池田美樹(劇団きらら)インタビュー

2015.03.10

いま、劇団きらら(熊本)がノリにノっている。

奇しくも受賞は逃したが、2013年に上演された『踊り場の女』が第14回AAF戯曲賞受賞候補作にノミネートされたかと思えば、来る4月17日(金)~19日(日)には、王子小劇場で8年ぶりに東京公演を行うという。演目は、昨年11月〜12月に熊本・福岡で上演され、大好評のうちに終了した『ぼくの、おばさん』(作・演出:池田美樹)。東京で活動する劇団だるめしあんの代表・坂本鈴が強く影響を受けた団体やアーティストを紹介するという企画の第一弾として実現した今回の東京公演。先日より、東京に向けての「思い出し稽古」も始まったという。

今回mola!では、旗揚げから30年経ち、ベテランの貫禄となおも挑戦し続ける若さを併せ持つ、劇団きららの主宰、池田美樹にメールインタビューを行った。

劇団きらら『ぼくの、おばさん』(撮影:藤本彦)

−8年ぶりの東京公演、おめでとうございます。まずはいきなりですが意気込みからお聞かせください。

「いちばん見せたいもので褒められたい」。殆どのものつくりの人の「エネルギーの根っこ」だと思いますが、まさにそんな気持ちです。大人劇団ですのでもう野望はありませんが、希望はぷっくりふくらんでます。

劇団きらら『ぼくの、おばさん』左から2番目が池田美樹(撮影:藤本彦)

−東京公演と、これまで継続して行ってきた熊本・福岡などでの公演とで、意識することの違いはありますか?

東京公演はまだ4回しか経験がありませんが、九州とは客席が違うなぁという印象でした。「今、食べたいものを探している」みたいな。九州の客席は「眺めてる」。東京は「食い付いて来る」。眺めてる、ってなんかヤな感じですよね。でも空腹感?飢餓感?グルメ感?その度合いが、違う感じ。今回もなんらかの何かで「食って」もらえたら嬉しかです。全編バリバリの熊本弁なんですけど、その質感ごと。ちょっと「味付け濃い目」にして行きます。

劇団きらら(稽古風景)

−今回東京で上演される『ぼくの、おばさん』のあらすじを教えてください。

キャッチコピーは「20歳がみつめる40代の孤独と恋」。

ちょっと前、30代と20代の演劇男子が私のそばで(気にすることなく)どぎついセックス談義。そこで20代が「てか人間、何歳までやりたいもんなのかな」ってつぶやいたんですね。50代でもやりたいよ~! でもキミらの頃とは目的も方法も(回数も)違うよ~! と叫んで交じりたかったけど、グッと我慢してお芝居にしてみました。これ、あらすじ、じゃないですね。

もいっちょ。

数年前、蕎麦屋の座敷で痴話喧嘩してる60代位の男女が居たんですね。どう見ても夫婦じゃない男女。聞き耳を立ててると、女性……というか女のほうが何らかのやきもちを焼いて、言葉の暴力をぶつけ続けている。男性……というか男も支離滅裂な言い訳を重ねている。お蕎麦も食べずに。

程なく女が店を飛び出して、乗って来た車に乗って帰ってしまった。残された男の人は男の人はどうやって帰ったんでしょう。ここからは想像ですが、彼らはきっといろんなことをうやむやにして、また仲直りするんだと思います。若い頃なら絶対別れたようなことを、大人はうやむやにする。許す、というよりなじませる、みたいな。もう孫が居て縁側でお茶飲んでてもおかしくないような人たちが、枯れ損なって、いまだ生々しさを剥き出しにしている、あぁいう見苦しい景色に、強烈に惹かれてしまいます。おじちゃん・おばちゃんのエロ。大なり小なり、皆さん、そんな記憶ありませんか?なんか、そんなことを片隅に浮かべながら観て頂くと、楽しみが濃くなるかもです。

東京まではちょっと……という方、4月初旬にきらら稽古場で公開通し稽古やります。よかったら熊本城のお花見がてらにどしどし、です。

劇団きらら『ぼくの、おばさん』(撮影:藤本彦)

−劇団きららさんは、九州でも長年真摯に演劇と向き合ってこられている劇団のひとつだと思います。どうしてそんなに長年真摯に演劇に取り組むことができたのですか? そのモチベーションを保つ秘訣を教えてください。

中学のときなりたかったものは「漫画家」と「命の電話で話を聞く人」でした。最近ふっと、そう遠くない仕事に就いたんだな、と思いました。新聞記事の、近しい人の、「なんでこうなったんだろう」に対する興味や苛立ちが常に作劇の根っこです。この「興味」が薄れたら、演劇やめねばならない、ねばならない、と強く思います。

劇団きらら『ぼくの、おばさん』(撮影:藤本彦)

−実は今年で30周年なんですね。旗揚げから30年経った現在の目標はなんですか?

劇団では「数字を伸ばすこと」=収入+集客。大人が続けるにはね、数字、大事ですよね。地方でも演劇の仕事、あります+増えてます。皆でいろいろ頑張りましょう。品質向上・信用第一。

演劇人としては「小劇場のおもしろさ」を訴え続けること。“指の腹のふるえ”が見える空間が、たまらんごつ、好きです。50人の空間で50回公演、とかやりたいです。まじで。


先日、「劇王 天下統一大会 ベイシティ・ロワイヤルin KAAT」で熊本の不思議少年が優勝を果たしたのは記憶に新しいところだ。いま熊本が、九州が、確実に盛り上がっている。そんな九州の演劇シーンを、いまなお牽引し続けている劇団きららの8年ぶりの東京公演。東京にお住まいの方には、いま最もアツい九州の演劇にぜひ触れてほしい。

『ぼくの、おばさん』舞台写真撮影:藤本 彦
インタビュアー:藤本瑞樹(kitaya505)

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