やよひ住宅(第4回)
2021.02.19
叔母は、そのまま、で暮らしていた。叔母自身はそのまま、時が止まったように。だからこそわたしは叔母の元へ行くことを好んだ。叔母と一緒にいる時間は、小さな子どものままでいられた。それが錯覚だとしても、わたしは、温かいものにしがみついていたかった。
けれど実際は、やよひ住宅からはどんどん人が引っ越して行き、叔母とねこぶと磯辺さんしかいない場所になり、ふたりと一匹は老いていき、やよい住宅はやがて廃墟になり、雑草が生い茂り、わたし自身も成長を止めることはできなかった。
入り口のソメイヨシノだけが変わることなく季節を繰り返していた。