さよならオブラージャ(第4回)

2021.02.28

 「そのオブラージャ……この間も色違いをしてたよね」
 部屋に入ってすぐに、ひとしきり互いを求めあい衣服を脱ぎ去る過程で、先日とは色違いの彼女のブラに気がつく。
 「オブラージャ?」
 「あぁ、ブラジャー」
 「フフ、何その呼び方、だっさ」
 「普段気を使うんだよ、娘がいるから。嫌われちゃうじゃん。だから少しオブラートに包んでるわけよ」
 「オブラートにブラジャーを。だから、オブラージャ」
 「まぁ、そう言うんでもないけど」
 「いいやん、このブラ可愛いやろ」
 春香は恥ずかしそうにその下着を両腕で隠し、背中を向けた。その姿に高ぶり、背中から抱きしめる。彼女の細い肩に顎を乗せて、耳に唇を寄せる。
 「さっき、ナガイくんに二人でいるところを見つかってたら、何て説明してた?」春香が尋ねる。盛り上がりを中断して、なぜ今そんなことを訊くんだ?春香は戸惑った俺の腕をほどき、こっちを向いてベッドに腰掛けた。テーブルの上のリモコンを手に取る。数秒後にホテルのインフォメーションが映し出される。俺は煙草に火を付けて、彼女の向かい側のソファーに腰掛ける。テレビの放つ光が、彼女の胸に咲く例の和柄の桜を薄暗い室内に浮き立たせている。

 テレビ画面の上部、最新のニュースが右から左へとスライドしていく。相も変わらず
 今日もスペースシャトルの話題だ。いつまでこの外国の騒ぎは続くのだろう。

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