飛ぶ劇場『生態系カズクン』製作発表に行ってきた③
飛ぶ劇場(北九州)が30th anniversary! vol.38『生態系カズクン』(作・演出:泊篤志)を9月8日(金)~10日(日)に北九州市小倉北区室町の北九州芸術劇場 小劇場で、9月18日(月・祝)に都城市北原町の都城市総合文化ホール 中ホールで、9月30日(土)~10月1日(日)久留米市六ツ門町の久留米シティプラザ Cボックスで上演する。
飛ぶ劇場との思い出を綴ってたらなかなか終わらないので今回で〆る。
なんだか楽しそう、楽しいって理由で入って居付いた飛ぶ劇場なんだけど、『生態系カズクン』の初演を終えた後くらい、97年末~98年あたりで劇団の状況が一変して、楽しい一辺倒だけじゃなくなった。
ある日、「『生態系カズクン』で戯曲賞を取りました~」って泊さんから電話があった。なんかの戯曲賞に出してて、最終候補に残っているから東京に行ってくるとかなんとか言ってたな、あーあの時のあれか、おめでとう。……報告を受けた時は、こんな感覚だったと思う。
それが「日本劇作家協会新人戯曲賞」てやつなんだけど、正直ワタクシは『生態系カズクン』って戯曲より前作の『ジ エンド オブ エイジア』(※1)の方が好きだったし、優れているって思っていた。そんななので、『生態系カズクン』が一等賞取った! てのは、俳優として、劇団員として、関わった者として、そりゃうれしいことだが、「へーそうなんだー、前の作品の方が面白かったのにねぇ」くらいだった。それより副賞が何十万か(※2)あると知ってたので、焼肉くらい食べさせてもらえるかしら? もらえなかったわー残念、くらいの感じだった。だってね、ワタクシには直接関係ないじゃんよ。たまたま出演者ってだけで、作家さんの戯曲が賞を取りましたってさ。
でも、そうでもなかったんよね。ワタクシには直接関係ありまくりだったんよね。
劇団の状況は、『生態系カズクン』が「日本劇作家協会新人戯曲賞」てやつを受賞してから、しつこいようだがマジ生活環境も演劇環境も一変したんよね。演劇のことをあんまり知らない素人でも、なんか周りが期待してるって感じが伝わってきたし。そんな期待に後押しされてか、気付いたら周りの仲間はなんだか著名な演劇やってる方々のワークショップ(※3)とか受けてたりして、前のめりで演劇を学ぶようになってた。そうこうしてたら北九州を飛び出していろんなところで公演してたし。当時はどこにどういった理由で公演に行くのか恥ずかしながら興味なかったので、ただただ1年中演劇やってんな!! って感覚。1年中演劇やってたら、劇団が演劇バカの集団となっていた。たぶんワタクシも演劇バカになっていた。いま劇団を離れて思うんだけど、演劇バカ度合いでは、あの時の飛ぶ劇場は群を抜いてたと思う。群を抜いて演劇バカの飛ぶ劇場の中でも、さらに群を向いてた劇団員の有門正太郎(※4)くんは、突き抜けすぎて富良野塾(※5)に入っちゃうしね。ワタクシからしたら、富良野塾なんて自らシベリアに抑留されに行くようなもんですからね。「アリカド、ヤベェところに行くぜ!」って感じ。何回かふりかけ送った記憶があるなぁ。厳しい環境なんでしょ? ふりかけで凌いで元気に帰ってきて! って。ま、いま彼は元気にしてるし、こっちが心配するほどのことではなかったんだろうけど。
有門くんが富良野塾に収監されてる間、飛ぶ劇場はフルパワーのフル稼働だったなぁ。『生態系カズクン』で有門くんが担ってた主役も寺田剛史くんが引き継いだりして。当時の寺田くんは控えめでシャイでどこか線の細さを感じる自然体な「少年」だったなぁ。北九州芸術劇場ができて、小劇場の杮落としとして『生態系カズクン』と『カズクン、旅に出る』(※6)の2本立てをやったんだけど、あれも劇団が演劇バカだから実現したんだと思う。2演目出演した方々ってずっと稽古してたんじゃないかしら? 生活どうしてたんでしょね。有門くんが2年のお勤め終わってからも、劇団は公演のたびに九州の各地やら、東京、大阪、札幌で公演やりまくったなぁ。みんな生活どうしてたんやろ。東京のどっかの俳優養成所にいた藤原達郎くんや長崎から葉山太司くん、福岡からとある劇団の看板俳優だった木村健二くんが引越ししてまで飛ぶ劇場に入団するし、そんなんだから劇団は、ますます演劇バカ化するし。この時期ってバカに歯止めが掛からんやったわ~とかそんなことを自宅に残っていた写真を見ながら思い出していたら、年を取ったせいかなんかこみ上げてきた。なので、昔を思い出すのは、これくらいにしとく。
飛ぶ劇場とは劇団を辞めた後も『睡稿、銀河鉄道の夜』(※7)で一緒に作品創っていたりしてて、関わり方や距離感は変わったものの繋がりはある。でも、というかやっぱりというか、それでも『生態系カズクン』はワタクシにとって改めてスペシャルだったんだと思う。それは、何もワタクシだけでなく、これまで『生態系カズクン』に関わった多くの方々も同じなのかもしれない。たぶん、そんな演目なんだと思う。
そんなこんな経験や想いをもったワタクシが思うんですけど、劇団って超面倒くさい集団を30年続けるなんて、ワタクシには絶対無理で、だからこそ劇団を飛び出した。飛ぶ劇場が30年存在するのはマジ凄いなぁと思う。こんな書き方すると30年続いたことを手放しで褒めてるみたいだけど、決してそうじゃない。かつて、いろんなことを共有した意地の悪い元劇団員として嫌味も少々込めた、「マジ凄いなぁ」だ。
拝啓
飛ぶ劇場様
劇団創立30周おめでとうございます。
これまでいろいろとお世話になりましたが、これからも更にお世話になるかと思います。飛ぶ劇場を出て10年ちょっと経ちましたが、あの時のへっぽこ俳優も、今では少しばかり演劇に貢献できるようになったかと思います。なので、お世話になるだけでなく、お世話できるようにがんばりますね。
これからも、その時、その時の飛ぶ劇場で在ることを心から願います。
これからもよろしく。
北村功治
(※1)『ジ エンド オブ エイジア』
95年に上演された作品。第2回日本劇作家協会新人戯曲賞の2次選考に残る。
(※2)副賞が何十万か
50万円。
(※3)ワークショップ
当時の北村は本気で何かのお店を開く講座か何かと思っていた。
(※4)有門正太郎
飛ぶ劇場の劇団員。バイタリティーの塊。
(※5)富良野塾
北海道富良野市に存在した、倉本聰が開設した脚本家と俳優を養成する2年制の私塾。2010年閉塾。
(※6)『カズクン、旅に出る』
『生態系カズクン』の外伝。『カズクン、旅に出る』と2本立てで北九州芸術劇場と、東京の青山円形劇場で上演された。
(※7)『睡稿、銀河鉄道の夜』
宮沢賢治の名作「銀河鉄道の夜」を泊篤志の脚本で舞台化。北は札幌、南は鹿児島で上演されている。北村がプロデューサーとして参加している。2009年初演。
出演は、桑島寿彦、内山ナオミ、木村健二、葉山太司、脇内圭介、中川裕可里、宇都宮誠弥、佐藤恵美香、太田克宜、文目卓弥、青木裕基、はまもとゆうか(大帝ポペ)。
お問い合わせは、飛ぶ劇場info@tobugeki.com、都城市文化振興財団0986-23-7140(宮崎公演のみ)まで。
飛ぶ劇場30th anniversary! vol.38『生態系カズクン』
作・演出:泊篤志
【北九州公演】
日時:2017年9月8日(金)14:00★/19:00☆
9日(土)14:00/18:00◇
10日(日)14:00
★…8日(金)14:00 守田慎之介(演劇関係いすと校舎)、泊篤志
☆…8日(金)19:00 飛ぶ劇場劇団員
◇9日(土)18:00 北村功治(kitaya505)、泊篤志、有門正太郎
会場:北九州芸術劇場小劇場(北九州市小倉北区室町1-1-1-116F)
料金:一般2,800円(当日3,000円)
学生1,800円(2,000円)
高校生以下1,000円(1,200円)
【宮崎公演】
日時:2018年9月18日(月・祝)14:00
会場:都城市総合文化ホール 中ホール(都城市北原町1106-100)
料金:一般2,300円
高校生以下1,000円
【久留米公演】
日時:2018年9月30日(土)18:00★
10月1日(日)14:00
★…アフタートークあり
会場:久留米シティプラザ Cボックス(久留米市六ツ門町8-1)
料金:一般2,800円(当日3,000円)
学生1,800円(2,000円)
高校生以下1,000円(1,200円)
【関連サイト】
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