ガラパ15周年!川口大樹・西山明宏インタビュー
今年結成15周年を迎える万能グローブ ガラパゴスダイナモス(福岡)。4月19日(金)〜21日(日)には福岡市中央区大濠公園の福岡市美術館 ミュージアムホールで『溺れるクジラ』(作・演出:川口大樹)の凱旋公演を、5月2日(木)~6日(月)には若手メンバーによるユニット・こわせ貯金箱の第2回公演『ラッキーフィッシュと浮かぶ夜』(作・演出:川口大樹)を福岡市中央区唐人町の甘棠館show劇場で上演する。
15周年というアニバーサリーイヤーを迎え、ハイペースで活動を続けるガラパのこれまでとこれからについて、両作品の作・演出を務める川口大樹と、劇団員の西山明宏に話を聞いた。
初の美術館での公演
―まずは、美術館でやることになった経緯を教えてください。
西山 福岡市美術館のリニューアルに合わせて、今回の会場でもあるミュージアムホールで、講演会とはまた違うおもしろい企画ができないかということで、演劇というアイデアが出たそうなんです。そこで、福岡市美術館や指定管理に入っている西日本新聞の方々から「ガラパを呼ぶのはどうか」と言っていただけて、今回の公演に至りました。4月に行うというスケジュールはすでに決まっていたので、だったら2月までツアーをやっていた『溺れるクジラ』を、初めての「凱旋公演」という形でできるんじゃないかということで、美術館での凱旋公演となりました。
―会場ってどんな場所なんでしょうか? 広さとか、同じ条件でできるものなんですか?
川口 3都市ツアーでやったどの会場よりも狭いですね。福岡のイムズホールが400人キャパで、大阪が200くらい、東京の駅前劇場が100くらいだから、ツアーでも全部広さが違ったんですよ。で、今回のミュージアムホールがいちばんちっちゃいです。
―100人入らないくらいですか?
西山 客席は常設で180席くらいあるんですよ。ただ、間口(広さ)だとかタッパ(高さ)だとか、使える照明の数だとかがすごくコンパクトになって。見切れ(※1)を考えて、150席くらいになりますね。
川口 舞台美術の印象が全然違ってくると思いますね。
(※1)見切れ 客席から出演者が見えない、あるいは見えてはいけないものが見えすぎる、というライン。 |
―東京の駅前劇場も、舞台と客席が密な感じの、キュッとした印象がありますが、それよりも小さい感じになるんでしょうか。
川口 そうですね。もうワンサイズ小さいので、ミザンス(※2)とかも変えないとたぶん無理でしょうね。照明も固定されているので、照明プランをお願いしている太田さん(※3)がずっと唸ってました。
西山 一応調光室はあるんですけどね。どちらかというと講演会向きの会場なので。
川口 むかしギンギラ(※4)がやってたんですよ。でもそのときもフルサイズの作品という感じじゃなかったので。太田さんに託してます(笑)。
(※2)ミザンス 正式には「ミザンセーヌ」。舞台上の美術や出演者の立ち位置などを含めた全体的な配置のこと。 (※3)太田さん (※4)ギンギラ |
―舞台美術はどうなるんでしょうか?
川口 単純にちょっとキュッとなる、という予定です。一応イムズでやる前から美術館のサイズもなんとなく想定はしてたので。でもだいぶ印象は変わるだろうな、とは思います。
―ものを減らして抽象的な形に作り変えたりとかは……?
川口 それも考えたんですけど、あんまり有効じゃないなと思って。ガラパはこれまでずっとワンシチュエーションコメディをやってましたけど、最近の作品はちょっと抽象度が上がっていて。前々回の『ハダシの足音』なんかは思いっきり抽象でつくった作品なんですね。で、今回のコンセプトは「舞台は具象だけど、表現は抽象」と決めたので、舞台美術の具象はキープしておきたいなと。……「これをちっちゃいサイズでやったらどうなるのかな」というのも興味があるんですよね。1回観に来てくれて今回また来てくださる方もいると思うので、そういう方にどういう風に見えるのか、あるいは印象が変わんないのか、というのは気になりますね。美術はいじりませんが、脚本はちょっといじろうかなと思ってます。
―そして、公演に先駆けて4月6日にはワークショップをされるそうですが(※インタビューは3/28に実施)、こちらはどんな内容になるのでしょうか?
川口 ガラパメンバーと参加者とで、美術作品をモチーフにして、短いお芝居をつくろうというワークショップです。美術品の嘘の歴史をお芝居にしてみるとか、解釈をつくるとか、そういう内容になると思います。そうやってできたお芝居を、実際に美術館内をツアーで回りながら美術作品の前で上演できればと思ってたんですけど、現実的にはちょっと難しかったので、写真をプロジェクターで映して上演する、という形になりそうです。
―事前の準備はほとんどなしで、参加者から出てきたものを膨らませていく、という感じですか?
川口 そうですね。扱う美術作品もその場で選んでもらいます。その場で興味があるものの方がいいなと思うので。
西山 コレクション展を見てもらうんですけど、作品が結構あります。
川口 美術館の方もおもしろがってくれたらいいなと思っています。担当の方がアウトリーチ(※5)もやってる方で。小学校に屏風を持っていってワークショップをやったりとかされているらしく、なので僕たちがやりたいことに対してはオープンに受け止めてくださってます。
(※5)アウトリーチ 劇場や美術館といった施設を離れて、学校等に出向いてワークショップを行うこと。 |
こわちょこは、ガラパじゃやれないことをやる
―そして、「凱旋公演」のすぐ後には、若手メンバーによるこわせ貯金箱の第2回公演が決まってますが、これは第1回の手応えを受けて、という感じなんでしょうか?
西山 第1回が終わった時には、「こわちょこ(こわせ貯金箱)も継続してやれたらいいね」くらいの空気ではありました。今年度のガラパの年間スケジュールが埋まってきた中で、このへんならできそう、というのが5月のこのタイミングだったので、「じゃあここで2回目やる?」という流れで。ガラパの予定ありきで、後から決まったという感じです。
川口 ガラパの次の公演がプロデュース的な要素が少しあって、若手がちょっと空いちゃうので、「じゃ、若手の公演をここでやるか」という。
―美術館の公演の2週間後には若手公演で、川口さんはずっと稽古しっぱなしですね。
川口 そうなんですよー……。自分でやっときながら大変……(笑)。
西山 こわちょこ(こわせ貯金箱)からしたら、稽古も佳境に入るいちばん大事な時に、ガラパの公演が入っているという(笑)。
川口 でもこわちょこは稽古をもう10回くらいはやってて、この前無理やり前半を通しました。ほんとに無理やり。むちゃくちゃ無理やり。
―ちゃんとあらかじめ手を打っている。
川口 座組がほんとに若くて。平均年齢も22歳くらいかな? しかも演劇経験があまりないみたいな子たちが多いので。早めに稽古やっとこうと思って。
―演劇経験のあまりないひとたちをどうやって集めたんですか?
川口 出会い方は結構バラバラなんですよね。萩尾ひなこさんは割と最近演劇に出てるんですよ。モデル事務所だよね?
西山 そうですね。
川口 ZIG.ZAG.BITE(※6)とかにも出てて、西山が共演したりもして。あと、あわたかれんちゃんもモデル事務所ですね。うちの柴田(伊吹)が共演してて。
西山 日韓共同の「HANARO project(※7)」にも出てましたね。
川口 僕はあんまり絡んだことがなかったんですけど、メンバーからの推薦ということで。古賀駿作くんは西南大の演劇部で、彼はうちの椎木(樹人)が西南大演劇部の公演を観に行ったときに、「すごいいいのがいる!」って言ってて。で、ガラパでワークショップをやったときに彼が来てくれて。だから僕が直接観たことはないけど、メンバーから推薦があったっていうひとが多いですね。
(※6)ZIG.ZAG.BITE 福岡を拠点に活動する「劇団ZIG.ZAG.BITE」。2017年に上演された『たすけて!青春ピンチヒッター!!』に西山が客演した。 (※7)HANARO project |
―「推薦枠」ですね。
川口 推薦枠(笑)。他には、脇野紗依っていうのは僕が専門学校で教えてたときの生徒で、彼女は僕の推薦枠。古賀瑞穂はこの前僕が呼ばれて別のお芝居をやったときに知り合った子で、以前KANIKAPILA(カニカピラ)っていうバンドをやってたんです。NARUTOのエンディングを歌ったりして。そういう子とたまたま知り合って、お芝居は特にやってなかったみたいなんだけど、センスいいなーと思って。ギターも弾けるし歌も歌えるから。最近僕芝居で歌うっていうのが好きで、ちょっとそういう要素を取り入れてるんですけど、ガラパでは絶対やらないんです。こわちょこではそういうことをやろうかなと思ったときに、いてくれるとすごくありがたいと思って呼びました。あとは矢上サリオ。彼女とは久留米のワークショップでたまたま出会った子です。「結構芝居上手な子がいるな」と思ってたら、宮崎で「まちドラ!」とか出てて。永山チルドレンみたいな子で(※8)。福岡に出てきたけど芝居を全然やれてないって言うから、声かけてみました。
(※8)「まちドラ!」とか出てて。永山チルドレンみたいな子で 「まちドラ!」は、宮崎の三股町で行われている「みまた演劇フェスティバル」。宮崎を拠点に活動する劇団こふく劇場の代表・永山智行がディレクターを務める。宮崎の演劇人で永山の手がける企画に関わった経験のある者は多い。 |
―出演者の選び方を聞くだけでも、「ガラパとは違うことをしよう」っていうのがわかりますね。
川口 そうですね。僕も「ガラパじゃやれないことをやる」っていうコンセプトでやってるし、うちのメンバーにもなるべく自分たちでやってくれって言ってるし。チャレンジングなものにしたいなという気持ちはあります。
―どういう内容ですか?
川口 ラッキーフィッシュという、幸運をもたらす都市伝説みたいな魚がいる。それにまつわる一見関係ない人たちが、ある日突然ある場所に閉じ込められる。話が進んでいくうちに、関係があることがわかっていく……という、ちょっとSF路線の群像劇ですね。シチュエーションコメディでもない。割と抽象的な舞台です。
西山 舞台のつくりもガラパと全然違いますね。
川口 「ワンシチュエーションじゃできないことをやろう」と思って書いてるので、場面がコロコロ変わるし。それは以前北九州芸術劇場のプロデュース公演で演出助手をさせていただいたノゾエさん(※9)の影響が大きいですね。これまでワンシチュエーションで群像劇をやってたので、……大変なんですよ。人がその場から去る理由が全然思いつかなくなってきて。「トイレはダメ!」って言われるでしょう?
(※9)ノゾエさん ノゾエ征爾。2017年2〜3月、北九州芸術劇場プロデュース『しなやか見渡す穴は森は雨』で作・演出を手がける。川口はこの公演で演出助手を担当した。 |
―(笑)「トイレはダメ」っていうのは知らなかったです。
川口 (笑)言われるんですよ。「みんなすぐトイレに行きたがる!」って言われる。でも「いろんな人を入れ替えるのって大変だなあ」と思いながらずっとやってて、「そっか! 抽象にして、場面をポンポン飛ばせばいいんだ!」という当たり前のことに、10年くらいやってやっと気づきました。
―前に椎木さんにインタビューしたときにも、同じことを言ってました。
川口 なんかねえ、全然気づかなかったんですよ。「みんなよくいろんな話を書けるな」と思って。そしたら「みんなワンシチュエーションでやってねえな」って気づいて。今回のこわちょこも、「とある建物の中」という意味ではワンシチュエーションですけど、その中のいろんな場所で話が展開する、という作り方をしたいと思ってやっています。
―なるほど。
お客さんがガラパに求めているものがわかった
川口 というか……最近ちょっともうね、最近ちょっとアレなんですよ、聞いてくださいよ。
―(笑)どうぞどうぞ。
川口 最近もうね、ちょっとコメディに飽きてきてて。「ワンシチュエーション」の「コメディ」っていう縛りに飽きてきてるなと思って。
―ほう!
川口 僕の作品って、伏線をわーっと張って、後半で回収する、オチがあるというパターンでやってきてたんですけど、最初はお客さんもそれをおもしろいって言ってくれてたんです。それがだんだん「先が読めますね」とか「あれは伏線って気づきました」とか言われるようになってきて。そうなると悔しくなって、「じゃあもうそういうのやめよ!」という気持ちになってきたんです。「回収とかせんぞ!」みたいな。「演劇的な、洒落た感じにしてやろ」みたいな(笑)。
―(笑)ちょっと怒って。
川口 ちょっと腹立てて(笑)。その反動で、ここ2〜3年、抽象的な感じでやってたんです。「そんなはっきりオチとかもないし」みたいな。でも、逆にそれに飽きてきたんですよね。「それはそれで、もういいかな」みたいな気持ちになってきて。僕の印象としては、福岡では「劇的なこと」ってちょっとダサいと思われてるんじゃないかな、というのがあって。
―へえ〜。(西山に)そういうの感じます?
西山 福岡はあんまり劇的なことをやらない印象は僕もありますね。
川口 ちょっとシュール、ちょっとナンセンス、ちょっとハズす、みたいな方が好まれるのかな? と思うことはあって。
西山 あー、そうですね。
川口 ガラパって割とそこに無頓着というか、「わかりやすく、おもしろいもの」というのでずっとやってきたんですけど、「俺もそういう路線ちょっとやってみよう」と思って、最近抽象的な作品をやってみて。だけど今回のこわちょこでは、割とわかりやすくミステリーで、割とわかりやすく謎が解けていって、わかりやすくおもしろいっていうのを久しぶりにやりたくなりました。自分の好きだった要素に、ちゃんと向き合ってやってみようかなと。
―この2〜3年でシチュエーションコメディから抽象度の増した作品に変わって、お客さんの反応はどうでした?
川口 正直に言うと、「否がちょっと多いくらいの賛否両論」ですね。前の『ハダシの足音』はまだ評判がよかったんですけど。
西山 『ハダシの足音』はまだドラマティックでエモーショナルだった、という意味ではすごくわかりやすかったので。
川口 今回の『溺れるクジラ』は、ドラマとしてのわかりやすさを拒否してる部分があったので、アンケートのネガティブな方の意見の幅がすごく広かったですね。「ガラパに求めてるのはこんなんじゃない!」みたいな。
―でもそれって期待の表れというか、長年ガラパを観てないと言えないことですよね。
川口 そうですね。「こういうのじゃないんだ、笑わせてほしいんだ」ってはっきり書かれて。それによってすごく、お客さんがガラパに求めているものが浮き彫りになりましたね。こんなにはっきりと意見を書かれたのは初めてかもしれない。「作品がおもしろくない」じゃなくて、「ガラパにこういうことは求めてない」っていう感想は初めて見たので、ハッとしましたね。でも、そういう意見をいただくことをあらかじめ覚悟もしてたし、変な話どこかちょっとホッとしたところもあります。これで「いままでのシチュエーションコメディより全然おもしろいです!」とか言われたら、それはそれでちょっと複雑だな……と思ったので。
―確かに(笑)。
川口 でもおもしろいのが、こういう意見をいただけたのって福岡だけなんですよ。ガラパのイメージが全く違うからなんでしょうけど。東京だと、駅前劇場に行きだしてから4回公演をやっていて、「シチュエーションコメディもやるし、抽象的な作品もやる劇団なんだな」という感じで捉えられてるんだと思います。東京の方が割とフラットに観てくれて、福岡の方が厳しいです。さっきの「先が読めました」とかも、福岡ならではの感想ですね。福岡のガラパのお客さんは、わかりやすくて劇的な、エモーショナルなものを好むのかなあというのはわかってきました。
西山 アンケートを通してわかってきたんですけど、「こういったシチュエーションコメディで、わかりやすくおもしろいもの、笑えるものっていうのは、実はガラパしかやってないんだな」というのをすごく感じました。だから、演劇を観るお客さんたちは、ガラパまで抽象的なことをやるのを求めてないんだ、っていうのがわかったのは大きかったですね。「ガラパがどうしたらいいか」みたいなのが少しずつ見えてきたというか。それでその、やるべきことが「もともと得意な方」だったので。
川口 「演劇らしくあろう」みたいなことを考えたのが、結果的にお客さんの求めてたことじゃなかったんでしょうね。……戯曲賞なんかでも、最終選考に残ったりしたとき大抵言われるのが「ギャグが要らない」「この笑いが必要ない」みたいなことで。それを「知らねえよ」って貫けばいいのに、たまにちょっと「賞もほしいな……」みたいな気持ちが出てきて作風を乱すことがあって。よくないな、もっと強い心で、「ギャグでねじ伏せる!」みたいなのが要るなって。
西山 (笑)「ギャグでねじ伏せる!」
―(笑)
川口 ほんと大事。だからヨーロッパ企画の上田さんが岸田獲った(※10)のは相当救われましたね。「コメディでもいいんだ」っていうのは、勇気付けられました。大事だな……そういうの……。
(※10)ヨーロッパ企画の上田さんが岸田獲った 京都を拠点に活動するヨーロッパ企画の上田誠は、『来てけつかるべき新世界』で第61回岸田國士戯曲賞を受賞。直球のコメディが岸田戯曲賞を受賞するのは珍しく、このニュースは多くの劇作家の背中を押した。 |
―そんな抽象的な作品が、美術館で上演されるわけですが、また違った客層と出会えそうな感じもしますね。
西山 演劇と美術が交わる場になればいいなと思ってますね。
―過去に僕も劇場と美術館のコラボ企画の制作をやってきたので経験があるんですけど、アンケートがすごくおもしろいですよ。美術作品を観てきた人って、こういう捉え方をするのか! っていうのが新鮮で。「抽象的なものに触れ慣れてる」というのかな。そういう方々の意見って、演劇ファンから出てこないものもあって。
川口・西山 へえー!
―だから、そういうアンケートを見てしまったら、また揺れるかもしれないですね。
川口 「やっぱ抽象だな!」って(笑)。
西山 (笑)
川口 でもそういう意見にも出会ってみたいですね。福岡ってこんなに人口がいるのに、1,000人くらいにしか出会えてない。「狭いところでやってるな……」ってよく思うんですよね。
若手メンバーと一緒に「強くてニューゲーム」を始める
―では最後に、「ガラパ15周年」ということについてお伺いしたいんですけど、「15周年イヤーはこういうものにしたい!」というのを聞かせていただけますか。
川口 最初は結構デカいことをやろうとか言ってたんですけど、この前椎木とかと話して、「1回腰を据えて、劇団の体制を整え直そう」ということになりました。
―おお。
川口 ガラパってかなりメンバーが入れ替わってきて、初期からいるのは僕と椎木だけだし、7〜8年やってるのが横山(祐香里)くらいで、あとはかなり若手メンバーになってるんです。今までは若い子たちが、「今までガラパが積み上げてきたもの」に追いつこうと一生懸命ついてくる、という形でやってたんですけど、15年という節目を迎えて、もっと「新しい世代がいることの強み」を出せるような環境を作った方がいいんじゃないかと思って。僕や椎木が15年経験を積み上げてきた、その上で、また若手のメンバーと一緒に「強くてニューゲーム」みたいな感じで、2年くらいでステップアップしようかなと思います。
―堅実だ……!
川口 若い子たちがいる、年齢の幅があるってことで、できることが変わってきたと思うんです。そこをもっと掘り下げたいな、新しい形を見せたいなとは思ってますね。「劇団」という形を継続してるのって、割とすごいことだなと、やっと最近ちょっと思えるようになってきたんです。なんだかんだ15年ってすごいことだぞ、と。15年やってきたからこそ、多少一息ついても、いつでもフルスイングできるだけのパワーはあるぞと思えるようになったので。劇団員全員の力がベストで発揮できる体制はなんだ? というのを考えて、あえて15周年のタイミングで全員でやってみようと思っています。
―5の倍数の節目って、割とお祭り感をアピールするところが多いと思うんですけど、意外と冷静ですね。
川口 そうですね。意外と冷静。
―「15周年ですが、全員で棚卸しします」みたいな。
川口 (笑)15年だからこそもう1回スタートし直します。逆に言うと20年を見据えているというか。
―「俺たちは15年くらいで浮かれはしねえぜ!」と。
川口・西山 (笑)
川口 やっぱり人が育つのって時間がかかるから。大事なのは15年っていう節目に無理やり合わせることじゃなくて、若い人たちが育つ時間をちゃんと考えるというか。まだ焦る時期じゃないという感じですね。ガラパっていうものをもう1回みつめ直そうっていう15周年です。
―凱旋公演とこわちょこの公演が終わったら……
川口 7月に、最近やってなかったワンシチュエーションものの、過去の公演の再演をやろうと思っています。
―おお! 「これが観たかったんだろ?」と。
川口 (笑)「これが観たかったんだろ?」って。でもそれと同時に、演劇をあまり観たことがないっていう人たちにリーチしたいっていうのは、これはもうずっと変わらないことなので。そういう意味で、タレント的な方々も呼んだりしようと思ってます。できる限り観に来てくれる人の層を拡げていかないといけないなと思っているので。
―以前イムズに公演を観に行った時に、「客席層が、俺の知ってる演劇を観る人たちと違う!」と思った覚えがあります。「あなたたち、デートで観劇に来てるでしょ?」みたいな。そういう意味では、ガラパって確実にそういう、「普段お芝居を観ない層」にはリーチしてるんだろうなあと思いましたね。
川口 割とそれを推奨している劇団なんで。でも最近ちょっと閉じてきてたんで、よくなかったな……。デートだ……。「デートで来てもらえる劇団」、最近忘れてたな……。「デート」……。今後の取材でもバンバン使わせてもらいます。「デート」……。そうだ、デートだ……。
―(笑)お役に立ててよかったです。
川口 最近ちょっとおもしろいのが、15年もやってると、劇団を離れていった人たちがまた何らかの形で集まることがあるんですよ。この前の公演でも、気づいたらバラシ手伝ってくれてたりとか。こっちから声かけたわけじゃなくて、なんとなくそうなってたんですけど。僕らは「劇団」っていう形にとにかくこだわってきて、人のつながりみたいなもので作品を作ってきて、そういう空気がよい作品を生み出すってどこかで思っていたので、そういう意味ではなんとなくいい風向きが見えてきたなと思います。
―15周年で無理やり再集結はさせないけど、でも自然と20周年で集まってるかもしれないですね。
川口 劇団って、「今いるメンバーでできること」をやるのが大事だなって思います。その当たり前のことに改めて気づいたというか。過去のガラパの幻想を、僕や椎木が追い求めてたところがどこかにあって、若いメンバーにもそこを求めてしまうことがあったんだけど、それは違うんだと。昔のガラパは昔のガラパで、今のガラパは今のガラパなんだ、というのを大事にしたいなと思えるようになりました。今のガラパで、もう1回改めて攻めるぞっていうのでいいんじゃないかなと思ってます。どうせ戯曲賞も獲れないし。
西山 (笑)「ギャグ入れ続けるぞ」と。
川口 ギャグ入れ続けるぞ。これで賞獲ったら本物やぞと。でも回り道したとは思ってないです。いろんな過程を含めて気づきがあったし、得るものがたくさんあったんで。そういうものがなかったら今の気持ちになってなかったと思うから。でも、無茶とか実験みたいなことができたのは、今まで蓄えてきたものがあるからだという自負もあるので。そういう積み上げてきたものの上で、もう1回攻めていこうと思います。
インタビュー・執筆:藤本瑞樹(kitaya505)
『溺れるクジラ』の出演は、椎木樹人、横山祐香里、山崎瑞穂、柴田伊吹、石井実可子、西山明宏、隠塚詩織、野間銀智、中島日菜子、杉山英美、ヨウ手嶋。
チケットは、一般3,000円(当日3,500円)、25歳以下2,000円(当日3,500円)。ローソンチケット(Lコード:84039)、チケットぴあ(Pコード:492-747)、e+、スリーオクロック092-732-1688(平日10:00~18:30)での取り扱い。
『ラッキーフィッシュと浮かぶ夜』の出演は、石井実可子、西山明宏、隠塚詩織、野間銀智、澤栁省吾、柴田伊吹、あわたかれん(CGE)、古賀駿作、古賀瑞歩、萩尾ひなこ(SPARKLE PROMOTION)、矢上サリオ、脇野紗衣。
チケットは、一般2,500円(当日2,800円)、学生1,800円(当日2,800円)、どんたく割一般2,200円、どんたく割学生1,500円。CoRichチケット!での取り扱い。
お問い合わせはスリーオクロック092-732-1688(平日10:00~18:30)まで。
万能グローブ ガラパゴスダイナモス 第25回公演『溺れるクジラ』凱旋公演
作・演出:川口大樹
日時:2019年4月19日(金)19:30
20日(土)14:00/18:00
21日(日)14:00
会場:福岡市美術館 ミュージアムホール(福岡市中央区大濠公園1-6)
料金:一般3,000円(当日3,500円)
25歳以下2,000円(当日3,500円)
こわせ貯金箱 第2回公演『ラッキーフィッシュと浮かぶ夜』
作・演出:川口大樹
日時:2019年5月2日(木)19:00★
3日(金)19:00◎
4日(土)19:00◎
5日(日)14:00/19:00★
6日(月)14:00★
★アフターイベントあり
◎どんたく割
会場:甘棠館show劇場(福岡市中央区唐人町1-10-1 カランドパーク2F)
料金:一般2,500円(当日2,800円)
学生1,800円(当日2,800円)
どんたく割一般2,200円
どんたく割学生1,500円
【関連サイト】
万能グローブ ガラパゴスダイナモス
ガラパくん(Twitter)
こわせ貯金箱
※情報は変わる場合がございます。正式な公演情報は公式サイトでご確認ください。