島田佳代:九州戯曲賞メールインタビュー

2017.05.07

九州地域演劇協議会が2009年より行っている九州戯曲賞。昨年、隔年開催となることが発表され、今年2年ぶりに募集が行われている。

九州7県の中で初めてできた戯曲賞であり、九州という枠組みに特化していること、複数人による一次審査の講評を応募者全員に送付していることなど、九州というフレームでのアイデンティティ創出に加えて、才能の発掘・九州全体のレベルアップを目的としていることから、九州で活動する劇作家にとって重要な位置を占める戯曲賞となっている。

今回、『四畳半の翅音』で第3回九州戯曲賞大賞を受賞した演劇集団非常口(鹿児島)の島田佳代に、九州戯曲賞についてのメールインタビューを行った。

ー九州戯曲賞に応募しようと思った動機を教えてください。

もともと劇団で上演する作品を書いていました。一緒に活動してる劇団のみんなはいいと言ってくれて、それで上演させてもらってたのですが、公演アンケートを読むとそうでもない感じで。「もっと明るい作品をやったほうがいい」とか、中には傷つくくらい辛辣なのもあって。当然悔しさはありましたが、自信もなくしていきました。九州戯曲賞が創設されたのは、戯曲講座へ通っていた頃だったと思います。だめな部分をなんとかしたくて受講していたので、応募すれば講評がもらえるという点は魅力的でした。万一最終候補に残ることができたら、最終審査員の方々に読んでもらえる上に、残ったことが自信につながるはずだと思って応募しました。

ー大賞を受賞してからの変化はありましたか?

今まで抱いてきたいろんな劣等感が少し薄まって、以前より気持ちが楽になりました。ここに住んでいても戯曲を書いていいんだ、書きたいものを書いていいんだと思えるようになりました。受賞作で劇団単独としては初の県外公演もできました。劇団や、戯曲を書くことに対する周囲の目が以前より優しくなった気がします。目にみえる形で評価していただいたおかげで、よくわからないことをやってる団体・人、と思われなくなった気がするというか…。さっきから「気がする」とばかり言っていますが、前より自信が持てるようになって、悪い方へ悪い方へと考える癖が少しずつ抜けてきたのかもしれません。外へ出かける機会も増えて、嬉しい出会いがたくさんありました。ありがたいです。

ー応募しようかどうしようかと迷っているひとに向けて、何か一言お願いします。

わたしは、応募することで外に向かって挑戦している=前に進んでいる感じがしていました。郵便局の窓口で封筒を出す時、「よし、出したぞ!」という達成感と共に自分をほめることができました。戯曲を書く作業は孤独で、内へ内へと向かっていくうちにしんどくなる方もいらっしゃると思います。わたしもそうです。そうして自分の内側を見つめて書いた作品を、身内だけでなく広い範囲にさらし、戯曲そのものについての批評を受ける覚悟を持つことで、気持ちの面で強くなれた気がします。
応募して後悔することはないと思います。

ー島田さんの今後のご予定をお聞かせください。

みまた演劇フェスティバル「まちドラ!2017」の「ヨムドラ!」で、町民チームの演出をさせていただきます。また、演劇集団非常口第18回公演『鱗の宿』が8月19日(土)~20日(日)にあります。伊佐市文化会館です。

ーありがとうございました。

九州戯曲賞は現在応募受付中。5月31日(水)締め切り(当日消印可)。今年の最終審査員は中島かずき、市原佐都子、桑原裕子、松井周、佐藤信。九州で活動する劇作家はぜひ、客観的な批評を受けることで現在の力量を測ってほしい。

構成・執筆:藤本瑞樹(kitaya505)

【関連サイト】
九州地域演劇協議会「九州戯曲賞、募集要項を公開いたします(平成29)」

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