mola!初!劇団しようよ『あゆみ』公開インタビュー

2018.03.05

3月24日(土)、北九州市八幡東区枝光本町の枝光本町商店街アイアンシアターで『あゆみ』(作:柴幸男、演出:大原渉平)を上演する劇団しようよ(京都)。北九州だけの公演のために、客演に飛ぶ劇場の泊篤志・葉山太司を迎えて上演される本作。mola!初の公開インタビューと称して、小倉駅前の居酒屋で、劇団しようよの大原渉平・植村純子と、飛ぶ劇場の泊篤志・葉山太司のインタビューを行った。なお、このインタビューには冒頭から森國真帆(福岡)、途中から守田慎之介(行橋)が参加した。

インタビュアー:藤本瑞樹(kitaya505)・北村功治(kitaya505)
参加者:森國真帆・守田慎之介
構成・執筆:藤本瑞樹(kitaya505)

台詞を覚えなくていいんだったら出ていい(泊)

左から、劇団しようよ制作の植村純子、代表の大原渉平

左から、劇団しようよ制作の植村純子、代表の大原渉平

ーじゃあはじめます。

一同 よろしくお願いしまーす! イェイイェイ!!

ー別にこの声の盛り上がりは文字にはならないんで。

一同 (笑)イエーイ!

ーじゃあまず劇団しようよの大原さんから自己紹介からお願いします。

大原 はい。京都からやってきました、劇団しようよです。2018年で旗揚げ8年目になります。6年前に枝光本町商店街アイアンシアターで公演させてもらいまして、6年ぶりの北九州公演となります。僕は演出家をやっております。作・演出もします。えー、なに言うたらええんやろ。29歳です。
 29になってるんや……。
植村 来年の『パフ』のツアー(※1)の終わりで30になるんですよ。
大原 そうなんですよ。京都ではよく30代目前のカンパニーがつぶれたり休止したりするんですけど、その意味がようやくわかってきましたね……。「負けないぞ!」という気持ちでいっぱいです。よろしくお願いします。

※1)来年の『パフ』のツアー
劇団しようよは2018年度、代表作『パフ』を京都・東京・北九州・沖縄で上演する。この公開インタビューは、『パフ』の北九州オーディションに合わせて行われた。

(泊が小さな声でなにか言っている)

ー書き起こせるボリュームで言ってくださいよ!

  劇団員もね、結婚したりするからね、30くらいになると。
植村 って普通の声で言っててもカットされてたりして(笑)。

ーじゃあ次、植村さん。

植村 はい。劇団しようよの制作をやっています植村です。北九州でどういう自己紹介をしたらいいのか非常に迷うんですけど……。劇団しようよ以外に劇団衛星という劇団でも制作をやってまして、北九州とのご縁は……2007年の『大陪審』という作品を上演しに来て以来ですね。一時期はほぼ毎月、2か月に一度くらいのペースで北九州に来てました。よく泊さんに「きみはどこに住んでんの?」って言われてたんですけど(笑)。
  毎週末北九州で見かけてた。
植村 かなり頻繁に福岡か北九州かには出没してて。でも、このところちょっとこっちでの仕事だったり活動だったりがなかったので、ひさしぶりにがっつりと公演で来られることになって、すごく楽しみです。

ー北九州に公演で来るのはいつ以来ですか?

植村 公演は……2011年の『劇団衛星のコックピット』が最後じゃないかな。

ー次は泊さんですね。今回は「出演」ということで、「俳優」の泊さんにお伺いしたいんですけど、出演はいつ以来ですか?

  出演させていただくことになった、俳優ではない、飛ぶ劇場の泊と申します。……ちょっと待って。(現在の状況をツイートしている)

ーこの状況でいま娘さんの写真とかアップしてたらおもしろいですね。

一同 (笑)
植村 「え、今!?」って。
  で、えー、いつ以来……? リーディングみたいな企画モノに出演とかはちょいちょいあったけど、普通に舞台に立つのは、……もう20年ぶりくらいじゃないかな。
北村 そんなに!?
  『生態系カズクン』でアゴラに出たのが最後かな……。

ーアゴラに立ってたんだ!

  立った立った。あれで「もういい」って思って。
北村 役がついたのってあれ以来ない?
  当時の劇団員に騙されて新人公演に出たな。最初「録音だ」っつって録音したら「やっぱり生で」っつって、袖で台本読んでいいって言われて、結局「やっぱ出てほしい」みたいになって。それで新人公演にちょっと出た、っていうのはあるけど。
北村 『熱海』(※2)?
  『熱海』。伝兵衛やった。今回連絡もらって、「え? 出演?」ってなって。「え、台詞覚えませんよ」みたいなことを言ったら、「台詞は覚えなくて大丈夫です」って言われて。
植村 台詞は覚えなくていいけど、しゃべるのはしゃべる。

※2)『熱海』
つかこうへいの代表作のひとつ『熱海殺人事件』。「伝兵衛」は本作の主人公「木村伝兵衛」のこと。

北村 (大原に)ちゃんとがっつり負担かけていいんよ。泊さんゲスト出演って言っときながらがっつり覚える、みたいなことを平気でやるひとだから。
大原 そうですね(笑)。『あゆみ』は2年前と去年やらせてもらって、去年やってから自分の中で変化があって。「最新の自分がいちばん納得できるものに形を変えよう」と思ったんで。
植村 だから泊さんに台詞をしゃべってもらおう、っていうこともあるかも。
大原 あるかもしれないですね。
  そうなったら逃げる逃げる逃げる逃げる。
大原 2年前から『あゆみ』はいつか北九州でやりたいなと思ってたんですね。そのときから「このポジションやってもらうなら泊さんやな」って思ってたんです。
北村 キャスティングあったまってる!
大原 そうなんですよ。なのでかなり僕的には夢がかなってうれしいなというキャスティングなんです。

ー泊さん、役者冥利に尽きるじゃないですか。

  役者じゃないから(笑)。
北村 流行ったらどうするん?
植村 「泊さんを出演で呼ぼう」って(笑)。
  台詞を覚えなくていいんだったら出ていい。
一同 おっ!

ー見出しにしよう! 太字で!

北村 踊りはOK?
  踊りもしない。

ー何ならします?

北村 歌。歌。
  (笑)
植村 覚えなくていい歌だったらいい(笑)。
  歌詞見ていいんだったら。
植村 「見ていいんだったら歌う」!
  え、歌でしょう? うまくなくていいんだったら。

ーよし、大きめの見出しで書くぞー!

大原 実は今回『あゆみ』の歌ができたんです。……本番使うかどうかまだわからないんですけど。劇団しようよには座付きのミュージシャンがいまして、はじめの創作に入るにあたっての、なんていうんでしょう、ワークショップ的なのものの一環で、『あゆみ』の歌をつくってみんなで歌ってまして。なので歌唱シーンがあるかもしれないです。
  柴さん(※3)に怒られない?
大原 どうでしょうか……。去年僕たちの公演に出ていただいたときに、二次創作というか、演目をもとにジャンプしていろいろなところに飛んでもらうのはおもしろいねと言っていただいたので、怒られないと思います。
一同 (笑)
大原 なので、歌ってもらう可能性があります。
  ……がんばるわー。
北村 『あゆみ』をやろうと思ったきっかけ、いきさつってなに?
大原 2017年の8月になくなっちゃったんですけど、京都に「アトリエ劇研」というきれいなブラックボックスがありまして。そこがちょうど2014年に、ディレクターがあごうさとしさんという演出家の方に変わりまして。で、1年間のラインナップを組むという方針になったらしく、そこに「創造サポートカンパニー」という枠で劇団しようよを採択してもらったんですね。それで、劇団しようよが3年間、毎年1回ずつ公演するということが決まって。どういうことをしようかなと考えたときに、自分の書いた作品をやってもよかったんですけど、せっかくのブラックボックスという空間なんで、演出力を試したい、既成の戯曲を試してみたいなということで、企画を考え始めたんです。で、ふと柴幸男さんの『あゆみ』という女性ばっかりで上演する演目を、男だけでやったらどうなるかな? と、最初は「おもしろ」でスタートしたところがあったんですけど。
  『あゆみ』はもともとは劇王(※4)の枠組みで生まれたんじゃなかったかな。
大原 確かそうですね。それの、再演というか別のバージョンを大阪で観て、いつか男だけでやれたらおもしろいなと思ってたんです。

※3)柴さん
今回の『あゆみ』の作者、柴幸男。劇団しようよの『あゆみ』にゲスト出演したこともある。
※4)劇王
「上演時間は20分以内」「役者は3名以内」という制約が設けられた短編演劇コンクール。

ーその、男だらけの『あゆみ』が自分のなかでかっちりとハマったな、という感じになった?

大原 そうですね。そのときの興味とか関心とかにすごくハマる感じがあって。……どこまで話していいか難しいな。もちろん「おもしろ」だけにはしないと思っていて、男のひとだけでやるってどういうことかなと考えたときに、僕がすごく……父親になりたいなっていう妄想がありまして(笑)。将来娘がほしいなという妄想が強くてですね(笑)。それを元に何本か作品をつくったこともあったんですけど、そういう男の目線、というか、お父さんの目線が『あゆみ』の物語に存在したらどんなものだろう、というのが劇団しようよ版の『あゆみ』ですね。『あゆみ』って、「『あゆみ』ファン」のひとが観に来てくれるんですよ。

ー「『あゆみ』ファン」!

植村 いろんなバージョンの『あゆみ』があるから、それを観たいっていう。
北村 『あゆみ』が九州であるなら観たい、っていうツイートはこの期間で2件くらい見たかな。
大原 いろんなひとたちがやってる演目なので、演目自体のファンがいるみたいです。

自分の中にある「父親になりたい」みたいな妄想と出会えるんじゃないか(大原)

北村 劇団しようよでも『あゆみ』は何度かやってるけど、その変遷を聞かせて。
大原 2年前にアトリエ劇研の3年間がスタートして。毎年違う作品にチャレンジしてて、去年、柴幸男さんの別の作品で『TATAMI』(※5)というのがありまして。杉原邦生さんが2015年に上演された演目で、僕もすごく感動した作品で。それが死についての戯曲だったので、自分が2年前に『あゆみ』をやったときに、お父さんが女の子を育てるというか出会うというか、「赤ちゃんが産まれる」というところにフォーカスした作品だったので、『あゆみ』と『TATAMI』っていう2本セットにしたら面白いんじゃないかということで、去年の再演をしたんです。2017年の5月に京都で『あゆみ』と『TATAMI』をやりまして、『あゆみ』だけはすごく気に入った作品だったので、東京のアゴラでもやることができて、どうせだったら北九州でもやりたいなと計画してて、この年度末にやることがかなったっていう。
北村 「どうせなら北九州でやりたかった」っていうのはどうして?
大原 2012年の11月にアイアンシアターで、「えだみつ演劇フェスティバル」という枠組みで、当時市原さん(※6)がディレクターをやられてたときに運良く呼んでいだだけまして。当時は旗揚げ2年目だったんですけど、ツアーをできて、ものすごく観客のボキャブラリーの違いというか、観客が大事にしていることの違いを感じて。北九州のお客さんに作品を観てもらったときに、「あ、こういうところに関心があるんだ」とか「あ、こういうところが大事なのか」とか、見られるポイントが全然違うことに感動しまして。他地域でやることで、自分たちの作品の違う面が見られるんじゃないかというのがすごく楽しいなって。それで北九州ではまたやりたいとずっと思ってました。

あ、あと、北九州のお友達で、ブルーエゴナクの穴迫くん(※7)が頻繁に京都に来てくれてたというのもあって、いい俳優さんがいるとかどういう劇団がいるとか、すごく北九州にアンテナを張ってたこともあって。北九州はすごく好きな地域のひとつですね。

※5)『TATAMI』
2015年に上演されたKUNIO12『TATAMI』。脚本を柴幸男が、演出・美術を杉原邦生が務めた。
※6)市原さん
市原幹也。当時枝光本町商店街アイアンシアターの芸術監督を務めていた。退任後、全国各地で演劇活動を行っていた。後述の「のこされ劇場≡」の主宰でもある。
※7)ブルーエゴナクの穴迫くん
北九州を拠点に活動する「ブルーエゴナク」の代表、穴迫信一。ブルーエゴナクもアトリエ劇研サポートカンパニーに選出され、2015〜2017年に京都公演を継続的に行った。

北村 あなた(藤本)がいない間に進行しとったよ。

ー録音されてるし、いいかと思ってトイレに行ってました。

  だいぶいい話が聞けましたよ。

ーじゃあ、今日来るはずの葉山さんがまだ来てないけど、ここで終わっていいか!

一同 (笑)

ーあ、じゃあ、なんで泊さんに出てほしいと思ったのか聞いとこう。なんでですか?

北村 並びにはやまん(葉山)も。はやまん少なめで、8:2くらいで。
大原 『あゆみ』ってみなさんご覧になったことあります? 女の子の一生を追いかける物語で、少女が成長して、母になって、おばあちゃんになって……みたいな作品なんですけど。その演目の普遍性というか、演目の中に「あ、私もあのポジションにいるな」みたいなものを見つける、という作品なんです。劇団しようよ版は、男性が見た主人公「あみちゃん」の物語というか。もうちょっというと、お父さんがあみちゃんの成長をずっと見ているというところにフォーカスできたら、自分の中にある「父親になりたい」みたいな妄想と出会えるんじゃないかと考えてまして。

左から、泊篤志(飛ぶ劇場)と大原渉平(劇団しようよ)

左から、泊篤志(飛ぶ劇場)と大原渉平(劇団しようよ)

大原 初演の2015年のときは、アトリエ劇研のディレクターのあごうさん就任1年目だったので、就任記念みたいな感じでぜひあごうさんにも出ていただこうと思って、なおかつあごうさんはその当時ちょうど結婚されて、新婚さんだったので。僕も出てたんですけど、僕の「いつかお父さんになりたいな」という妄想を、本当にお父さんになる可能性があるかもしれないあごうさんと演目中にしゃべる、というのを1回作ってみたんですね。そこで自分の「父親になりたい」みたいな妄想と、「実際はどうなんだ」みたいな……、たとえば向こうのお父さんにご挨拶に行くのって実際どんな感じなのかみたいなことを演目中に話したりして。そういうゲストみたいな感じで出てもらって、公演が終わったときに自分としてもすごく充実した演目になったんです。「これは東京でやるんだったら柴さん本人に出てもらいたいな」と思って、で、「北九州でやるなら泊さんに出てほしいな」と思ったりしたんですけど。
  はははははは!
大原 「パパに出てもらうとすごくおもしろいのかな?」って。
植村 そのときは柴さんって……
大原 まだパパじゃなかったです。
植村 みんな後からパパになっていった。
大原 実際に「お父さん」をやってるひとと僕がしゃべることで膨らむところもすごくあったので。ちょうどそのときに泊さんが……
  「お父さん」になってたから。
大原 それでオファーさせてもらった。「泊さん」であり、ひとりの「パパ」としてオファーさせてもらったというのは大きい気がします。Facebookでずっと泊さんの(娘の様子をアップしている)投稿を見ながら。
  「いいね!」とか何もしないのに! 見てたんだ!

ーじゃあ泊さんがずっと独り身だったらこのオファーはなかったのか……。

大原 そうかもしれませんね。

ー泊さんの演技を見たわけでもないのにオファーしようと思ったのがすごいですね。

大原 2016年の7月に、飛ぶ劇場が『睡稿、銀河鉄道の夜』という演目を京都で上演されたときに、僕もゲストで出させてもらって、そのときに初めて泊さんとお話をさせていただいて。その前にも2012年の公演の際に、ワークショップのときにご挨拶だけはさせてもらってたんですけど……ちょっとトイレ行ってきていいですか。

ーどうぞ。この間、なにか質問ある方どうぞ。

劇団しようよは「私の手で売り出したい!」って思っていた(植村)

森國 植村さんはいつから劇団しようよに関わってるんですか?
植村 しようよは制作として関わってるのは2年前から。もともと劇団衛星が自分たちのアトリエ的なスペースとして「KAIKA」(※8)というのを持って、そこで、「gate」というショーケースイベントをやってたんですね。そのある回で、しようよが参加して、その回っていうのがさっき話に出た市原さんがやられていた「のこされ劇場≡」も参加してて、そこから、しようよがえだみつの演劇フェスに出るっていうのにもつながったんですけど。
一同 ほおー。
植村 そこで初めて劇団しようよを知って。で、パフォーマンスを観に行って、「ここやりたい!」って思ったんです。それが5年前くらいの話かな。そこから数年間は、KAIKAとしてサポートするという形で劇団しようよに関わってて、2年くらい前から制作になりました。

※8)「KAIKA」
京都市下京区岩戸山町にあるアートコミュニティスペース。NPO法人フリンジシアタープロジェクトが運営を行い、劇団衛星はここのフランチャイズカンパニーにあたる。同カンパニー代表の蓮行が芸術監督を務め、「gate」のほかに、「made in KAIKA」「imported to KAIKA」「supported by KAIKA」という形で、さまざまな作品を上演している。

ーなんで劇団衛星で長年制作やプロデューサーをやられている植村さんが、新しく別の劇団の制作もやられるようになったのか。最初にその話を聞いたときにはびっくりしたんですけど、その理由を教えてください。

北村 外のカンパニーの制作をするのって初めて?
植村 初めてです。しようよの公演を観てすぐに、「やりたい!」って思ったんです。「KAIKAから売り出したい!」って思って。

ーあ、最初は「KAIKAから」という気持ちだったんですね。

植村 そのときは私は「KAIKAのひと」だったから。いずれにせよ「私の手で売り出したい!」って思っていたんですね。そこからKAIKAに大原くんだったり他の劇団員だったりがスタッフとして関わって、一緒に仕事してる時期が3年くらいあって。KAIKAとして応援している劇団の一つだったのですが、そのあと、いよいよ制作として参加するようになりました。
北村 シンプルに、彼の作品をやりたいと思ったんだ?
植村 そうです。制作で入る前にひとつの公演を「制作協力」という形でサポートしたことがあったんだけど、「それじゃなんにもできないな」と思ったんですよ。なのでその公演が終わった時点で、「次の公演から制作をやらせてください」って言ったんです。
森國 おねえちゃん……! よろしくお願いします!

(大原が戻ってくる)

北村 そういう申し出があったんだ。
大原 そうですね。

ー「めっちゃ年上やしなー」ってなりませんでした?

北村 「断れへんわー」。
植村 (笑)
大原 (笑)でも劇団としても路頭に迷っている時期だったんで。旗揚げからずっといっしょにやってたドラマトゥルクの人間がいたんですけど、ドラマトゥルクの彼が事実上制作もやってて。でもその彼が、ある公演が終わってから辞めることになって。……大失敗した公演だったんですけど。
植村 その彼がいたころは私はまだ制作協力として参加していて、彼のサポートをして、他にお手伝いの制作さんもいるっていう形だったんだけど。でも、彼が辞めるっていうのを知る前から、「よし、次の公演からは制作をやろう」って思ってたから。だから、「制作をやる」っていう話は、そのドラマトゥルクの彼に最初にしてた。
大原 僕としては、彼がいなくなって藁にもすがる思いで……。
北村 今後どうしようかなと思ってたタイミングだった。
大原 そうですね。
植村 外から見たら、彼が辞めて私が入ったみたいに見えるんだけど、私はそんなつもりは全くなくて。彼は本来ドラマトゥルクがメインで制作じゃないから、私が制作を引き受けて、彼にはドラマトゥルクをやってもらおうくらいのつもりだった。
森國 そこまで自分が売り出したいって思えたのはどこに要因があったんですか?
植村 自分でもよくわからないんだけど……。当時、作品を観た感想を彼らに伝える時に「緻密だね」っていう言い方をしたのを覚えているんだけど。その頃、しようよは、路上パフォーマンスを続けていて、その集大成として一つの公演をやるっていうことをやってて。その後も、習作をいくつか作って、最終的に本公演をするっていう作り方をしてるんですけど。路上パフォーマンスとかって、若いカンパニーが勢いとかノリでやってるっていうこともあるじゃないですか。劇団しようよはそうじゃないな、緻密な積み重ねが作品になってるなって当時思って。
大原 それをやるしか生きる方法がなかったんですよ。
植村 それと。路上パフォーマンスをしてて、劇場に観に来てくれる、自分たちを求めてるお客さんの前だけでなく、見ず知らずの人たちのところにこっちから行ってたことで、そこで培われた演劇人としての強さを信頼できるなと思って。
森國 感激しました。ありがとうございました。
北村 うち(kitaya505)が近年やらなくなったスタイルだよね。

—まあ、弊社は惚れ「込まない」ようにはしてますね。

北村 そうそうそう。

—ここは書かんどこ。

一同 (笑)

葉山さんは包容力! 包容力がある!(大原)

—葉山さん来ませんね。来ないうちに、「葉山のどこがいいと思ったのか」を聞いとこう。

  なんで葉山なのか。
大原 僕葉山さんをあんまり舞台上で観たことが……
森國 観たことがないからいいと思った?
大原 あ、いや、厳密には共演してないですけど、さっきの話に出た『銀河鉄道』でいっしょにやらせてもらって。僕あんまり舞台上でどんなパフォーマンスをするかってそんなに大事にしてなくて、むしろ日常でしゃべってるときに「あ、こんな感じでしゃべんねや」ってところを大事にしたいと思ってるところがあって、
植村 あ、噂をすれば。

(と、葉山太司と守田慎之介がやってくる)

増えた……

増えた……

—もりしん! もりしんじゃないか! 横のひとは誰かわからないけど。

大原 葉山さんにやってもらう役がお母さんの役でして。初演で金田一央紀さんっていう京都の俳優さんがやってたんですけど。葉山さんに懐の広さというか、
植村 お母さんっぽさとか。
  『銀河鉄道』でお母さんやってたしね。
大原 そうでしたね。あと、飲み会で急に抱きつかれたりとか。
  あーーー。
葉山 包容力ね。
大原 包容力があるなと思って。それで葉山さんやなと。そこは全然迷いがなくて。
植村 最初から「はやまんで」って言ってた。
大原 この北九州の再演に向けてキャスティングがいろいろ変わってるんですけど、葉山さんは唯一迷いなく即決で。
植村 金田一くんが出られないっていう時点で、「はやまんだね」って。
葉山 ……いままでなんの話をしてたの?
  だいたい終わった。
植村 なんではやまんをキャストにしたかはもう終わった。
葉山 終わったの?
北村 「なんとなくよかった」って。
大原 (笑)いやいや!
北村 ざっくりそうでしょ?
大原 ま、そうですけど……。

—「俳優としては別にそうでもなかったけど、雰囲気がよかった」。

大原 そんなことないですそんなことないです!
植村 舞台上はそうでもなかったけど。
  普段の感じがいい。
大原 包容力! 包容力がある!
北村 京都に来た感じがよかった。
葉山 なるほどね。俺はもう袖で仕事するよ。
北村 でも出演オファーは迷いがなかったって。
葉山 へー。木村(※9)でもなく。
  木村じゃないんだって。
大原 あの役は木村さんじゃなくて葉山さんやなって。
葉山 木村…………いや、書かれるからあんまりしゃべらんどこ。

※9)木村
飛ぶ劇場の俳優、木村健二。葉山と同じく『睡稿、銀河鉄道の夜』に出演。

「宮沢りえか葉山か」とか言われよったわ昔(葉山)

全員だいぶ酔ってきた

全員だいぶ酔ってきた

森國 稽古はいまやってるんですか?
葉山 なんの?
植村 あ、はやまんはまだ京都に来てない。
葉山 大丈夫なんかな。
森國 公演はちょうど1か月後ですよね。
大原 そうですね。
植村 はやまんは直前合流なんです。
大原 3月から。
  それで大丈夫?

—はやまんは100ページくらい次の日に覚えられるもんね。

葉山 すぐ覚えられる。

—「宮沢りえか葉山か」っていうくらい。

葉山 そんなん言われよったわ昔。
  嘘つけ(笑)。
葉山 もう合流したい。
植村 来てもいいよ。
  台本もらったの?
葉山 もらってない。
大原 実はいまめちゃくちゃ悩んでまして。劇団しようよ版の『あゆみ』は、『あゆみ』のいろんなバージョンを読み比べてエディットして上演台本を作ってるんですけど、それを1回見直そうと思って、いま稽古場でああでもないこうでもないっていうのを繰り返してて……。

—そろそろ書き起こしのことを考えると吐くなっていう時間になってきたので、最後に葉山さんに、「動員200行きます」みたいな意気込みをいただければ。

葉山 動員800行きます。
一同 (笑)
植村 1回400人入れなあかん。アイアンシアターに。
葉山 入らんなー。がんばって演劇がしたいなと思ってます。ずっと北九州で。
大原 しかも北九州は今年もう1回来るんですよ。

—そうだ! 明日『パフ』のオーディションだ! その話も聞こう! マジか……ここからまた1時間あるなー。

大原 3月は『あゆみ』で来させてもらいますけど、4年前にやった劇団の代表作で『パフ』っていうのがありまして、それで秋に京都・東京・北九州・沖縄の4都市を回ろうと思いまして。なので、劇団しようよは案外またすぐ来るんですけど。それもあるのでしっかりがんばりたいなと。

沖縄ツアーを特別無茶なことだと思ってない

—そうだ、今日聞きたかったことを思い出した! なんで地方公演にこだわるのかっていうことを聞きたい。

大原 さっきキョロちゃんさん(※10)に若干しゃべったんですけど、
  (笑)キョロちゃんさん!
森國 キョロちゃんさん。
  新鮮やなー。

※10)キョロちゃんさん
インタビュアーの藤本は「キョロちゃん」という名前でツイッターをやっており、初対面のひとからも「キョロちゃんさん」と呼ばれることが多々ある。

大原 地方のひとのボキャブラリーがほんとに自分を救ってくれるなって思ってまして。「俺たちの演目をこんなふうに語ってくれるのか」っていうのを、6年前に北九州に来たときにも感じましたし、定期的に東京公演をがんばってやってますけど、東京のお客さんにも感じますし。もちろん京都のお客さんにも感謝してますけど、自分たちでも思ってなかった作品の「像」を教えてくれるなと思って、やっぱり他地域の公演は継続的にやっていきたいなと思ってますね。

—今度のツアーは劇団しようよ史上いちばん大変ですよね?

植村 今までのなかではいちばん大変ですね。
大原 今まで2都市しかやったことなかったので。それが4都市になるので。
北村 沖縄ですよ。
森國 沖縄をいきなり組み込むのって珍しいですよね。
植村 沖縄にアトリエ銘苅ベース(※11)っていう新しい場所ができるっていうのをたまたま知って、そこが提携カンパニーの募集をしてたっていう縁もあって。
大原 初めは正直沖縄は計画に入ってなかったんですよ。
植村 いくつか候補として5〜6か所考えてたんだけど、
大原 沖縄は応募したらいちばん最初に決まりました。
植村 応募で結果が出るから、日程がフィックスになったいちばん最初が沖縄。
大原 『パフ』が島の物語というか、島から逃げる話なので、沖縄すごくいいなあと思って。

※11)アトリエ銘苅ベース
那覇市銘苅に2017年夏にオープンした、約100席の劇場。

植村 ツアーするっていうことを考えるときに、沖縄が他の都市と比べてハードルが高いっていうイメージが正直まったくなくて。飛行機乗るけど安いので。

ー運搬とか大変じゃないですか?

植村 発送に余分に1日かかるとかいうのはあるけど。みずき(藤本)がこのツアーを「無茶だ」って言ってた(※12)のに、私も最初は「無茶かなあ」と思ったけど、渉平くんも「無茶って言われるんですかねえ?」って言ってて。だから無茶だと思ってないのよ私ら。

※12)みずき(藤本)がこのツアーを「無茶だ」って言ってた
藤本は以前ツイッターで『パフ』のツアーに触れ、制作的な観点から「無茶だ!」とコメントしていた。

ーでも海外ですよ!

北村 やってみないとわからないんじゃないかな。
植村 沖縄だからしんどいっていうのは私はないかな。
北村 ていうか僕は……

ーちょっと待った! これちょっと制作寄りなので、mola!の読者が置いていかれるやつなので、詳しい話は後で後で!

守田 ははははは。(※13

※13)守田 ははははは。
ここまで書き起こしにはあまり出てきていないが、ちゃんといた。

20年ぶりに舞台に立つので、生き様を見てほしい(泊)
北九州でつながってきたものと、京都でやってきたこととがミックスして出せる最初の公演(植村)
ログを重ねていって、北九州でも活躍できるカンパニーになりたい(大原)

ーじゃあ、全員いい感じに酔ってきたのでまとめに入りましょう。意気込み的なものを一言ずつお願いします。でもここで締めるともりしんが来たっていうのが記事にならないんだよな……。

守田 (笑)いいっすよ俺は。
葉山 意気込み? がんばりまーす。楽しみです京都。超楽しみ。
  京都じゃないよ?
葉山 京都稽古ね。
  泊枠とは違うから。ちゃんと台詞あるから。

ー葉山さん別にぶっつけでよくない?

一同 (笑)
守田 ぶっつけ弱いの意外と。
葉山 いつの話してんだよ!
  意外と弱いんすよ。
葉山 ああもう弱いっていうことにしとこ。そりゃだって急に知らんひとと「はじめまして」っつってねえ……。

ーじゃあ次は泊さん。

  20年ぶりくらいに、リーディングじゃない舞台に、一応立つので。生き様を……(笑)。
北村 言った言った言った!
一同 (笑)
  生き様をね(笑)、見てほしいなと。

ーじゃあ植村さん。

植村 久しぶりに北九州に公演でちゃんと来られるっていうのが個人的には大きくて、それを劇団しようよといっしょにやれるっていうことが、今後にいろんな意味でつながっていくと思うので、そしてそれを飛ぶ劇場のみなさんといっしょにやれるのが私自身すごくうれしいです。私が北九州とのご縁でつながってきたものと、京都でやってきたこととがちょうどミックスして出せる最初の公演になるだろうなあと思ってるし、それが来年度以降のツアーとかにもつながっていく、そういうものにしたいなあと思っています。と言いながら、今回1日2公演しかやれないので、その日に来られるひとにしか見てもらえないのがすごく残念だけど、来れるひとはぜひ観に来ていただければと思っていますので、よろしくお願いします。

ー最後に大原さん。締めを。

大原 はい。がんばりたいと思っています。劇団しようよがいま8年目になってきて、徐々に僕の舞台芸術の関心ごと、興味のあることが移り変わってきてて、去年『あゆみ』をやったんですけど、いままたさらに形を変えたいなといううずうずした気持ちと、どう変えたらいいのかっていう課題に悩まされている最中で。東京とか京都でやったことと同じものが北九州に来るわけじゃなく、まぎれもなく最新形が来ると思ってほしいなと思っております。今いちばん自分が納得できるものを持ってきたいと思いますし、これから劇団しようよがやっていきたいこともやりたいと思うし。さっきの、「なぜ地域でやりたいか」にもつながるんですけど、北九州で劇団しようよが何をしようとしているかっていうと、ログを重ねていきたいと思っているんです。北九州でも活躍できるカンパニーになりたいと思っているので。ぜひ目撃していただいて、「次、劇団しようよはいつ来るのかな?」と楽しみに思ってもらいたいと思っております! よろしくお願いします!
葉山 こんな真面目やったっけ?
北村 mola!は真面目よ!

感激した森國さん、その場で『あゆみ』のチケットを買う

感激した森國さん、その場で『あゆみ』のチケットを買う

左から、葉山太司(飛ぶ劇場)、植村純子(劇団しようよ)。これほんとに大丈夫ですか?

左から、葉山太司(飛ぶ劇場)、植村純子(劇団しようよ)。これほんとに大丈夫ですか?


出演は、門脇俊輔(ニットキャップシアター/ベビー・ピー)、土肥嬌也、高橋紘介、髭だるマン(爆劇戦線⚡和田謙二)、安達誠、葉山太司(飛ぶ劇場)、藤村弘二、吉見拓哉、大原渉平、泊篤志(飛ぶ劇場)。音楽は吉見拓哉。

チケットは、一般前売2,300円(予約・当日2,800円)、25歳以下前売2,000円(予約・当日2,500円)、高校生1,000円。「予約」は当日精算。e+、劇団ウェブフォームでの取り扱い。

お問い合わせは劇団しようよgkd_444@yahoo.co.jp、075-276-5779(フリンジシアタープロジェクト内)まで。


劇団しようよ『あゆみ』北九州公演

作:柴幸男(ままごと)
構成・演出:大原渉平
音楽:吉見拓哉
日時:2018年3月24日(土)11:00/16:00
会場:枝光本町商店街アイアンシアター(北九州市八幡東区枝光本町8-26)
料金:一般前売2,300円(予約・当日2,800円)
   25歳以下前売2,000円(予約・当日2,500円)
   高校生1,000円

【関連サイト】
劇団しようよ『あゆみ』北九州公演詳細ページ

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※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。

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