの人に出会い、別れ、来た球を打ち、今日を生きる」。永山智行のその言葉や表情から醸し出される暖かな温度は、“自然体”という言葉がピタリと当てはまる。しかし、ただふわりとした自然体ではなく、2回のインタビューからは“覚悟”や“信念”のようなものを感じた。九州の演劇を長きに渡り牽引してきたこふく劇場と永山の活動から、今後も目が離せない。

構成・執筆:北村功治(kitaya505)

※1)小津安二郎
1903年生~1963年没。日本を代表する世界的評価の高い映画監督・脚本家。代表作は「東京物語」「晩春」「麦秋」など。

※2)村上春樹
1946年生~。日本の小説家。代表作は「ノルウェイの森」「海辺のカフカ」「1Q84」。ノーベル文学賞の最有力候補と目されている。

※3)古今亭志ん朝
ここでは、3代目古今亭志ん朝のことを指す。1938年生~2001年没。「東の志ん朝、西の志雀」と称された噺家。

※4)「プロデュース公演」
劇団こふく劇場は、本公演とは別に様々なコンセプトやメンバーで約20回に及ぶプロデュース公演を行っている。「みやざき◎まあるい劇場」名義の公演もプロデュース公演に当たる。

※5)「みやざき◎まあるい劇場」
障がいの有無、演劇経験、年齢などに関係なく、誰もが演劇で遊べることを目的としている集団。2007年発足。


劇団こふく劇場 第14回公演『ただいま』

作・演出:永山智行
出演:あべゆう、かみもと千春、濵砂崇浩、大浦愛、大迫紗佑里
料金:一般 2,500円(当日¥3,000)
   ペア4,000円(前売・予約のみ)
   U‐25割1,000円(前売・当日共に)
   やさい割2,000円(前売・予約のみ)
   ※U-25割は、チケット精算時に要身分証提示
   ※やさい割は、家庭で収穫された野菜を上演日に持参で500円引き

【北九州公演】
会場:枝光本町商店街アイアンシアター(北九州市八幡東区枝光本町8−26)
日時:2015年9月12日(土)14:00/19:00
        13日(日)14:00☆
   ☆アフタートーク開催

【門川公演】
会場:門川町総合文化会館(東臼杵郡門川町南町 6-1)
日時:2015年11月21日(土)19:30
        22日(日)14:00☆
   ☆アフタートーク開催

【九州以外のツアー公演地】
2015年9月26日(土)~27日(日)津あけぼの座(三重)
2015年12月5日(土)~6日(日)シアターねこ(愛媛)
2015年12月19日(土)~23日(祝・水)こまばアゴラ劇場(東京)

【関連サイト】
劇団こふく劇場

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※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

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