kitaya505が九州新報を買収
合同会社kitaya505(福岡県北九州市)は、二番目の庭(福岡県北九州市)が管理運営する「九州新報」を、1月15日付けで買収したと発表した。買収額は6,500円。なお、この買収による九州新報の名称変更はないという。
2015年1月から、九州の演劇情報を網羅するニュースサイト「mola!」の運営も開始したkitaya505。九州新報の買収は、その布石となるのか。今回mola!では、今後のメディア戦略について、kitaya505の代表である北村功治と、九州新報編集長(本名非公表)の対談を行った。
九州新報買収は、自然な流れ
—まずは、九州新報買収に至った経緯を伺いたいのですが。
北村功治(以下、北村):あれ最初いつごろだったっけ。
九州新報編集長(以下、九州):買収の話ですか?
北村:そうそう。
九州:9月くらいじゃないですかね。
北村:あー、mola!を立ち上げようって思ったタイミングだ。
九州:あ、そうなんですね。
北村:二番目の庭(※1)がやってる九州新報のツイッターが、年に何回かバズったりしてて、たぶんそういうノウハウがあるんだろうなあと思って。
九州:ちょうど台風のツイート(※2)が5万リツイートくらいされた後ですね。
北村:そうそう。それで、webで注目を集めるためのアイデアみたいなのがあるんだろうなあと思って。気にし始めたっていう。
九州:あー、じゃあ台風のツイートがなかったら買収されなかったかもしれないんだ(笑)
北村:かもね。
九州:よかったー。
北村:だから、そのへんからちょっと、九州新報となにかできないかなと思ってたんだけど、最終的にこうなったっていうのは……自然な流れだよね?
九州:そうですね。ちょうど九州新報もマネタイズに困ってて。
北村:マネタイズってなんだっけ?
九州:まあ、困ってて。
北村:で、かんぐん(※3)に飲みに誘って。
九州:「どうだ、売らねえか、九州新報」と。
北村:そんな言い方してないよ。
九州:「6,500円で売らねえか」と。
北村:それは言った。
九州:で、「あ、売ります!」って。即答で。
北村:結局買収したのが今年に入ってからだけど。会社にお金なくて。
九州:よかったー、これで9月の飲み代返せるーって。
北村:そうそう。9月のかんぐんの飲み代立て替えてたから、その場で返してもらって。
九州新報のノウハウ?
北村:で、買収したのはいいんだけど、買収して、こう、本質がちょっとずつ変わるwebサービスって多いじゃないですか。九州新報はそういうことにはしたくないなと思って。
九州:そうそう。それで、名前も九州kitaya新報505とか(笑)、そういうのにならずにすんで。
北村:名前はそのまま、やってることもそのままキープしてもらいたいなと。
九州:だからまあ、管理運営の母体が変わっただけですよね。任意団体から法人に移ったっていう。
北村:ただ、買収したからには、webでこう……バズるっていうか、注目されるためのノウハウは共有したいと。
九州:それがねえ。
北村:(残念そうな顔)
—どうしたんですか?
九州:特にノウハウってないんですよね(苦笑)
北村:らしいんですよ。
九州:九州新報も、これ面白いだろうと思ったツイートが全然人気無かったり、しょうもないな〜と思ったツイートが伸びたりして。つい最近も成人式のツイートが8,000リツイートくらいされましたけど。全然傾向が読めない。
北村:バズるかどうかは運だって言われましたからね。
九州:そうそう。運。
北村:運、らしいんですよ。ノウハウ。
九州:一応いくつか言葉にできるノウハウはあるんですよ。「フォロワーが多い、影響力のあるひとにリツイートされる」とか。でも、それって結局運なんですよね。
北村:買収して得たノウハウが、「運」なんですよ(苦笑)
—その運をコントロールする方法、みたいなのはないんですか?
九州:ないですね。
北村:きっぱり言い切ったね。
九州:ないですないです。ただ、とにかく自分が面白いと思ったツイートを続けるしかないですね。それを面白いと思ってくれた人がリツイートしてくれて、それが影響力のある人の目に止まって、その人もリツイートしてくれる、っていうのがたまーにあるので、それまではまあ、自分が面白ければいいやっていうのを、黙々とツイートし続けるしかない。
mola!と九州新報の共通点
北村:でも、そこだなって気づいたんですよ。
—そこ、というのは?
北村:黙々と、真摯に続けるしかない、っていう。
九州:あー。
—もう少し詳しく説明してもらえますか?
北村:mola!は、九州中の演劇情報を徹底的に網羅してやろうと、やるからには完璧を目指そうと思って始めたんです。そのためのルールもいくつか作って。そのひとつに「熱を一定にする」っていうのがあるんです。
—熱を一定に。
北村:贔屓しないっていうか。たとえば劇評とかって、批評家の方の熱が入るじゃないですか。どうしても。それはそれでいいことだと思うし、全然否定しないんですけど、mola!はその逆を行こうと。どんな公演も平等に扱おうと思って。
九州:「真摯なニュースサイトを作る」ってみんなで言ってましたもんね。
北村:そうそう。その部分は意外と九州新報のスタンスに近いのかもしれない。
九州:まあ、九州新報は気が向いたときだけ更新してたんで、真摯っていうのとは違うかもしれませんけど。
北村:でも、そのくらいの距離の取り方が理想だなっていうか。
九州:確かに平熱ではありますよね。九州新報もmola!も。
北村:熱意がないってわけじゃなくて。
九州:説明が難しいですけど、熱の加減がね。あまり熱を込めすぎると、どうしても不平等になっちゃうところが出てくるんで。それはできるだけやめようと。
北村:そうそうそう。
今後のビジョン
—mola!と九州新報の今後のビジョンをお聞かせいただけますか。
九州:九州新報は……バズると3,000人くらいフォロワーが増えたりするんですけど、1,500人くらい減るんですよ。徐々に。だから、まあ、フォロワー2万人行きたいな。行かなくてもいいな。どっちでもいいです。ビジョンないです。
北村:mola!は、まずなんといっても九州中の演劇情報を網羅した! って言えるようなサイトになることが最初の目標ですね。
九州:チラシを減らしたいみたいな話をしましたよね。
北村:そうそうそう。お芝居観て、もらって帰るチラシの束を減らしたい。
—どういうことですか?
北村:チラシを減らしたいっていうのは極端なたとえだけど、要は、mola!見れば事足りるから、別にチラシもらわなくてもいいや、って思ってもらえるようなサイトになりたいっていう。
—なるほど。ゴールはあるんですか?
九州:うーん……。マネタイズは目標のひとつではあるけど、ゴールじゃないですしね。
北村:マネタイズってなに?
九州:まあ、まずはmola!を知ってもらうことですよね。
北村:そうだね。
九州:短期的なゴールはちょこちょことあるんです。「まず知ってもらう」っていうのもゴールだし、「マネタイズしていく」っていうのもゴールといえばゴールだし。
北村:マネタイズってどういう意味?
九州:最終的なゴールっていうのは……。
北村:まあ、演劇をみんなで楽しめればいいですよね。お客さんも、作り手も、メディアも。
九州:楽しかったらいいっていうのも、九州新報と近いのかもしれない。
北村:そうですね。
九州:……なんか別に九州新報買収してもらっても意味なかったんじゃないかっていう気がしてきた。こっちはまあ、任意団体が管理するよりは法人の方が安心ですけど。
北村:そのうち買収してよかったってなるんじゃないかと思うけどね。
九州:そうですかね。なればいいですけど。
北村:mola!も九州新報も、今後ともどうぞよろしくお願いします。
九州:よろしくお願いします。
北村:ねえ、マネタイズ(※4)ってなんだっけ?
インタビュアー:藤本瑞樹(kitaya505)
(※1)二番目の庭:福岡県北九州市を拠点として、舞台作品を製作しているカンパニー。2000年設立以降、年に1〜2本のペースで作品を発表している。作品に絡めて作った「九州新報」という架空のメディアを、管理・運営もしている。
(※2)台風のツイート:九州新報が8月1日に続けて投稿した「【天気】台風12号が性欲を強めながら東に進み、1日には沖縄に接近」「【お詫びと訂正】先ほどの記事、『台風12号が性欲を強めながら東に進み』とありましたが正しくは『北西に進み』でした。お詫びして訂正します」というツイートが、合わせて95,000リツイートされた。
(※3)かんぐん:kitaya505ご用達の焼き鳥屋。
(※4)マネタイズ:収益化すること。
【関連サイト】
九州新報ツイッター