さよならオブラージャ(第1回)
2021.02.25
さよならオブラージャ 河野ミチユキ
1
この土地には「離合(りごう)」という言葉がある。
運転時、対向車とすれ違うことを指す。すれ違うのにギリギリな、狭い道で口にしている気がする。この言葉が方言だと知ったのは大人になってからのことだ。
学生時代の男友達が言っていたことを思い出す。
「怖くないよ、だって1ミリでも距離が離れていれば接触しないんだから。」
そう、接触しているか否かなのだ、みたいな思考の糸口から、かつての些末な記憶が紐解かれたのだった。
東京だから、ニューヨークだから、雲の上だからとなどということ、たとえそれが宇宙の果てだったとしても、同じことなのだ。接触していない時点で。
今日もテレビではスペースシャトル打ち上げ事故のニュースが流れている。