インプロ北九州代表・亀井琴絵インタビュー
2018年末、北九州に突如インプロを行う団体「インプロ北九州」が発足した。「即興」を意味するインプロは、ワークショップなどでは取り組まれることはあるものの、北九州ではインプロを専門に取り組む団体はほとんどない。今回、インプロ北九州発足の経緯を、代表の亀井琴絵に聞いた。
―「インプロ北九州」はどういう活動を行う団体ですか?
インプロ北九州は、2018年に「即興パフォーマンスを北九州で継続的にやっていきたい!」という思いから立ち上げた団体です。「そもそもインプロってなに?」という方も多いと思いますが、インプロとは英語で「improvisation(インプロビゼーション)」の略で、直訳すると「即興」です。インプロというと、日本では多くの場合「即興芝居」をイメージされることが多いですが、インプロ北九州では演劇に限らずダンスや音楽、アートなど、表現手段は問わずに、「集まった人がその場でやりたいことをできる場」を作りたいと思っています。
私が演劇を主にやってきたので、当分の稽古内容としては
・インプロ・ゲームと呼ばれる即興劇のトレーニング
・短いシーンを演じ、参加者みんなでフィードバック
が主なものになります。
稽古は日程や場所が決まれば公式ツイッター等でオープンに告知し、年齢・性別・経験など一切不問で、どなたでも自由にご参加いただけるシステムです。稽古に参加してくれているのは、劇団で活動している方、高校で演劇部に所属している方、演劇を観るのが好きで面白そうだから来ちゃったという方など、本当に毎回さまざまです。なので、団体の稽古というよりは、私個人が毎回ワークショップをしている、みたいな形になっています。
現在、「メンバーとして関わりたい!」と名乗り出てくれている人は複数名いてくださるのですが、なぜかみな北九州在住ではなく、なかなか稽古に来られない方たちばかりなので、明確な組織体制はまだ話し合えていません。しかし、「めちゃくちゃ大きなインプロ団体にしてやろう!」なんて気は一切なかったのですが、思ったより活動範囲が広がりそうです。なので、どんな形でもいいのでインプロ北九州にコミットしてくれる方、マジで募集中です!
―そもそもインプロの団体を設立しようと思ったきっかけはなんですか?
自分語りが入ります、お許しくださいませ。
私がざっくり表現活動と呼ばれるものを始めたのは、市民ミュージカルへの参加がきっかけでした。そこで演劇をしている人たちと出会い、北九州に拠点を置く劇団C4に入団したのが約3年前。そこでは主に北九州を舞台にしたお芝居をやっていましたが、合間に他の劇団に客演したり、演出助手のような形で関わらせてもらったりしていました。
割といろんなパフォーマンスに触れたり見たりすることが多くありましたが、エチュード(即興芝居の練習)に関しては苦手意識が強くありました。やるときは「面白いことをしないといけない」、見るときも「ああ、この人いろんなアイデアが出てきてすごいなあ、自分まだまだだなあ」みたいな考えがめぐって、素直に楽しめなかったのです。
そんなとき、即興パフォーマンス集団「ロクディム」のメンバー、りょーちんさんのワークショップを受ける機会がありました。そこで、「あまり身構えて面白いことを考えるよりも、その場で相手が言ったことに素直に反応するだけで豊かなシーンが生まれるんだな」と感じて、即興芝居って怖くないものなんだな、と安心した記憶があります。
そこから月日が流れ、2017年末に劇団C4を退団し、2018年の年明けを迎えて「さて、これからどうお芝居をしていこうか」と悩んでいた時期。ロクディム所属のカタヨセヒロシさんが2泊3日でワークショップを行い、最終日に参加者が発表公演を行うという九州俳優の会主催の企画に参加しました。他の参加者は、今まで客席からしか観たことのなかった、九州を拠点として全国で活躍する俳優さんたち。私は「同じ舞台に立つなんて恐れ多いな……」と思っていました。やはり、即興芝居となると経験がある人たちの方が面白いアイデアをポンポン出してくるだろうけど自分はそんなことできないし、みたいな感情があったのだと思います。
しかし、顔合わせの時にその第一線で活躍しているような俳優の方たちが「インプロを基礎から学んだことはないから、ゼロから学ぶ気持ちでいる」と宣言して取り組む姿を見たり、めちゃくちゃ緊張迎えた本番でもいろんな試行錯誤をしたり、ペーパーズ(お客さんからもらった言葉を台詞として用いる手法)の言葉に助けられたりしながら、最後には大団円を迎えるという体験をして、即興パフォーマンスというものに対する興味がぐっと湧きました。
演劇というものに接点がないひとに表現活動をしていることを話すと、「役者してるの? 変わってるねー」とか、「セリフ覚えて舞台の上でしゃべるのって緊張しない? 私には無理」という言葉をもらうことがあります。そしてわりと変人扱いされることもあります。……私だけかもしれませんが。でもそれって、稽古をしている、作品を創っている現場を観る機会がなかなかないことがひとつの要因である気がしていて。舞台の上にある作品は、「こんな長いセリフ覚えられねーよ!」とか、「なんでこの役者はそこでそんな芝居しかできねーんだよ」とか、「そこに立ったら照明当たらないよ……」とか、おのおのの思いがもみくちゃにされたものが整理されて提示されたものだと私は思っています。
私は稽古中、「このもがいている姿が愛おしいな」と感じることがあります。もちろん、舞台作品として上演されるものに関しては、お客さんはその完成された姿を楽しみに来られるのだと思います。しかし、その場で出演者やミュージシャンや音響照明のスタッフがアイデアを出し合って創っていく過程を観ることができる、なんならお客さんもそこに参加できる、という点で即興パフォーマンスが有効な手段だと思い、インプロ北九州という団体を立ち上げました。
―今後の予定や目標を教えてください。
活動としては、「ワークショップ」と「パフォーマンス」の二本立てで構成していけたらと思っています。
ワークショップは現在月1〜2回のペースで、小倉近辺でどなたでも参加可能な稽古を行っています。今後、人が集まるようであれば、開催日を増やしたり、場所も広げていきたいと思っています。また、他のインプロ団体と合同で稽古をしたり、NPO法人や社会福祉関係の施設などでワークショップをしたりという方向でも動いています。
もうひとつのパフォーマンスについてですが、2019年中に一度は、即興パフォーマンスの公演を行いたいと考えています。北九州で活動されている役者さんをお呼びして、ミュージシャンの人に即興で弾いてもらって、お客さんには設定やお題などのアイデアを出してもらったりペーパーズで参加してもらったり……などと考えています。
と言ってもこれらは私の野望、展望、希望、切望です。全てを実現できるほど自分が余裕のある人間ではないということに最近やっと気づきました。少しでも即興パフォーマンスやワークショップに興味のある方、関わっていただいていろんなアイデアをもらえると嬉しいです。私と繋がっている方は個人宛にでも構いません、一度ご連絡いただければ幸いです。
―最後に一言お願いします!
三人寄ればなんとやらと言いますが、面白いことをしていくには多くの人が関わってくれた方がいろんなアイデアが出て楽しいと思います。「自分はアドリブ苦手だから……」という役者の方、「お芝居とかしたことないから……」と表現することにためらっている方にこそ来てほしいです。一緒に楽しみましょう、その気持ちだけで十分です。
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