松本眞奈美(劇団「市民舞台」)『じしんにかとう』インタビュー
劇団「市民舞台」が「熊本地震復興祈念・ 五島和幸一周忌公演」と題して『福幸RAKUGO 芝居じしんにかとう』を5月に再演。作・演出を務められる劇団「市民舞台」の松本眞奈美さんにお話を伺いました。
ー今回、RAKUGO芝居「じしんにかとう」を再演されることになったいきさつを教えていただけますか?
昨年10月〜11月にかけてRAKUGO芝居『じしんにかとう』を上演しました。こんなに短いスパンで再演するのは初めてなんですよ。だいたい再演しないし。地震から1年経ち、前代表の五島和幸の一周忌もあったので、一番この「じしんにかとう」がいいなと。五島の一周忌の意味合いが強いのでそれに賛同していただける客演さんもお呼びして、前回出演できなかったメンバーもいたので去年上演した時から全て出演者を入れ替えて上演します。
ー昨年、地震から半年後の『じしんにかとう』をご覧になったお客様の反応はいかがでしたか?
めちゃくちゃ良かったです。地震後こんなに笑ったのは初めてとおっしゃった方もいらっしゃいました。ラストシーンの「復興」「幸福」の掛け合いはジーンと来て涙が出ましたとおっしゃる方も。シンプルに言葉のパワーというか。この作品、テーマは“Joy!!”なんです。
ー最後にはSMAPの「Joy!!」がかかりますね。
SMAPファンですが無目的にかけているわけでも、演出の趣味でかけているわけじゃありません(笑)。「一緒に無駄なことしようよ、楽しもう」みたいな歌詞なんですよ。地震の直後って無駄なことをしないじゃないですか。生活を取り戻すのに必死だし。直後はご飯食べることに必死だし寝ることに必死だし。でも、復興って無駄なことをできることだと思うんです。ライフラインがそろうことは当たり前で、もっと心の問題というか。「無駄なことを一緒にしよう」という呼びかけにたいして、それをみんながJoyする。「復興」「幸福」の掛け合いと「Joy!!」の歌詞にもこの作品で伝えたかったことが込められています。
ー今回の再演は、前回から出演者を総入れ替えされていますね。
出演者を入れ替えてみて改めて気づいたのが、これはお芝居じゃなくて、落語なんだなと。落語って演者さんによって登場するキャラクターの性格がずいぶん違うじゃないですか。お芝居よりも演者さんの個性が出やすいですね。いちばん最初は役者の訓練にと思って作ったんです。1回目のRAKUGO芝居では大好きな『頭山』をやったんですけど、芝居でやろうとしたら無理なんですよ。最後、自分の頭の池に飛びこんで死んじゃうという不条理SFだから。映像表現でも大変で、落語で語りだからできる世界。けど、それをなんとか演劇化するために語りと演技で構成するんですが、そのためには役者に相当のスキルが必要で。語る力が必要で、小道具もお扇子と手ぬぐいで表現するから。語ってしまえば表現としては簡単だけど、そこに演技をあわせるから複雑な作りになって。落語とお芝居の中間を狙ってます。役者の素地がよけいに見えちゃいますね。RAKUGO芝居は落語の登場人物のキャラクターを借りる体なので。RAKUGO芝居自体、複数の落語からひとつの物語を編み出していて、それぞれの落語からキャラクターを借りて来ています。そのキャラクターをつないでいくと1本の物語になるという。
ーRAKUGO芝居を観てから改めて落語を見るのも面白そうですね。
『じしんにかとう』という落語はあるんですけど、あらすじしかなくてどんな話かわからないままに作りました。だから『じしんにかとう』にあうキャラクターが出る他所の落語からキャラクターを借りて来て落語を組み合わせて。有名な落語作品は書き起こされているものがあるんですけど、『じしんにかとう』は全くわからない。RAKUGO芝居は落語を知っている人は「こうきたか!」という楽しみ方があるし、知らない人は単純に笑ってエンジョイしてもらえたら。所詮“無駄なこと”ですからね。
無駄なことを感受してそこでいかに遊べるか楽しめるか。
熊本地震後、衣食住の確保が最優先の時期にあっては無駄なことが一切なかった。
芸術こそある意味では無駄の象徴のようなもので、でも、その無駄の力がなければ心の復興は難しいもの。
笑うことが心を解し、心が解れた結果として涙が溢れてくることもある。すると全身の力が緩み、前向きに楽しいことだって考えられる。
松本さんの話を伺いながら、昨年観た『福幸RAKUGO芝居 じしんにかとう』の「復興」「幸福」の言霊のシャワーを改めて思い出した。
飛脚のハチは旦那の一人息子キンボウにいっぱい食わされ、戒めの為にお尻をピシャリ。そこを旦那とおかみさんに見られ暇を出されてしまった。そこで、なんとか旦那に許してもらおうと近所の隠居に相談する。隠居はまず旦那を褒めて気分良くして謝れば、きっと許してくれると人を褒める方法を教えるが、ハチはうまく褒められず失敗。
新婚の女房の勧めもあり再度隠居を訪ねると、口下手のハチを考慮した隠居は歌舞伎「地震加藤」を参考に、地震があったらいの一番に旦那の下に助けに駆けつければ、きっと旦那の怒りも解けるだろうと話す。
ハチはそれを鵜呑みにし、夜も眠らず昼寝して地震、雷、火事を見張る事にしたのだが…。
出演は、吉岡志穂、三角志帆、桑路ススム(フリー)、樫山結、木内里美(Theちゃぶ台)。
チケットは一般1,000円(当日1,500円)、高校生以下500円(当日700円)。
お問い合わせは劇団「市民舞台」070-4690-5322 まで。
インタビュー・執筆:松岡優子(ゼロソー/Sulcambas!)
劇団「市民舞台」熊本地震復興祈念・
五島和幸一周忌公演
『福幸RAKUGO芝居 じしんにかとう』~いんすぱいあ「地震加藤」「真田小僧」「子ほめ」「たらちね」~
作・演出:松本眞奈美
日時:2017年5月13日(土)19:00
14日(日)11:00/14:00
会場:くまもと県民交流館パレア 和室(熊本市中央区手取本町8-9 テトリアくまもとビル10階)
料金:一般1,000円(当日1,500円)
高校生以下500円(当日700円)
【関連サイト】
劇団市民舞台「福幸RAKUGO芝居 じしんにかとう」