ペヤンヌマキ×安藤玉恵×川口大樹対談!福岡⇄東京それぞれの演劇事情!

2018.01.08

ペヤンヌマキ×安藤玉恵生誕40周年記念ブス会*(東京)がリーディング『男女逆転版・痴人の愛』(翻案・演出:ぺヤンヌマキ(原作:谷崎潤一郎『痴人の愛』)を1月21日(日)、久留米市六ツ門町の久留米シティプラザ 和室長盛で上演する。

左から、安藤玉恵、川口大樹、ペヤンヌマキ

左から、安藤玉恵、川口大樹、ペヤンヌマキ

万能グローブ ガラパゴスダイナモス『ハダシの足音』(作・演出:川口大樹)の東京公演に合わせて、ペヤンヌマキ×安藤玉恵×川口大樹の対談が実現。福岡での演劇事情、全国で公演を行うことや作品の共通点についてなど、東京小劇場演劇のメッカでもある下北沢・駅前劇場で三者三様のトークが繰り広げられた。

ツアーでのセット運搬におすすめなのは……

ー早速ですが、万能グローブ ガラパゴスダイナモス(以降「ガラパ」)の紹介をお願いできますか?

川口 僕と主宰の椎木樹人が福岡の大濠高校という同じ高校の演劇部で。劇団☆新感線のいのうえひでのりさんが先輩にあたるんですが、そこから旗揚げた劇団ですね。いのうえさんが当時書かれた台本とか、まだ部室にあるんですよ。
安藤 えー、読みたい!(笑)。
川口 だから新歓で新感線の映像を「先輩だよ」と見せたり。あと、やたら刀とかが沢山残ってたり(笑)。エンターテインメント性というか、お客さんを笑わせたいし、楽しませたいという精神がそこで自分に染み込んだ気がします。
ペヤンヌ 確かに、今回のガラパの公演も笑いもあってSF要素もあって、ストーリーもわかりやすくて楽しませていただきました。間近で見たらこの舞台セット(細かく切った新聞紙が敷き詰められている) が、「記憶の堆積」を表現しているんですかね?

万能グローブガラパゴスダイナモス『ハダシの足音』舞台写真

万能グローブガラパゴスダイナモス『ハダシの足音』舞台写真

 

万能グローブガラパゴスダイナモス『ハダシの足音』舞台写真

万能グローブガラパゴスダイナモス『ハダシの足音』舞台写真

川口 あ、そうそう、そうですね。
ペヤンヌ ホームページを拝見して、コメディと思って来たのですが、今回はSFというか、ファンタジー成分が多めでしたよね。
安藤 そう、脚本も面白かったです。伏線がいっぱい張られていて、中盤からそれが回収されて物語が立ち上がってくる感じとか。
川口 ありがとうございます(笑)。実は今回はいつもよりコメディ要素が少ないんですよ。普段はもっとお茶の間な舞台セットで、1シチュエーションで……って感じなんですが、今回初めてこういう抽象的なお芝居に挑戦しました。
安藤 今までは、タンスがあってコタツがあってみたいな。
川口 そうですそうです。
ペヤンヌ 私も今回(『男女逆転版・痴人の愛』)初めて抽象的なセットに挑戦したんです。……抽象って難しくないですか?
川口 難しいですね。色んな場面が作れる分、どうしたらいいんだろう? って最初は苦戦しました。
ペヤンヌ あと、自分でブス会*の公演をやっていて、3都市ツアーってどうやるんだろう! っていうのが単純に疑問というか……。どうしてるんですか?
川口 初めて2010年に東京のこまばアゴラ劇場でやったときは、とにかくやった、って感じでしたね。

万能グローブガラパゴスダイナモス『ひとんちで騒ぐな』舞台写真

川口 普通、全国を回る劇団って舞台セットももっとコンパクトというか、持ち運びやすいセットで芝居を作るらしいんです。でも僕らはいつも舞台セットを建て込むので、その時もガッツリ<家>モノで。なにもわからず「とりあえずフル装備で行くぞ」って(笑)。JR貨物が安い、ということを学びましたね。JR貨物がオススメです。
ペヤンヌ そうなんだ! 勉強になります。今回の公演はなるべく全国色んなところを回りたくて、それで抽象的なセットを選択したところもあるんですよ。

福岡は、「東京より近い都会」

ペヤンヌ 劇団公演の台本は全部ご自分で書かれてるんですか? オリジナルで? 24本も?
川口 はい。ほぼ全て僕が書いてますね。
ペヤンヌ すごいですねー。ブス会*、まだ7本しかやってない(笑)。私は長崎出身で、長崎にいる時に地元の劇団も色々見ていたんですが、既成の戯曲で公演していることが多くて。今、福岡でオリジナルでやっている劇団ってどれくらいあるんですか?
川口 うーん、継続的に公演をやってるのは30とか40とかですかね?
安藤 あ、そんなにあるんですね!
ペヤンヌ 福岡は都会ですもん。長崎に住んでた時、そういうイメージでしたね。東京まで行けない時に行ける、もうちょっと近い都会。同じ九州でも違うなって思って、羨ましかった覚えが。
川口 今は九州内での演劇人同士の交流も盛んで、九州内でツアーをやったりしますよ。九州演劇人サミットといって、各都市で劇団をやってる人が集まって情報交換したり。
ペヤンヌ安藤 へえ〜。
安藤 お芝居の中で方言は使わないんですね?
川口 そうなんですよ。なんででしょう……。自分の台本に方言があるとなぜか違和感を感じて……。今まで影響を受けてきたお芝居が標準語だからかもしれません。ブス会*さんも標準語ですよね。
ペヤンヌ 上京したら方言を普段の生活で使わなくなって。その流れで芝居も標準語で作ってたんですが、『お母さんが一緒』という公演で初めて方言を使いましたね。自分の家族の話を描こうとした時に、方言じゃないとしっくりこないなと思って。

ブス会*『お母さんが一緒』舞台写真(写真:曳野若菜)

ブス会*『お母さんが一緒』舞台写真(写真:曳野若菜)

川口 なるほど。あと、福岡の人間って、割と自分たちは標準語に近いと思っているところがあるかもしれません。「都会だぜ?俺ら」みたいな。「標準語、別に話せるぜ?」みたいな(笑)。
一同 (笑)

会話劇はファミレスで書く!?

ー1月に久留米シティプラザで行われる、ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ブス会*リーディング『男女逆転版・痴人の愛』公演について伺えますか? 昨年7月に東京・御徒町の古民家でリーディング公演を、同12月に東京・こまばアゴラ劇場にて<演劇版>の本公演を行って、久留米では<リーディング版>の上演となるんですよね。

ペヤンヌ 安藤さんと私は早稲田大学の演劇サークルからの20年来の付き合いなのですが、10年前、お互いが30歳の記念に『女のみち』という企画公演をやったんです。それをきっかけに2010年にブス会*を旗揚げして今があるので……。今回、40歳の記念に公演をやって、節目の年ごとにやっていく、ライフワークにしていこうかと。谷崎潤一郎の小説「痴人の愛」の登場人物を男女逆転させて描き、原作では「譲治」という男性の主人公を「洋子」という40代の女性に。美少女「ナオミ」を美少年「ナオミ」にし、更に時代を現代にしています。
安藤 ペヤンヌマキ×安藤玉恵 生誕40周年記念ってねえ(笑)! 大げさでお恥ずかしい。「生誕●周年」って、基本的には亡くなった偉人に対して使う言葉らしいじゃないですか。
川口 夏のリーディングの映像を見せていただきました。東京のこまばアゴラ劇場でやった本公演と、1月に上演される久留米のリーディングのキャストは一緒なんですよね? チェロ演奏の方も。本公演も見たかったなと思って。
安藤 そうですね。キャストは全部一緒。全国でまずリーディングを見てもらった後に、同じところで<演劇版>もやらせて貰えたらいいですよね。あ! 全然コメディじゃないですよ。大丈夫ですか?
川口 あはは(笑)。大丈夫です。
安藤 かぶらない。今回のブス会*とガラパは競合しないですね(笑)。
ペヤンヌ でもブス会*は「コメディ」と言われていたんですよ。
安藤 そうだね。今までは。

ブス会*『女のみち2012 再演』舞台写真(写真:曳野若菜)

ブス会*『女のみち2012 再演』舞台写真(写真:曳野若菜)

ペヤンヌ 今までは女性だけの集団で巻き起こる人間関係だったり、会話だったり、いざこざだったりを描いてきたんですが、今回は原作があるのも初めてだし、しかも谷崎潤一郎だしでかなり作り方が違いました。例えば脚本は今までずっとファミレスで書いてたんですけど、今回はファミレスでは書けませんでしたね (笑)。
一同 (笑)。
川口 ファミレス! 僕もそうですね。家で書いてるとそもそも<会話>って何だ! と思って煮詰まっちゃう。そういう時にファミレスで、隣の高校生が何でもない会話してるのを聞くと「これだ!」ってヒントになったりします。
安藤 今回は今までのブス会*とは明らかに文体が違いましたからね。文語というか。確かにファミレスでは書けないでしょうね(笑)。旅館の和室にこもって書けたら良かったね。予算があればね。

福岡で『男女逆転版・痴人の愛』はどう映る?

2017年7月に行われた『男女逆転版・痴人の愛』リーディング(写真:宮川舞子)

2017年7月に行われた『男女逆転版・痴人の愛』リーディング(写真:宮川舞子)

 

2017年7月に行われた『男女逆転版・痴人の愛』リーディング(写真:宮川舞子)

2017年7月に行われた『男女逆転版・痴人の愛』リーディング(写真:宮川舞子)

川口 どれくらい原作の「痴人の愛」のままなんですか?
ペヤンヌ 結構忠実ですね。特にリーディングは、私が原作を読んで「共感する!」って箇所を抜き出していったらかなり多かったんですよ。原作をそのまま置き換えても成立するな、と思って。
川口 綺麗に成立してました。無理やり何かを変えたりしなくても現代版として成立するんだなと。
安藤 これ、福岡でも受けますかね?
川口 受けると思いますよ! もしかしたら最初は谷崎潤一郎だし、ちょっと構えるかもしれないけど、ストーリーがシンプルに面白いし。あと、エロティックというか、ドキドキする感じ。福岡の人、好きだと思うんですけどねぇ。ナオミ役の福本雄樹さんの背中とか(笑)。
ペヤンヌ 和室だから、至近距離で堪能できますね。
川口 あと僕、正直、難しい演劇とか苦手なタイプで。
ペヤンヌ わけのわからないものが私も苦手で。「わけがわかるものしか作らないようにしよう!」と思ってますね。
川口 うわー! 共感します。嬉しいですね。実はリーディングの映像を見るまでは、「対談する事が決まってるけど、難しい作品だったらどうしよう」と思っていて(笑)
ペヤンヌ安藤 ははは(笑)
川口 でも見てみたら「わけのわかるもの好き」の人間としてすごく面白かったです。僕は演劇マニアではないし、福岡の普通の人の目線に近いと思うんですけど……。僕が見て面白かったから、きっと福岡の人も好きだと思いますよ!
ペヤンヌ やった!
安藤 もう「川口さんのお墨付き!」って書いておこうよ!
川口 僕のでよければ!

ー『男女逆転版・痴人の愛』に出演している山岸門人さんも、前からガラパのみなさんとはお知り合いなんですよね?(ペヤンヌさん安藤さんと同じ回に観劇されていたので同席してもらいました)

左から、川口大樹、山岸門人

山岸 そうなんです。前に所属していた劇団鹿殺しの福岡公演の時とかにすごくお世話になりまして。
川口 リーディングの映像を見たときに「あっ門人さんやー」と思って。でも「アレ? しばらく見ない間に芝居のアプローチが随分変わったな……どうしたんやろ」と思ってたら後からオネエの(BARの)マスター役だったって事に気付きました(笑)。
一同 (笑)。
安藤 門人くんはリーディングでは3役やっていたけど、12月の公演ではもう1役増えて4役になりましたからね。
川口 その役は久留米のリーディング公演ではどうなるんですか?
ペヤンヌ 考え中なんですよね……。見てのお楽しみですね。その役は原作を改変した役なので、朗読になった時にバランスが難しくて。
川口 変えたところといえば、ラストシーンもね……。「女性は怖いな」って思いましたよね。なんたる執念! と。男にはあんまり思いつかない発想じゃないかな。
ペヤンヌ ありがとうございます。原作のままだとなんだか成立しないと思ったんですよね。お客様から十人十色の感想をいただくポイントの一つです。

ー最後に、読んでいる方へメッセージをお願いします。

川口大樹

川口大樹

川口 今回初めてブス会*の映像を見させていただいて、勝手にシンパシーを感じました! リーディングも、ブス会*の今後の本公演も是非見させていただきたいですね。ガラパは、来年もまた東京を含めた全国ツアーをやりたいと思っているので、その時はぜひ見にいらしてください!

安藤玉恵

安藤玉恵

安藤 ペヤンヌさんと「この作品で全国をまわりたいね」って夢みたいな話をしていたんです。それがたまたま今回久留米に呼んでいただいたので、ひとつ夢が叶ったというか、駒を進められたような気持ちがしています。私、この公演で日本全国の女性を元気にしたいと思ってるんですよ! その野望の第一弾です。なので、久留米の皆さんにはぜひ見ていただきたいですね。

ペヤンヌマキ

ペヤンヌマキ

ペヤンヌ 自分の出身地である九州で、ブス会*初の地方公演ができて嬉しいです。舞台ってやっぱり生で見てこその良さがあると思います。今回は特に和室という空間なので、役者さんのお芝居を間近で見れるチャンスかと。ぜひ足をお運びいただけると幸いです。

インタビュー・執筆:枝山理子


仕事人間の40歳独身女性の“私”は男性に対して独自の理想を持つようになる。それは未成熟な少年を教育して自分好みの男に育て上げるというもの。ある日“私”は美しい少年ナオミと出会い、「小鳥を飼うような心持」で同棲を始める。人見知りで垢抜けない少年だったナオミは次第にその美貌を利用して奔放な振る舞いを見せるようになり“私”はナオミに翻弄され身を滅ぼしていく…。

出演は、安藤玉恵、福本雄樹(唐組)、山岸門人。チェロ演奏に浅井智佳子。

チケットは1,000円。久留米シティプラザ総合受付(2F)、久留米シティプラザチケット予約システムでの取り扱い。

お問い合わせは久留米シティプラザplaza@city.kurume.fukuoka.jp、0942-36-3000まで。


久留米シティプラザ「はじめてのえんげき祭」参加作品
ペヤンヌマキ×安藤玉恵生誕40周年記念ブス会* リーディング『男女逆転版・痴人の愛』

翻案・演出:ぺヤンヌマキ(原作:谷崎潤一郎『痴人の愛』)
日時:2018年1月21日(日)13:00/17:00
会場:久留米シティプラザ 和室長盛(久留米市六ツ門町8-1)
料金:1,000円

【関連サイト】
ブス会*
久留米シティプラザ『男女逆転版・痴人の愛』公演詳細ページ
万能グローブガラパゴスダイナモス

※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

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