咀嚼伯爵(第3回)

2021.02.23

【13】風神雷神

この頃から、自分に変な習慣がついていることに気づいた。
バイト先のレストラン、
気づけば来客の食べっぷりを凝視している。

家族連れ。
パパ・ママと小学2年生くらいの女子。
ワンピースから細い脚が覗く女子のオーダーはミートソースとチョコレートパフェ。
ミートソース700kcal、チョコレートパフェ550kcal。
高校時代に暗記しまくったカロリーが浮かんで来る。
ごはんとデザート。昔は両方食べてた。
その習慣、数年後に後悔すんで!

20代半ば・OL風の2人。
中肉中背の地味女・ミートドリアセット、800kcal。
ちびでデブの南国美人・ハンバーグセット、1200kkal。
痩せた~い、と言いながら食うくう。
半分残そ~、とか言いながら完食。
結局、食後のケーキも食うんかい!

苛立ちが高まると脳内絶叫がエセ関西弁になって行く。

上司らしきおじさんと部下らしき若いお姉さんの2人連れ。
お姉さん、コーヒー注文。
すかさずおじさん、「遠慮なんかしないで。」
遠慮やないで?お姉さん、その細さは節制しとんのやろ?
おぅおっさん!なに勝手にハンバーグセットふたつ頼んどんのや!
姉さん、食べんでえぇで!

お…おっさん、ハンバーグ3口(みくち)で喰いよった!
ちゃんとサラダも食えや!
痛風なるで!

「さっきさ、すんごい顔してたけど。」
え?
ホール担当の先輩が言った。
「なんていうの?あの…風神雷神みたいな顔してた。」
「わ、すいません!」
「うん。でもさ、」
え。
「個人的にはめっちゃおもしろかったの。ね、何考えてたの?」
「…お客さまが召し上がってる様子を見て…実況中継してました。」
「なんて?」
「あの食べ方では、お太りになられるなとか。」
「おまえ…」
え?
「おもしれぇな!」
…え?

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