直撃!「劇トツ×20分」の攻略法!
北九州芸術劇場(北九州)の短編演劇バトル企画、「劇トツ×20分」2019が現在出場団体を募集している。
「上演時間は20分以内」「新作」「登場人物は3人まで」といった条件のもと、短編を競い合う人気企画「劇トツ×20分」。今年7月14日(日)に同劇場の小劇場で行われる本戦に向け、すでに2連覇を達成している劇団ヒロシ軍(長崎)に挑む4団体を募る。ヒロシ軍が前人未到の3連覇を達成するのか、はたまた他の団体が連覇を阻止するのか。今回の「劇トツ×20分」は注目を集めること必至となりそうだ。この企画の立ち上げから関わる北九州芸術劇場のローカルディレクター泊篤志に、ズバリ、「劇トツ×20分」の攻略法について話を聞いた。
ー「劇トツ」ももう6年くらいやってるんですよね。
稽古場でやった初回から数えたら、過去に6回やってるね。
ーこれまでずっと「劇トツ」を見てきた泊さんに、今日は聞きたいことがあるんですけど。
なんでしょう。
ーぶっちゃけ、「劇トツ」って勝ち方あるでしょ、っていう。
ないよ(笑)。
ーいやいやいや、あるでしょう。もったいぶらずに教えてくださいよ。
ないよ。
ー勝ち方っていうとアレですけど、コツみたいな。
コツ?
ー勝負に挑む上で、ここを押さえておくといいよ的な。
あー。
ーそういうのをmola!にね、教えてくださいよと。
コツっていうのとちょっと違うけど、「劇トツ」ってやっぱり観客投票の行方が大きいじゃないですか。「劇トツ」は観客票と審査員票の割合が大体2:1になってるのかな。審査員が気に入ったものに票をドバッと入れるって可能性もあるけど、やっぱり観客の心をつかんだところが勝つ、っていうのは間違いないかな。……まあよく考えると当たり前のことなんだけどね。
ー審査員の顔色を伺うよりも、観客を楽しませることを考えたほうがいい、と。
そう。20分っていう時間は結構くせもので。ワンアイデアだとちょっと物足りない感じがするし、でももうひとつ盛り込もうとすると「なんか盛り込みすぎだよ」みたいな雰囲気もあるし、その按配がむずかしいかなーって思ってるけど……でもヒロシ軍とかたぶんそんなこと考えてないんだよね。
ー(笑)
前回のヒロシ軍は、事前に台本を送ってもらった時点では正直優勝するとは思ってなかった。でも本番ではいちばん観客の心をつかんだんだよね。「ヒロシ『軍』って、ヒロシ『君』やん」って思わせて、観客がヒロシくんに心を持っていかれてるなっていう。それは理屈じゃないんだよね。だから今年は、そんな「理屈じゃないヒロシ軍」に誰が理屈で勝つのか? っていうのを期待してる。
ーおもしろい回になりそうですね。
去年2位が非売れ(※1)だったのかな。非売れさんはカッチリ作ってきてて。「今回非売れが優勝だと思ったんだけどな」っていう声をこれまでも何回か聞いてきたんけど、優勝するにはなんていうか「突破力」みたいなのが要るんだろうなあとかも思うし。エゴナク(※2)も勝ちを意識したつくり方をしてくるけど、あそこも自分のところの本公演ではちょっと尖った表現をするじゃないですか。「劇トツ」ではそのハードルをだいぶ下げてて、尖った部分も見せつつ、でも老若男女が共感できそうなテーマをちゃんと描いてくるっていうのは、あれは計算でやってるんだろうなあ。「劇トツ」用の作品を作っている、という。
(※1)非売れ 福岡の劇団、非・売れ線系ビーナス。「劇トツ」には初期から参加しつづけ、緻密につくられた作品は観客票を多く得るも、いまだ優勝に至っていない。今年1月には、「劇トツ」で上演した作品などを一挙上演する番外公演『ハイザンヘイ』(敗残兵)を実施。 (※2)エゴナク |
ーそれに比べると、ヒロシ軍はどんなサイズでも「荒木宏志!」というのを見せる印象がありますね。
ちょっと前の、「人肉饅頭をずっと歌い続ける」(※3)みたいな。あれはウケてたけど得票にはつながってなかった。でも、ヒロシくんが変わってきてるのは感じる。やってることは変わってなさそうに見えるけど、「人肉饅頭は伝わらないんだ、じゃあどういうことだったら伝わるのか?」みたいなところをちゃんと微調整してきてると思う。そういうのはたぶん「劇トツ」なんかで闘いながらちょっとずつ身に着けているような気がする。……「自分の魅力にちゃんと気付いた」みたいな。言い方はクサいけど。去年はそういう微調整がうまく行き始めてるっていう気がした。
(※3)「人肉饅頭をずっと歌い続ける」 劇団ヒロシ軍は「劇トツ」初出場時、『ヌカルマ』という作品を上演。劇中で「人肉饅頭」という歌詞を叫び続けるシーンがあり、観客投票最下位という結果を迎えた。 |
ーヒロシ軍3連覇、行きますかね。
語弊を恐れずに言うと、3連覇はしてほしくないね。
ーしてほしくない! ほう!
というか、なんていうか、「ひとつの劇団が3連覇」って、演劇シーンとしておもしろくないでしょ。「劇トツ」は3連覇を達成すると卒業っていうルールになってるので。ヒロシくんにはそうやって晴れ晴れしく卒業はしてもらいたくない(笑)。
ー(笑)書いていいのかな。
書いて書いて。ちゃんと誰かにヒロシ軍を倒してほしいってことだから。そうやって次々と新チャンピオンが現れて新陳代謝があった方が、演劇シーンとしてはおもしろいから。
ーそうか。それで、ですよ。どうしたらヒロシ軍を倒せるのか。
うーん……。リハーサルが事前に各団体45分ずつ与えられるんだけど、リハの時間の使い方はもちろん重要。いかに短い時間で照明・音響を合わせて、いわゆる「場当たり稽古」ができるのかっていうのは、経験値にもよるんだけど。ちゃちゃっと合わせて、「じゃあ頭から1回通してみようか」みたいなことをやれる劇団の方が強いなっていうイメージはある。「照明が、音響が、あっあっ、間に合わないごめんなさい、通し稽古できません」みたいなところは見ててハラハラするし、そんなにいい成績を残してない気はするかな。でもそれって普段のスタッフワークとの付き合い方が出てくるじゃない。特に「劇トツ」は短い時間で仕上げないといけないし。いろんな劇場でいろんな条件でやってきているところは、そのへんをスッとやれて、「あ、ここにこだわりすぎると時間がなくなる」みたいな計算ができる。そういうところは強いなあとは思う。
でもそこはあくまでも「総合力」部分であって、総合力があれば勝てるのかっていうと、そうではないから。エゴナクも初めて「劇トツ」に出たときは、やりたいことが多すぎてリハの時間が足りなくなってたけど、そういうのを経て、小劇場でやっても課題を短時間でクリアできるようになって、優勝までしちゃったからね。
ーそうですね。
だから、「劇トツ」に出ようかなと思ってる団体のひとたちには、まず本番を観に来てほしいかな。
ーあー、そういう結論になるのか。
これまで意外と「劇トツ観たことはないけど応募してみよう」って言って応募して、順位低くてなかなか二度目に挑んでこないっていう団体が結構あって。「なにも知らない」ではなかなか勝てないと思うんで、興味のある劇団はまず1回観に来て、「ははあ、こういうところが勝つんだな、負けるんだな」とか、「照明・音響はこれぐらいやっていいんだ、ここまでシンプルでも中身がしっかりしていればちゃんとボリュームは感じられるんだ」みたいなことを感じてほしい。そしたら傾向と対策が見えてくるんじゃないかな。
ーそれだと今年じゃなくて来年以降の応募になっちゃうな……。
(笑)あ、だから、これまで1回しか応募してきてないとか、1回出場して負けたとか、そういうところにはもう1回挑戦してほしい。「1回経験して、わかったことあるやろ?」っていう。1回出て、向いてないと思ってやめちゃうのはもったいない。今年は「ヒロシ軍を倒せそうかどうか」がいちばんの選考の基準になると思うんで、「劇トツ」を1回でも経験して、なにかをつかんだ団体は、迷わず応募してほしいかな。
ーじゃあ、「劇トツ」に挑む上でのコツとしては……
「自分たちのつくってるお芝居を、20分でいかにお客さんに届けるか」っていうことをきちんと考える。それに尽きますね。とはいっても、まずは応募してもらわないと勝つも負けるもないので、とにかくまず挑戦してみてください。
ーありがとうございました。
上演作品の条件、応募資格等は、募集チラシや北九州芸術劇場サイトを参照のこと。締め切りは4月8日(月)必着。
お問い合わせは北九州芸術劇場093-562-2620まで。
【関連サイト】
北九州芸術劇場「劇トツ×20分」2019 参加団体募集詳細ページ